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トレーニングをどうデザインするか。
Writer
やまだえっせい
「いつかこの子達が世界の誰とサッカーをしても楽しむことができる共通言語を伝えてあげたい。だから僕はサッカーを教える。」
中学校でサッカー部の顧問をしていた僕は、サッカーの原理原則やセオリーを知らずに苦労をしている選手をたくさん見てきました。
そんなサッカーの共通言語を知らないがために苦労している選手を、なんとか救ってあげたい。ひょんなことからジュニア(U8)の指導者になった僕は、彼らに共通言語を伝えるためにはどんなトレーニングが必要か、どんな言葉を選択すべきか、どんな関わり方をするべきか、そんなことにこだわってきました。
ジュニアのお父さんコーチが自信を持って指導ができるような一助となれば幸いです。「これを見てくれた人のチームの子どもが少しだけサッカーが上手くなったら良いな」そんな甘い考えでいます😊
note:https://note.com/kenseio7o3
Twitter:https://twitter.com/kenseifootball
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どうもやまだえっせいです、よろしくお願いします。世間は新型コロナウイルス蔓延防止のために各種活動が自粛、中止となっています。2月27日、安倍総理の全国一斉休校要請を受けて、学校も休みになり、僕ら教員も授業のないデスクワークな生活を送っています。勤務時間はいつもより圧倒的に短いはずなのに、いつもよりずっと疲れるのは、疲労の根源がきっと仕事のつまらなさにあるからなんでしょうね。その仕事は心が躍るかどうか?職業選択においてはそんなどんな本にも書いてありそうな当たり前が、本当に大切なんだと気づいたことを僕は休業明け、一番に子ども達に伝えるつもりです。僕はいつも子どもに元気をもらっていたんですね。それぐらいデスクワーク向かない笑
さて、「学校が休みなのにサッカーなんかやっている場合じゃないだろ」ということで、うちのチームも全カテゴリー活動休止です。自粛ムードに色々と意見される方が多い中で、僕はこの休みに割とポジティブです。むしろ強くなって帰ってくるラッキーぐらいに考えています。普段うちのU8はこのカテゴリーにしては多い週4日活動しているので、しっかり休まないとエネルギーが成長に回らない可能性があるのです。後は、ちょっとやそっとのお休みでサッカーから離れてしまうような子どもには育てていないという自負があります。トレーニングの後にいつも、お父さんお母さん待たせて30分ボール蹴ってる子ども達です。心配しなくても、今日も1人でボール蹴ってるでしょうから。
僕はというと、ここぞとばかりにインプットの時間にしようと意気込んだわけですが、当初の予定とは裏腹に3月に入ってから観たゲームは磐田の開幕戦とシティ×マドリーのCLの2本のみ。結局普段から「時間がないからできない」と言ってるやつは、時間があってもできないということです。だって90分観るって結構疲れるんだもん…これじゃあ到底有名戦術ブロガーにはなれません。
いつもいつも前置きが長くなってしまって申し訳ないんですが、言いたいことも言えないこんな世の中じゃポイズンなので、これからも言いたいことを言いたいだけ言わせてもらおうかと思います。
ということで、今回のテーマは「トレーニングをどうデザインするか?」です。よく「山田さんのチームはどんなトレーニングをしていますか?」とか「ドリルの割合はどれぐらいが良いですか?」とか「簡単に月100万稼ぐ方法知りたくないですか?」とかいうDMをいただくので、僕がどのように90分をデザインしているのかをまとめてみました。
トレーニングをどうデザインするか?
【U-8トレーニングの作り方】
今回は僕のU8のトレーニングの作り方をベースにお話をさせていただきますが、基本的にはどのカテゴリーもデザインの仕方には大差はないのではないかと思っています。
基本的には小学校低学年の集中力が持つのは70分程度、90分でも長いと思って良いかもしれません。それ以降はあまり学習効果がないと思います。高校や大学のトレーニングでも90分程度が相場じゃないですかね?以前筑波大学の小井土監督と飲みに行った時に筑波大学はJリーグのアクチュアルタイムを意識して約60分程度のトレーニング時間だという話を伺いました。夏場に3時間トレーニングするチームもありますが、間違いなく強度は時間の経過と共に下がっていっているのがわかると思います。
トレーニングにおけるIntensity(強度)とDuration(時間)の関係を示したグラフです。時間が経つほど、トレーニングの強度は下がります。スーパーマンではないので筋疲労もあるでしょう。筋疲労はケガの原因にもなります。長時間強度を保つのは難しいのです。#これからの部活動 https://t.co/OTHYi9G5pK
— やまだけんせい (@peteacher0703) December 28, 2018
そういう時間設定をする指導者に限って、夏に長時間トレーニングしないと夏場の公式戦で戦えないと考えていますが、ゲームに合わせてトレーニング量、食事、睡眠をコントロールしてコンディション作る方がよほどパフォーマンスは上がると思います。もちろん強度によって時間は変わると思いますのでご理解ください。
90分でやるとして、その内訳を考えてみました。
①アップ(20分)
②メインパート(60分)
③クールダウン(10分)
①アップ(20分)
アップ本来の意味はざっくり「筋温を上げてパフォーマンスを上げる」ことで、メインパートに良いコンディションで入ることだと考えているんですが…小学校低学年はそんなに深く考えなくても良さそうですね。楽しく身体を動かすことで、サッカーやりたいなって思えればオッケーだと思っています。ここで飽きちゃうとその後モチベーションを維持するのが大変なので楽しく取り組めるものを意識して入れています。
コーディネーショントレーニングやSAQトレーニングなんかは後々爆発的な力となるはずなので、今のうちからやっておくと良いかもしれないですね。
今日のコーディネーショントレーニングのひとつ。上に蹴って、落下地点に入るだけのシンプルなトレーニングだけど、こういうのこのカテゴリーでやっておくかどうかがこれから大きな差になると中学校体育教師は思うのです。 pic.twitter.com/d68F9y4AHO
— 山田 兼世/YAMADA KENSEI (@kenseifootball) February 2, 2020
小学生の時期は、色んな動きをすることで後の運動神経の獲得につながってきます。外遊びが少なくなってる現代っ子達なので、アップで色んな動きを入れてあげましょう。普通の鬼ごっことか、ドリブル鬼ごっことか良さそうですね。ラグビー系の動きも入れてあげると良いと思います。
守備の導入のトレーニング。攻撃側はボディフェイクを用いて対岸を目指す。守備側はボールの正面から外れない。守備側は抜かれても攻撃側のお尻のシッポを取れば勝ち。攻撃側は抜いた後もスピードを落とせないのはプレスバックへのリハーサル。ジュニアから守備の個人原則を積み重ねていきたいです。 pic.twitter.com/g5dqARa2i8
— 山田 兼世/YAMADA KENSEI (@kenseifootball) July 27, 2019
ボールを使ったトレーニングだと、ドリブルやリフティング、パスコンなんかのドリルトレーニングもアップパートになります。ドリルトレーニングは基本的に認知や判断を伴いづらいので、世界的にネガティブに考えられるようになってきています。ただ、ドリルの良さはパス、コントロール(トラップ)、ドリブルの技術を切り取って繰り返しトレーニングできる利点があるので、技術的にまだ完成されていない低学年こそドリルを大切にするべきだと考えています。30分ぐらい取っても良いかもしれませんね。
最近コントロールオリエンタード系のトレーニングを必ず入れるんだけど、とにかくこだわってやっていると、ゲームになった時にスペース確認して自然とやっているのね。まだまだこれからだけど、少しずつ成長が見られるうちのU8です。やり続けること、言い続けること。ジュニアは特に継続は力なり。 pic.twitter.com/2eR7UjWEJK
— 山田 兼世/YAMADA KENSEI (@kenseifootball) February 22, 2020
注意しなければいけないのは、ドリルだけでトレーニングが終わらないようにしたいということです。ドリルだけをやっていてもテクニックが上手くなるだけで、サッカーが上手くなるわけではないということを押さえておきたいですね。大切なことは、技術をいつ使うか、どう使うかという認知、判断、実行のサイクルです。なので、その2つを含むトレーニングを次のメインパートに入れたいですね。
②メインパート
メインパートはだいたい2〜3種類のことをやると良いと思います。トレーニングの種類で言ったら、ポゼッション、守備のトレーニング、シュート練習などですね。考え方としてはTR1、TR2というような形で良いと思います。忘れちゃいけないのは、最後はなるべくゲーム形式のトレーニングを入れたいということです。その日のテーマが守備であるのであれば、アップから最後のゲームまでそこにフォーカスするようなメニューの方が良いかと思います。テーマがあれこれあると学びが焦点化できずに整理が仕切れないのかなという個人的な見解です。
子ども達は今、大草原に取り残されています。今のままではどちらにも走ることができます。しかし、みんながバラバラの方向に向かって走り出せば全員の学びを保証をすることが難しくなります。「みんな違ってみんな良い」という考え方は、一見良さそうで、危険もはらんでいます。
— 山田 兼世/YAMADA KENSEI (@kenseifootball) March 2, 2020
例えばポゼッションのトレーニングなら、うちのU8は20m×20mのグリッドの中で4対4のポゼッションなんかをやります。同数にするとどうしても外すアクションが生まれますからカテゴリーによっては難しいトレーニングになるかもしれません。上手くパスが回らなかったら守備の人数を減らしても良いですし、フリーマンを入れて優位性を作っても良いかもしれません。グリッドを広げても良いかもしれませんね。U8のカテゴリーでは多少攻撃側に優位なオーガナイズでも、パスがつながる楽しさや成功体験を積ませるのが優先です。人数を変えればいくらでもバリエーションが増えます。8歳の走力でスライドできる幅も決まるので目的に応じて変えていきたいです。4対4+2フリーマンで方向性のあるポゼッションやトランジションの発生するポゼッションもやります。色んなオーガナイズの中で、ポジションの取り方なんかを工夫してやっています。
シュート練習であれば、例えばアジリティと認知のトレーニングを混ぜても良いかもしれません。ボールなしのコーンスラロームから、左右にコーンを置き、コーチが2色のマーカーを手に持ち出した色の方のコーンを回ります。コーチがボールを配球しシュートを打ちます。とにかく全力のスプリントでボールに出会わせたいです。このカテゴリーのうちに全力でボールに出会う意識は必要でしょう。
あとはコントロールオリエンタード意識で、僕が少し速めのボールを配球して、ゴールに近い方の足でコントロールして打つものや、さらにそこにトランジションのアクションを加えてシュートを打った選手がディフェンスに入るシュート練習もします。
シュートTR。トランジションの要素を入れるとインテンシティはぐっと上がる。 pic.twitter.com/I79l8GyvyI
— 山田 兼世/YAMADA KENSEI (@kenseifootball) March 1, 2020
うちはシュート練だけで10種類くらいありますね。ゲームは普通のゲームでも良いですし、人がいない時はゴールを4つ(各チームゴール2つ)作れば、空いてる方を選ぶ認知、判断が生まれます。話題のフニーニョはおもしろいトレーニングです。
■上手い子だけボールを触れればいいの? サッカー強国ドイツが導入を決めた3vs3のミニゲーム「フニーニョ」とは。試合中1度もボールに触れない子がいて良いのか。中学以降に伸びるかもしれないのに、サッカーから離れるきっかけに…
— サカイク編集部 (@sakaiku_jp) March 4, 2020
ドイツサッカー連盟が導入推奨する理由https://t.co/pSYkeBr2Db
最後のお楽しみという形で終わってしまうのではなく、誰が高さ、幅、深さを担当するのか明確にしながらゲームを進めるようにしています。守備はとにかく守備の優先順位を意識しながらのアプローチはボールに触れるぐらいまで行くことを求めます。とにかくインテンシティの高いゲームになれば良いなと思ってます。
③クールダウン
グラウンド整備もありますから5分ぐらいですかね。小学校2年生に疲労がとか、回復がとか話をしても理解は難しいと思うので、トレーニングの後はダウンをするんだよという習慣付けのためにも入れておいた方が良いと思います。ちなみに中学校の部活の顧問をする時は、帰宅後なるべく浴槽に浸かることを勧めています。余裕があれば交代浴も良いですね。
トレーニングのデザインは、指導者がサッカーが上手いということをどう定義しているか、どんなゲームモデルを志向しているかで大きく変わってくるでしょう。何をねらってトレーニングをしているのかわからないのであれば上の2つを聞いてみると良いかもしれませんね。チーム選びにおいては指導者の志向は相当なウェイトがありますから。
以上が僕が普段U8カテゴリーでトレーニングをする時のデザインです。8歳というまだサッカーの入り口に立ったばかりの子ども達は、いわば色のないキャンバスです。今日は赤色を、今日は青色を、そうやって僕らは日々色を重ねていきます。同じ色ばかり塗っていたらどこか味気ないし、規則性もなく様々な絵の具を使っても何がなんだかわからない。だから日々僕らは色んなことを考えデザインしていく必要があるんですね。
あ、自分のカテゴリーで染めすぎてしまうと、後々苦労してしまうので余白は残しておいてくださいね。
育成はリレーですから。
Writer
山田 兼世(やまだ けんせい)
「いつかこの子達が世界の誰とサッカーをしても楽しむことができる共通言語を伝えてあげたい。だから僕はサッカーを教える。」
中学校でサッカー部の顧問をしていた僕は、サッカーの原理原則やセオリーを知らずに苦労をしている選手をたくさん見てきました。
そんなサッカーの共通言語を知らないがために苦労している選手を、なんとか救ってあげたい。ひょんなことからジュニア(U8)の指導者になった僕は、彼らに共通言語を伝えるためにはどんなトレーニングが必要か、どんな言葉を選択すべきか、どんな関わり方をするべきか、そんなことにこだわってきました。
ジュニアのお父さんコーチが自信を持って指導ができるような一助となれば幸いです。「これを見てくれた人のチームの子どもが少しだけサッカーが上手くなったら良いな」そんな甘い考えでいます😊
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