サッカー選手のハムストリングスの肉離れ〜再発予防のためのメディカルリハビリテーション〜
普段は栃木県の病院で理学療法士として整形外科・スポーツを中心に、現場のコーチとドクターと連携を取りながら、競技復帰を目指しリハビリを行っています。外部活動として高校サッカー部のトレーナーをしております。また、個人として「かけっこ教室」・「フィジカルトレーニング」指導を行っております。医療と現場を繋げられるような、現場で役立つメディカルの情報を主に発信できればと思います。
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皆様、こんにちは!
PITTOCKROOM MEDICAL TEAMメンバーの安江です。
ピッチでの傷害予防をアップデートし、怪我からのリハビリ期間をパフォーマンスup期間へと変革するというvisionを掲げ、サッカーに関わる全ての人へ、より良いものを届けられるように記事を書いていきます!
よろしくお願いします!
7月よりJリーグが再開し盛り上がりをみせていますが、国内・国外でケガの報告が聞かれています。その中でもハムストリングスの肉離れの報告が多い印象です。
全治約10週間など、長期離脱する選手も中にはいます。シーズンが始まったばかりなのにとても残念ですね。
近年、海外では高いスプリント能力が求められる一方でハムストリングスの肉離れが増加傾向になっているという報告もあります。
シーズンを通してパフォーマンスを維持・向上しながらハムストリングスの肉離れを予防していきたいですね。
今回はサッカー選手に多い、ハムストリングスの肉離れについて書いていきます。
ハムストリングスについて
まずはハムストリングスについてです。PITTOCK ROOMの記事でも良くでてくるサッカーに重要な筋肉の一つです!
ハムストリングスは骨盤の付け根から膝の後ろにかけてついており、膝を曲げたり足を後ろに引くことで機能します。
スプリントの中で接地直前に大きく働き、接地の衝撃を吸収し、加速の力を生み出す役割をします。
下記の図は松本さんの先輩が作成した図を引用させて頂きました。スプリント走中のハムストリングスの活動が分かりやすく非常に参考になります。
スプリント走中の代表的な下肢筋活動の模式図
スプリント走周期における筋活動(Mero and Komi, 1986;Novacheck, 1995:馬場ほか,2000を元に作図)(※1)
引用:Rikupedia-陸上競技の理論と実際- スプリント走中の筋活動についてhttp://rikujo.taiiku.tsukuba.ac.jp/column/2017/105.html
MC2 奥平柾道(※2)
また、サッカー選手に必要な筋肉の1つであるハムストリングスは爆発的なスプリントパフォーマンスに非常に重要な筋肉です。
sunnyさんのYou Tubeとnoteの記事が非常に勉強になります。
サッカーパフォーマンスのために、ハムストリングスの肉離れ予防と受傷後のリハビリテーションはとても重要なことがわかりますね!
サッカー選手の肉離れの疫学
サッカーでの発生状況
国内プロサッカー選手における過去10年間の外傷・障害発生の推移ではプレーから離脱を余儀なくされるケガのうち、肉離れが占める割合は38.8%で年間平均21.1件だったと報告している(※3)
海外の報告では肉離れは障害・外傷の31.8%を占め、練習中より試合での発生頻度が高い。試合では前後半の序盤において肉離れの発生頻度が高くなると報告。また再発率は16%と報告されている。(※4.5)
国内・海外ともにサッカー選手に多く、再発が多いケガであることが分かりますね!!
肉離れの受傷メカニズム
サッカー選手の多くに見られる肉離れの例はランニング(スプリント)中に起こるハムストリングスの肉離れです。
発生機序として2種類のタイプがあると言われています。
ハムストリングスの肉離れの発生機序
①スプリント型
太もも前面の大腿四頭筋の強い求心性収縮(筋肉が短くなりながら収縮)で足が振り出され、後面にあるハムストリングスには遠心性収縮(筋肉が伸びながら収縮)が生じ発生するタイプ。
②ストレッチ型
サッカーでの切り替えし動作やステップ動作時に、地面からの反力により股関節屈曲が生じハムストリングスの遠心性収縮が生じ発生するタイプ。
この2種類のタイプが多い印象です。
特に走行サイクルのswing phase(足が離れてから接地するまで)の最後であるlate swing phaseでハムストリングスは筋長を長くしながら収縮する場面で強い負荷がかかります。
また、筋肉が短くなりながら収縮する求心性収縮よりも、筋肉が伸びながら収縮する遠心性収縮の方が筋肉に働く力が大きくなり、肉離れの危険性が高くなると言われています。
それではハムストリングス肉離れの受傷シーンを観察してみましょう。
ハムストリングス肉離れの受傷シーン
やはり両シーンともにハムストリングスの遠心性収縮が生じ受傷していることが予測されます。
遠心性収縮がリハビリや予防のキーワードとなってきそうですね!!
サッカーではスプリント以外でもキック・カッティング動作やストレッチでもハムストリングスの肉離れは生じると言われています。
また、サッカー中のハムストリングスの肉離れについて股関節屈曲に加え、内旋力(内側に捻る)が加われば大腿二頭筋長頭、外旋力(外側に捻る)が加われば半膜様筋損傷が発生するとの報告もあり、股関節の回旋(捻り)要素もリハビリ・予防の観点からは重要になってきます!!
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