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コーヒーはGoogle、和食の地学、投資と予測 / ポッドキャスト『投資家の日常は、いとをかし。』 #14 2024年7月 後編 テキスト版

以下はこちらのポットキャストをテキスト化したものです。

前編はこちら



円安に伴う?サービス業の人材移動

renny:「投資家の日常は、いとをかし」2024年7月の後編は、まずは吉田さん行きつけのレストランで、人の移動というか移籍あったと事前に伺っていましたが。

吉田:表参道のイタリア料理「JIMBO MINAMI AOYAMA」さんで、2022年のオープンの頃から、サービスマネージャーにすごくいい方がいらっしゃったのですが、今月末で退職されて、麻布台ヒルズにできたホテル(ジャヌ東京)に移籍するっていう話を伺って、いい人材は外資系に取られてしまうんだなと。やっぱり円安の影響なのかな。

renny:海外からの観光客やビジネスの人が使うホテルだから、客単価が高めに設定できるような感じになってたりするんですかね。

吉田:そうですね。外資系のホテルに入ってるお店は正直、日本人の感覚だと割高に感じられることもありますね。

renny:海外の方は言葉の問題があったりするので、街中にあるレストランよりもホテル内のレストランを選ばれる傾向もあるでしょうね。

吉田:海外から来るとホテル内のレストランに行くか、あとはミシュランガイドの掲載店に行くことが多いようですね。

renny:そういう人材の移動はサービス業でも、もうかなり活発になっていきそうですよね。

吉田:日本料理の料理人も海外からの引き合いがすごいらしくて、たいして経歴がなくても、日本円にすると簡単に年収1,000万円超えるらしくて、引き抜かれていくっていう話も聞きますね。

renny:以前にお寿司が握れるようになったら、食いっぱぐれないみたいな話も聞いたことがあります。AIは絶対やってくれないような世界だと思いますしね。

コーヒーは大航海時代のGoogle

renny:食と世の中との関わりみたいなテーマで、読書についてお聞きしたいなと思うんですけれども、最近、読まれた本でなにかご紹介いただけますか?

吉田:最近の本ではないのですが、臼井隆一郎さん「コーヒーが廻り世界史が廻る」っていう本は、投資家のみなさんにはぜひ読んでほしいなと思います。

renny:どんなところが興味深いというか、読んでもらったら面白いなと思われたのですか?

吉田:最初にコーヒーを飲んだのはイスラム教の人たち(イスラム神秘主義の僧侶スーフィー)。彼らの教えには、眠らないで祈り続けるのがすごいみたいな考えがあって、それにはコーヒーが便利だっていうのに気づいて飲み始めたっていうのが源流のようです。

renny:そういうルーツがあるんですか。コーヒーには諸説ある中の一つなのかもしれないですけど。

吉田:そこからイスラム世界でだんだん広まっていって、オスマントルコから地中海貿易を通じてヨーロッパに入ってくるんですよ。

renny:それまでヨーロッパの人たちはコーヒーをそんなに飲んでなかったっていうことなんですか?

吉田:当時のヨーロッパの人たちの朝ご飯ときの飲み物はビールかワインだったらしいんです。朝っぱらから酔っ払ってるよりもコーヒーを飲むっていうのは、産業革命の時期にちゃんと目を覚まして働かないといけないということで庶民にも広がり、あとはその少し前の大航海時代には、政治家や思想家、船乗りの人とかがコーヒーを飲みに喫茶店に集まって情報交換をする場になっていたらしいんです。そこに行けば様々な専門家の生の情報が手に入るみたいな場になっていった。そしてその集まりの中から、新聞という事業ができたり、船乗りの情報を得て保険業ができたりとか、あとは当時すでに株式市場は、株価の情報配信や株式売買の仲介が、コーヒー店内で行われていたんです。

renny:すごい場所だったんですね。今でいうインターネットなのかもしれないですよね。

吉田:そうなんですよね。情報を繋ぐ場だったので、大航海時代のGoogleみたいなイメージですね。

renny:それを媒介してたのがコーヒーだったっていうことなんですね。

吉田:経済史から見ると、新聞社、保険会社、証券会社みたいな事業が生まれたのは、コーヒーが引き寄せた情報をもとに始まっているっていうそういうのが学べる本で、これはオススメです。

renny:今もインターネットとかを見てると、まさにそういうことがやり取りされてるのと近いってことなんですよね。さっきGoogleっておっしゃいましたけれども、ある種SNS的な感じだったんでしょうね。

吉田:そうですね。そういう場ができて、何かが生まれていくっていうのは、日本史を見ても結構あったりして。室町時代に茶道や華道などの文化が生まれるのも、室町幕府の足利将軍が趣味で身分を問わずいろんな人を集めて、一同に介する場を設けたことに由来するし、あとは明治大正時代にも財閥の経営者が茶会で集まって情報交換してたんですよ。このあたりの場が現代でいうと何にあたるのか、よく分からない。経団連みたいなのはなんか違うし。

renny:でもお茶にせよコーヒーにせよ、お酒でもいいような気がするんですけど、お酒だと眠くなっちゃうからダメか。コーヒーを通じて新しいものが生まれてたなんて考えたことがなかったんで、面白いなと思いましたね。他に食との関わりでオススメの本はありますか?

地学的な観点から和食を味わう

吉田:高校時代の理科で地学が好きだった人にオススメしたいのが、巽好幸さんの「和食はなぜ美味しい」。

renny:和食はなぜ美味しいかと地学が関係してるんですか?

吉田:和食は日本列島の成り立ちと関係しているという内容の本です。聞いたことあるかもしれない話だと、日本の水の水質って他の国よりも柔らかい水、軟水で、それは何でかっていうと、山から一気に川、海へと水が流れてきて、地面を水をつたってる時間が短いから鉱物とかが混ざらなくて柔らかい水になる。その水は昆布とか鰹節で出汁を取るために必須の条件。ヨーロッパでは、なだらかに川が流れてるんで、鉱物がいっぱい入った硬い水になっちゃって、出汁が引きづらいから、和食の出汁を使った料理は、日本の地形が生み出したものだという話です。(※補足…硬水で出汁を取ろうとすると、水の中のカルシウムが昆布に含まれるアルギン酸と反応して、昆布の吸水性が下がり、旨味成分が溶け出しにくくなる。)

renny:そんなこと考えたこともなかったですね。硬水と軟水で実際そんなに違うものなんですね。

吉田:日本国内でも京都の周辺は特に柔らかい水らしくて。だから京都から東京へ進出してきた料理屋さんの中には京都から水を持ってきて、それで料理してるっていうところもあるぐらいなんですよ。(例:菊乃井 赤坂店)

renny:舌が敏感な人だったらわかるんでしょうけど、そんなに違うものなのかは興味あります。

吉田:京都の人だからこだわりが強いのかもしれない。

renny:たしかに京都から水まで運んでますっていうふうに言われると、これこそが京料理と感じるのかもしれない。でも今のお話をお聞きしてると確かに、料理は水が決める要素が大きいのかなと思いますね。ヨーロッパの方の料理は味が濃い目というかそ、水の種類って柔らかくなくてもいいというようなことになるんですか?

吉田:ヨーロッパの料理で出汁にあたるものはブイヨンになるんだと思うんですけど、いろんな食材を足して作るものでなので、水の影響はないんでしょうね。。(※補足…獣肉の出汁を作るには硬水が有利。くさみ成分がカルシウムと結合して灰汁ができやすい。)

renny:日本料理の場合は鰹節と昆布ぐらい以外に混ぜないから、水の違いが際立つっていうようなことなんですかね。

吉田:そうですね。和食は引き算の料理、ヨーロッパの料理は足し算の料理、みたいな表現もされますね

renny:やっぱり地理というかその立地で、料理も変わってくるっていうことが、地学的なアプローチからでもわかるってことなんですね。

投資で成功するための8つのカギ「予測しない」

renny:残りの時間でお話したいのは鎌倉投信の鎌田さんのnoteで「投資で成功するための8つのカギ」というタイトルで、先日出版された本から抜粋された記事です。投資を成功するには八つほど鍵がありますと、一つ目の「先入観を解く」から始まって、八つ目の最後に「投資観を持つ」っていうようなことが成功するための鍵ですよ、と説明されていますが、こちら吉田さんご覧になっていましたか?

吉田:これって確か2021年の正月あたりに、鎌田さんが話した内容が元になってるような記憶があります。コロナのときにみんなが不安になってるから、と特別セミナーみたいなので出てきた印象があって、長い目で投資をするために必要な観点みたいなのが入ってますね。

renny:僕は自分自身あんまりできてないなって思うことが「予測しない」っていうことがあってですね。他の投資家さんともお話してても、為替とか、株式市場の短期の値動きなんてわかんないよね、予測しても仕方ないっていうようなのはよく分かります。ただ、全体として世の中こうなるんじゃないかな、こうなって欲しいな、っていうような予測は投資家であれば誰しもするのかなと思います。鎌田さんが予測しないとおっしゃってる文脈も短期で予想しないことなのかもしれないですが、吉田さんは長期で予測というか視点を持って投資を考えられてるのか、みたいなことをちょっとお聞きしたいなと思うんですが。

吉田:かなり長い目で大局的に、っていうのはあるかな。最近の一例としては、インド株みたいのが流行ってるけど、インドの人口がピークを迎える頃にインドの平均気温って何℃になってるのかな。インドの人口がいくら増えて、経済が良くなるとしても、住めないぐらいの暑さの状態になってたらダメなんじゃないかな、みたいなのは予測かな。

renny:日本もこれから夏に向けて暑くなりそうな感じですよね。海外の様子を聞いてても、温暖化を超えてすごい気温になってるような話「ヒートドーム現象」でしたっけ、ああいうの見てると、経済の活発化によって環境に負荷をかけてることが、ああいうこういう現象を引き起こしてるんじゃないか、と思うと、たしかにインド株投資が人気を集めてるようなことは僕も聞いてて、インドはダメとは思わないんですけれども、長い目で見たときに疑問を持っちゃいますよね。

吉田:予測っていうよりも、今後起こりうるリスクを考えておくみたいな話かもしれないですね。最近ポッドキャストでお話した太陽フレアで大停電が来るかもしれないとか、将来起こるリスクを頭に入れておくのが大事なのかな。

renny:だから予測というかリスク要因というか、困ったことっていう言い方すると漠然としてますが、こういうシナリオがあるんじゃないか、というふうな想定を持っておく予測、っていうのは必要なのかなと思うんですけどね。

吉田:漠然とした未来像みたいなところですかね。それに自分の投資が合ってないといけないんじゃないかなと思います。たとえば今は全世界に丸ごと投資しちゃうのが一番流行なんだけど、それは資本主義社会がずっと続いて永遠に経済成長していく、っていうのに賭けているんだよ、っていうのを納得して投資してるのかどうか結構重要かな。

renny:たしかにおっしゃる通りだし、僕も投資を続けていくあたってすごく大前提として重要だと思うんですが。とは言いつつ、会社を選別して投資をしていく場合でも、どこかしら永続的に経済成長してることを前提として持ってるのかなっていうふうに思ったりもするんですけれども、バランスというか、理解というか。。。

吉田:たしかに難しい。これはダメだと思ったときに、手放すぐらいのことしかできないかな。

renny:ダメというのは株価や短期の業績とかではなくて、自分の価値観との違いというか、そういうところの方が大きくなってくるんですかね。

吉田:自分の価値観みたいなのがちゃんとしてないといけないですね。相場の変動みたいなものに、あたふたしないためにも、価値観が必要。鎌田さんの8つのカギの「投資観を持つ」っていうのはそういうことなのかな。

renny:そういうことになるんでしょうね。「投資観を持つ」っていうのは、投資観と照らし合わせてどうか、自分が関わるかどうかを決めていけるようになれば、鎌田さんの8つのカギを生かして成功するっていうことになるのかもしれないですね。このカギのなかで7つ目に「投資に期限を設けない」と書かれていますが、期限について吉田さんはどうお考えですか?

吉田:期限を設けないのが理想ですけど…。20代の頃は期限なんて考えもしなかったけど、40歳を過ぎてくるとあと20年ぐらいで考えないといけないかな、とか迷いはじめました。

renny:なるほど。そういう投資の期限とかちょっと考えなきゃいけないな、って意識をお持ちになることがあったりするってことなんですね。

吉田:子供がいたら考える必要はなかったのですが、うちはいないので、人生の残り時間も考えて、これまで殖やしたお金を使ってどう遊ぶかみたいなことも考えますね。

renny:それは「DIE WITH ZERO」みたいな考え方みたいなやつですか。

吉田:それもありますよね。ここから20年間でお金を増やしたとしても、20年後に手にするお金は嬉しいか?なみたいな考え方ですよね。

renny:だから資産をたくさん持ってても、それだけじゃどうにもならんっていう。

吉田:そうですね。

renny:だからうまくお金を使いながらというか、どうやったら活かせるのか、というようなことになるんですかね。

吉田:そうですね。たとえばクラウドファンディングに気に入ったのがあれば、積極的にお金出したいと思いますし。最近は結婚式でお世話になったところ(柳川市の御花)がクラウドファンディングをしてたから参加しました。

renny:クラウドファンディングとかそういうようなものでお金使うことで、何か新しいものが生まれたりするっていうことも、なきにしもあらずだと思うんですよね。出したら出しっぱなしっていうことでもないと思うんで、その意思を持って使われたら、また次のものが資産としてできるのかもしれないなと思ったりはしますね。

吉田:私はクラウドファンディングで文化財関係ばかりにお金を使っているから、新しいものを生み出す、ってのことを意識しないといけないですね。

renny:ファイナンスというかお金としての資本を、何十年も日本はうまく使いこなせなかったですからね。ただお金だけ増やしても仕方ないし、それを使って何か新しいものを作ろうっていう人が生まれてこないといけないのかな、っていうのは感じますよね。

吉田:そうですよね。田内学さんがどこかで書かれてたと思うんですけど、みんなNISAや資産形成の話ばかりしているけど、本当は若い人は投資をされる側になってくれなきゃ困るんだよねって。確かにそういう人たちが増えて、この人に投資してみたい、という事例が増える世の中にならないと、本来はいけないんですよね。

renny:そのテーマって息が長いというか、手をこまねいているだけで、結局何も手つかずになる、というのが続いちゃっているので、ちょっとずつでも解決策というか、新しいことが生まれるようになったらいいなと、僕は常々思ってたりします。


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