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「線表現の可能性」「コレクション1 彼女の肖像」(大阪国立国際美術館)

わたしはイラストレーターである。

イラストレーターの中でも線画で勝負してきたわたしにとって、「線」とは最重要要素である。

昨日の日記に書いたように絶不調の身にはやや難解な展示だったが、おもしろかった。

「え?これのどこが線?」という作品もあって。

この展覧会は以下の構成で展開している。

第1章「線の動き、またはその痕跡」
画家達の筆やペンの痕跡に着目し、多様な線の表情を紹介。

第2章「物語る線たち」
輪郭線が物語を語る道具となり描き出されたイメージの世界を堪能。

第3章「直線による構成」
数学的、幾何学的な構成・性格をもつ直線がテーマ。

第4章の「線と立体」
二次元から三次元へ展開し立体を形成する線と彫刻との関係に焦点を当てる。

「線表現の理解」は難解だ。

本展を担当した安来正博研究員は「鑑賞する方の感覚で見てもらえたら」と語る。

約150点にも及ぶコレクション作品を通して、新たに「線をめぐる冒険」に出る展示、だと感じた。

第2章「物語る線たち」では、線が物語を語る道具としての役割を持つことに焦点を当てている。デッサンや下絵としての線が、対象の形態や意味を分節化し、作品に内在する物語を視覚的に伝える力があることを示している。池田龍雄や浜口陽三らの作品を通じて、現実には存在しない輪郭線が観る者に一種の幻想を抱かせ、鑑賞者の心の中で新たな物語が立ち上がる様子が印象深く描かれている。

美術手帖より)

わたしのイラストは線画だ。

リアルなイラストを描く人からはときどき、線画や輪郭線を憎んででもいるような人がいる。確かにリアリティを追求するならば、「輪郭線」などというものは「ありえないもの」なのだろう。

しかし、彼らの発言や考えこそが絵画のすべてだと考えるのは早急だ。

確かに輪郭線はこの世に存在しない。

けれど絵のここに線があることで、「これは写真ではなく絵です」と主張しているのだともいえる。

逆に、実際にあるものを一切描かず、本物そっくりに描くのみが正しいのなら、絵画である必要はないのではないか?


日本のイラストレーション創成期のイラストレーター、つまり大御所たちは押しなべて線画の画家である。

すでに鬼籍に入られた和田誠、安西水丸、ペーター佐藤、原田治、そして我が名古屋の誇る宇野亜喜良…(敬称略)


イラストスクールの恩師でもある安西水丸さんは「線がすべて」だとおっしゃっていた。

線を魅力的に描ける者がイラストレーションを制するのである。


こちらの作品の方が強く印象に残った。

分断された額の作品はもしや、と思ったらやっぱり福田美蘭。

昨年名古屋では、こんな展覧会が話題になった。なんとこれ、名古屋以外に巡回していないのである。


ほかに気になったのは、自身の義足にハイヒールを履いたセルフポートレート作品の現代アーティスト・片山真理。

美術館の冊子に彼女のインタビューが掲載されていた。

もともと写真を「作品」とはとらえておらず、セルフポートレートを取っている感覚もなかったという片山。しかし作品作りを通じて、自身の障害がそのまま「主張」「作品」となることへの責任感を持つようになってきたことなど。



14年半ぶりに訪れた国立国際美術館は、やはり素敵な美術館だった。

カフェのプリンが最高においしかった。しかしこの展示、1200円って安すぎないか?そして高校生以下無料って…!!さすが国立。

夜は大阪駅の居酒屋で粉モンを食べまくって大坂満喫。

特別展 線表現の可能性
2024年11月2日(土)– 2025年1月26日(日)
B3階展示室

一枚の絵は一本の線を引くことから始まります。線にはいろいろな種類があります。直線、曲線、点線、波線。描く材料によっても線の表情はさまざまに変化します。鉛筆やペンが生み出す細く尖った線。木炭やチョークの太く軟らかい線。また、伝統的な東洋画の筆と墨による運筆法は、「書画一致」と呼ばれ、線に作者の人格が表れ出るものとされてきました。線描画は、かつては完成作のための習作や下絵として描かれ、対象の形態を明確に輪郭づけるためのデッサンとしての役割を担ってきました。線は世の中のあらゆる存在を分節化し、各々を意味の世界へと定着させるための手段でした。その際、現実には存在しない輪郭線という抽象的概念が絵画の基盤となりました。一方、20世紀以降に誕生した抽象絵画では、独立した線表現として、線そのものが有している造形性が重視されるようになっていきます。画家たちは新しい線の創出を目指し、線はかつてない多様な表情と表現性を具えていくことになったのです。こうして、線は絵画の原点であると同時に、今なおその表現領域を拡大し続ける、古くて新しいテーマとなっているのです。
本展覧会は、版画・素描を中心に、絵画、彫刻、写真を加えた約150点の作品によって、現代美術における線表現の多様性を示す機会とするものです。

開催日 2024年11月2日(土) - 2025年1月26日(日)
開催時間 10:00 – 17:00、金曜・土曜は20:00まで
※入場は閉館の30分前まで
休館日 月曜日(11月4日、1月13日は開館し、11月5日、1月14日は休館)、年末年始(12月28日~1月4日)
主催 国立国際美術館
協賛 公益財団法人ダイキン工業現代美術振興財団
助成 一般財団法人安藤忠雄文化財団
観覧料 一般    大学生1,200円(1,000円)    700円(600円)
※高校生以下・18歳未満無料(要証明)。心身に障がいのある方とその付添者1名は無料(要証明)

コレクション展 コレクション1 彼女の肖像
2024年11月2日(土)– 2025年1月26日(日)
B2階展示室

本展では、国立国際美術館の所蔵品の中から、女性の登場する作品に焦点をあて、章ごとに異なるテーマで紹介します。記号化された女性像ではなく、個性や歴史を持った個人としての「彼女」の肖像に、現代の作家たちが何を託し、どのような社会や歴史、関係性が表象されているかに着目します。

また、20世紀半ばに活躍した女性のデザイナー(山脇道子とシャルロット・ぺリアン)の活動に触発されたレオノール・アントゥネスのインスタレーションなど、昨年度新たに収蔵された作品もあわせてご紹介します。

出品作家:
福田美蘭、ミヒャエル・ボレマンス、小川信治、カリン・ザンダー、芥川(間所)紗織、アンディ・ウォーホル、スタジオ65、岡本信治郎、安齊重男、柏原えつとむ、ソフィ・カル、ダーン・ファン・ゴールデン、アストリッド・クライン、野田哲也、小西紀行、マルレーネ・デュマス、サニー・キム、久保田成子、デイヴィッド・ホックニー、木下晋、荒川修作、ルイス・W.・ハイン、宮本隆司、小沢剛、饒加恩(ジャオ・チアエン)、石内都、アンドレアス・グルスキー、石川真生、山城知佳子、テリーサ・ハバード/アレクサンダー・ビルヒラー、片山真理、谷原菜摘子、レオノール・アントゥネス、高松次郎、須田悦弘、アレクサンダー・コールダー、ジョアン・ミロ、マリノ・マリーニ、マーク・マンダース、ヘンリー・ムア
※予告なく変更となる場合があります

開催日 2024年11月2日(土)– 2025年1月26日(日)
開催時間 10:00 – 17:00、金曜・土曜は20:00まで
※入場は閉館の30分前まで
休館日 月曜日(11月4日、1月13日は開館し、11月5日、1月14日は休館)、年末年始(12月28日~1月4日)
主催 国立国際美術館
協賛 公益財団法人ダイキン工業現代美術振興財団
観覧料 一般    430円(220円)    大学生 130円(70円)
( )内は20名以上の団体料金
高校生以下・18歳未満・65歳以上無料(要証明)・心身に障がいのある方とその付添者1名は無料(要証明)



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