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経営から見るカクテルの未来

バーや飲食店を経営するなら、カクテルというのは外せない商材です。

日持ちのする材料から、それなりの単価の多種多様な商品を作り出すことができて、売上を伸ばすためには重要な商材なのです。居酒屋のメニューを見れば、数ページにわたるカクテル類が並んでいることもありますよね。

その一方で、カクテルは真面目に作ろうとすると手間がかかるうえに、個人の技量に左右されやすいのが難点です。

酒をソーダで割るだけのハイボールですら、分量や、氷の大きさ、混ぜる回数などによって味が変わってきてしまいます。ステアやシェイクなどの技法を使うカクテルであれば、バーテンダーによる味の違いは極めて大きいです。

真面目にカクテルを作るバーに行くと、氷を砕き、グラスに氷をいれて冷やし、棚から酒を取ってきて、ライムやレモンなどをカットし、絞り、材料をシェイカーに入れ、氷を入れて、シェイクして、グラスに注ぎ、提供する。この一連の流れで、一杯で数分以上かかったりします。

それだけ手間をかけて作っても、必ずしも美味しいカクテルになるとは限らないのが悲しいところです。

なぜカクテルは個人の技量によって大きく味が違うのか。

私の友人に望月さんという天才バーテンダーがいますが、その人がいつも口癖のように言ってるのが「カクテルは氷をどれだけ水として溶け込ませるかが決め手だ」という台詞です。

素人が自分の家でマティーニを作ってみれば分かりますが、普通にミキシンググラスでステアして作ったら、いくらやっても、まともなマティーニはできないはずです。とても飲めたものじゃない代物になります。氷を溶け込ませる分量がうまく制御できていないから、こうなります。

その一方で、マティーニの材料であるジンとベルモット(と必要に応じて水)をあらかじめ混合して冷蔵庫に入れて冷やしたものを注げば、誰でも完璧なマティーニが作れます。

北新地サンボアというお店のハイボールは絶品です。

専用のグラスに目盛りが入っており、良く冷えたウィスキーを目盛りまで注ぎ、氷も入れずに、ソーダの瓶を垂直にドボドボと勢いよく注ぎ込み、それを混ぜることもせずに提供します。この間わずか数十秒です。

これは誰が作っても同じ味にできる大量生産ハイボールですが、こだわりのバーテンダーが数分以上かけて作ったハイボールより正直言って美味いです。

私の行きつけのとあるバーでは、これを推し進めた形になっています。ステアやシェイクするカクテルは一切提供せず、基本的には予め用意された材料をグラスに入れて軽く混ぜるだけ、またはミキサーでガーっとやって終わりです。

これなら提供時間も節約できて、誰が作っても同じ味になります。そのうえ、あらかじめレシピを用意しているので、クラシックカクテルよりも独創的な味わい、美味しい味わいのカクテルを提供可能になります。

店主が仰っていたのは、「以前はフランス料理店を経営していたが、シェフが辞めるたびに味が変わって一からやり直しになるのが嫌になって辞めてしまった」という話でした。

そこでこのような形をとって、誰が作っても均一の味になるカクテル専門の店にしたのでしょう。

腕に自信のあるバーテンダーが小さな店を独立開業するなら、じっくり自分の腕前で多種多様なカクテルを作るのも良いでしょう。

その一方で、経営という観点からは、氷を使って混ぜるステアやシェイクの技法を使わないカクテルが望ましいと言えるでしょう。

冷蔵保存、前割り、浸漬、自家製シロップ、珍しいハーブスパイスの活用などの技法を使えば、提供時間を短縮しつつ、均一で美味しく、差別化のできるカクテルが提供できるはずです。

これは飲食店経営者からしたら常識かもしれませんが、経営という観点からカクテルを見たときに興味深い点であると思いました。

免責事項: 酒税法や食品衛生法に関しては素人なので一切の責任を負いかねます。


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