信頼感をベースに、一人ひとりが持ち味を活かせる舞台に
目指すのは「人事がいなくても自走する組織」
―人事の立場から、PIVOTをどんな組織にしていきたいですか?
武藤 個人のパワーを最大化する自走型の組織にしたいですね。PIVOTは自立したプロの集団です。おそらく全員が一人でも十分に仕事ができるメンバーですが、「この仲間と一緒にやりたい」からここに集まってくるのだと思います。
力を備えた個人が集まった上で、メンバーの行動指針となるカルチャーができあがれば、もう人事はいらないんです。PIVOTで私が目指すのは「人事がいなくても自走する組織」かもしれません。自己否定になってしまいますが(笑)。
何か問題が起きたとしても、「PIVOTならこうだよね」と皆が自然に選択できる。選択が間違ってもいいし、変更になっても前向きに議論できる。お互いを尊重しながら、強みと弱みを補い合ってパフォーマンスを高められる。そんな組織にしたいし、PIVOTならできそうだと感じています。
最近、採用面接をした人から「PIVOTの人は皆、自然体ですね」と言われたんです。飾らず、取り繕わず、肩の力が抜けていると。たしかにそうだと思います。そして、自然体でいられるのは、自力で実績を積み上げてきた自信があるから。つまり、高いパフォーマンスは前提として求められる厳しい面もありますね。
竹下 おっしゃるとおり。とても楽しい半面、結構厳しい世界だと私も実感していますよ。そして本番はこれからです。リアルな衝突も出てくるでしょう。それでもうまくいきそうな自信はあります。
武藤 そうですね。私もポジティブです。
「全力で闘える安心感」の素地がある
―なぜうまくいきそうだと思えるのですか?
武藤 根底に信頼があるからでしょうね。お互いの能力や人格への敬意と信頼関係がベースにあることが大きいですね。
チームの成長には衝突がつきものですが、そのステージを迎えたときでも言いたいことが言い合える、「全力で闘える安心感」を少しずつつくっていきます。十分に乗り越えられるメンバーが揃っていますし。
竹下 私も乗り越えられると思います。そう思える理由は、すでに日々重ねている議論にその素地があるからです。
毎週金曜の会議の後、いろいろな分野からゲストを呼んで話を聞く定例イベントを行っていますが、そこでも非常にいい議論が生まれていますよね。
例えば、まさに今日もSDGsに熱心な20代をオフィスに迎えて皆で話を聞いたのですが、佐々木さんが「どこもかしこもSDGsブームの今、サステナビリティをパーパスに掲げたところでビジネスとして差別化できないのでは?」とストレートに質問したわけです。するとゲストが「いや、コモディティ化したって構わないというのが世界の潮流なんですよ」と答える。すると、佐々木さんが「なるほど。ということは……」と展開し、かと思えば誰かが「でもやっぱり安い商品を買いたくなるのが消費者じゃない?」と新たな疑問を投げかける。
その場には、記事や映像のコンテンツをつくるメンバーもいれば、PR、マーケティング、コーポレートのメンバーもいて、皆がフラットに話をして、試行錯誤のプロセスに立ち会っている。そして私は私で何を考えていたかというと、「これから準備する記事の方向性が見えてきたな」と頭の中でひらめいていたんですよね。
つまり、誰かの反論でさえコンテンツにできるのが、私たちコンテンツサービス企業の強み。試行錯誤がすべて無駄なく本業に生かされていくから、議論に前向きになれる。チームビルディングにもつながり、本業にも生きる。これは非常に大きなメリットだなと感じています。
竹下隆一郎/チーフSDGsエディター
朝日新聞経済部記者、スタンフォード大学客員研究員、ハフポスト日本版編集長を経て、就任。アメリカのニューメキシコ州やコネチカット州で育った。世界経済フォーラム(通称:ダボス会議)メディアリーダー。英語名はRyan(ライアン)。2008年5月に4ヶ月の育児休業を取得。子どもの弁当づくりが趣味。2021年秋に、『SDGsがひらくビジネス新時代』(ちくま新書)を刊行予定。
武藤 自分の意見に固執しない柔軟性も、PIVOTメンバーの特徴ですよね。実はこれができない人は多くて、組織の人間関係がこじれるのがよくあるパターンなのですが、PIVOTに集まる人たちは自分の意見を修正したほうがいいと気づくと、割と素直に考え方をピボットしますよね。もともと取材やコンテンツづくりのプロが集まっているからでしょうか。他者の意見をどんどん取り入れて、自分の成長に活かそうとする人が多い気がします。
もちろん、それがゆえの課題もあるとは思いますが、確執が生まれにくい土壌がすでにできているのではないでしょうか。
自分で提案して自分の仕事をつくり、自分の機嫌は自分で取れるマチュリティ(成熟度)の高さ
竹下 ダイバーシティの面ではいかがですか?
武藤 20名ほどいるメンバーの性別は男女半々。年齢も創業メンバーは経験豊富な40代が中心ですが、20〜30代のメンバーも続々と増えてきました。
ひとつ、私がぜひアピールしたいのは、佐々木さん、木野下さん、竹下さんという男性のコアメンバー3人が、未就学児から中学生までのお子さんを育てるパパとして、仕事も家庭も大切にバランスをとりながら働いている点です。
竹下 たしかに男性メンバーが「子どもの夕食づくりがあるので、今日は早く帰ります!」といった会話もよく飛び交っていますね。
武藤 3人とも仕事が大好きなハイパフォーマーですが、その時々で優先順位を決めながら家族も大切にしている様子が日常的に伝わってくるんですよね。採用のときも、仕事ぶりだけでなく、その人が人生で何を大切に考えているのかを丁寧に聞くようにしていますし、子育てに限らずいろいろな事情を抱える方でも、自分の裁量で生産的に働くことが可能な環境だと思います。
竹下 とてもやりやすいです。一方で、あえて厳しく言っておくと、自分で自分の面倒を見られるセルフマネジメント力は結構求められます。今集まっているメンバーは、自分の持ち場に対してプロフェッショナルであろうとする資質をすでに備えているので、他人に対する面倒見は決してよくないです。自分で提案して自分の仕事をつくり、自分の機嫌は自分で取れる。そんな自立した人でないと結構きついと思います。
武藤 おっしゃるとおりで、マチュリティ(成熟度)の高さが問われるチームですよね。一方で、子どものような好奇心は忘れない。自走型で自分の仕事に責任は持ちつつ、他者に対してもオープンになれる人。そんな人がPIVOTに向くと思います。
一人ひとりの登場人物が持ち味を生かせる舞台を
―最後に、武藤さんに聞かせてください。人事の仕事をやっていて、一番ワクワクするのはどんな時ですか?
武藤 そうですね。その人がその人らしく、自由に言葉を発し、いい表情をしている瞬間を見られるときです。「人が自然体で表現する姿」を見ると嬉しくなりますね。
―もともと映画が好きだったという武藤さんのルーツにもつながりそうです。
武藤 たしかに、映画は人の感じ方や生き方を切り取って表現するアートですよね。私も人事の役割を通じて、一人ひとりの登場人物が持ち味を生かせる舞台をつくっていきたいなと思います。
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