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頭の片隅シリーズ 日銀ETF出口戦略より重要な事

◾️日銀ETF出口戦略論議再燃

日銀ETF出口戦略に関しては植田総裁就任時今年の2月に一度こちらのnoteに書かせていただきました。

そこでは 日本の株価急落時での株価維持政策の歴史、海外の状況および僕の日銀ETF出口戦略に関する私見 を主に書きました。

そんな日銀ETFですがここに来て出口戦略の議論が再燃しました。

6月7日の衆院財務金融委員会で鈴木俊一財務相は、日銀保有ETFの処分に関連して、少子化対策の観点も含めてETFを若年層に現物給付する活用案について 「政府が財源確保目的で簿価で買い取るといったことが許容されるのかどうかという点を含め、考えていかなければならない」 と述べ、課題があるとの認識を示しました。

鈴木財務相は、日銀保有ETFの売却を含む取り扱いは「金融政策の一環として日銀で検討されるべき事項」としながら、これまで日銀は処分方針を定める際、市場などの状況を勘案し適正な対価によることとするなどと説明してきたと指摘。簿価で政府が買い取ったETFを若年層の投資の原資にする提案に関しては、ETFが売却されることによる株式市場への影響、証券口座非保有者への給付方法をどうするかなど、さまざまな論点があると語りました。

同じく財金委に出席した植田和男総裁は、日銀が保有するETFについて「処分の具体的な方法に言及するのは早い」と指摘。その上で、処分価格は「時価をベースにすることになる」と発言。2%物価目標の実現が近づいてきたら、ETF処分の具体的な戦略について金融政策決定会合で議論して適切に情報発信していきたいと述べました。

僕は植田総裁がもし黒田前総裁からの政策を転換し始めるとしたら2度目以降の日銀政策決定会合ではないかと予想していました。

今週に開催された日銀政策決定会合は植田総裁体制になってから2度目となります。

それもあり今回財金委にて日銀の今後の政策の一環としてこのETFの件が話題に上がった可能性はあります。

流石に簿価買取というのは無理なのでは…

16日の日銀政策決定会合後の植田総裁の会見を聞くとやはり予想通り現状の緩和的政策に変更はありませんでした。11時37分に終わった会合を見ればほとんどしゃんしゃんで終わったとも言えます。

しかし本当にそうでしょうか?

会見の内容を精査すると植田総裁は現状を全て良しとしていない、何となく頭の片隅にある不安感やリスクのようなものを滲み出していました。例えばYCCの副作用のくだりや物価が思ったように下落してこない現状などでそう感じました。一方で日本経済がようやく良い方向に向けて動き出しているその芽を摘みたくないという意思も感じました。またヒアリングという言葉も出てきました。ETFについては具体的に言及はなし。資産買取プログラムに変更はないというところでカバーされているのでしょうが、ヒアリングという点ではこのETFの出口戦略についてもヒアリングをしていると考えるのが妥当です。

◾️火のないところに煙は立たない

意外にTwitterではこの話題はニュースとして取りあげられているものの、それ以上の論調というか危機感のようなものはあまりない気がします。

今回の日銀政策決定会合の結果を見るとこのETF出口戦略の話もどこかへ行きそう…

そりゃこんなにマーケットが盛り上がっているのですからそれに冷や水を指すようなニュースを取り上げるわけありません 笑

以前僕はもし日銀がETFをマーケットで売却開始したとすると

東証プライム売買代金が平均で3兆円、日銀ETF時価52兆円、営業日数245日(2022年)として

1%(300億)売却 1733営業日 → 7.07年
0.5%(150億)売却 3466営業日 → 14.14年
0.1%(30億)売却 17333営業日 → 70.74年!!


と試算しました。

現状 日銀は前場TOPIXが2%以上下落するとETFを後場VWAPギャランティ価格で購入します。まだこのオペレーションは終了していませんし、同じ条件で株価が下がればETFは購入されます。

単純にマーケットが良いだけ…

このオペレーションが開始されて日銀は693回ETFを購入しています。

一番最初に購入したのが
2010年12月15日の142億円
最小が2014年4月期の116億円
最大が2020年3月17日以降3月いっぱいの2004億円


もう少し細分化してみるとこの日銀ETF購入はざっと5つのフェーズに分けられます

1.2010年12月15日から2014年10月17日
2.2014年11月5日から2016年8月3日
3.2016年8月4日から2020年2月28日
4.2020年3月2日から2020年8月5日
5.2020年9月4日から現在


フェーズ1では100億から300億まで金額が細かく分かれますが、それ以降のフェーズはその期間大体金額が固定されています。このフェーズとは金額に変更がありその金額が継続的に購入された期間です。

日銀はその時のマーケット状況においてETF買い条件や金額を局面毎機動的に変えてきました。

日銀ETF購入を機械的なルールと論ずる方もいますが、金額を変えたり、購入条件を変えたりするのは明らかに相場観を入れています。唯一前場TOPIXがX%下落したらという押し目を買うというスタンスのみ一貫しています。

Xの数値は一応非公表になっていますが現状はTOPIX-2%、以前はー0.2%やー0.5%等機動的に変更しています。

相場観は単にマーケットの相場観だけでなく、政府の意向とのゆるい連携。

例えばアベノミクス初動では金額的にはまだフェーズ1だったにもかかわらず、フェーズ2やフェーズ3というようにギアを変えてきたのは明らかに景気浮揚というか株価浮揚を狙ったものだと言えます。

またフェーズ4である2020年3月以降その年末まではコロナパンデミック初動のパニック的な売りを吸収する役割もあり57回5兆8000億円以上の金額を購入しました。

これも株価維持的役割は大きかったはずです。

株価が落ち着くとフェーズ5にはいり条件を厳しくすることで結果的には高値を購入する頻度は大きく下がりました。

これによりパフォーマンスが大きく向上することになりました。

その結果 簿価37兆円に対して時価57兆円で20兆円の含み益を生む、結果として大きな投資成果 を生んだことになります。

マーケットが右肩上がりだったということはありますが、マーケットに結果論なんてよくあること。

このパフォーマンスは見事としか言いようがありません。

長期投資のお手本⁉️

もちろんこのETF購入で例えば議決権行使に関する問題や225銘柄の歪み問題(今は225型ETFは購入しない)など別の問題が噴出してきたことも事実です。

しかし この成功は個人投資家の長期投資にとっても一つの良い参考例を提示したのではないか と思います。

例えば現状個人投資家や企業の年金などは入金時(給与支給日)に定金額購入で所謂ドルコスト平均法が主流と考えられます。

僕もサラリーマン時代に確定拠出型年金はこのスタイルで、あまり趣味ではなかったですが、仕方なくやっていました 笑

10年以上継続して2倍程度のパフォーマンスでしたからアベノミクス様々。

企業年金のメリットは自動で積み立ててくれるのと会社の補助があげられます。

また確定拠出型(IDECO含む)ですと銘柄選択の柔軟性があり、ご自身の趣向に合わせて資産形成できるというのがメリットかもしれません。

入金金額と購入タイミング等自由が利かない設定なのかな?

ルールの徹底とマーケット状況に合わせて臨機応変に購入条件変更する柔軟性

もちろんマーケット状況に合わせるというのはなかなか初心者に方には難しいとは思いますが、出口戦略に戦々恐々としているより参考にできる点を探す方が前向きな気持ちになるのではないでしょうか?

僕も日銀に負けない単純なドルコスト平均ではないルール考えてみようかな?

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