あい かわらず
記憶から消える。僕のことを知る人がいろんなところにいる限り、いろんなところに僕はいるが、少しずつ僕は消えている、誰だってそう。たくさん遊んだあの子より、一度こっぴどく叱られた、コインランドリーの主みたいなおじさんの方を覚えているみたいに、強烈だった人以外、みんな黒。顔が黒くなるのだ。頭の中の集合写真で、1人、また1人、顔が黒く塗りつぶされる、誰だってそう。そして僕も、誰かの頭の中ではとっくに黒く塗りつぶされていて、僕が与えた印象なんて、水たまりに一滴滴れた一瞬の波紋。その程度なのだ。その程度でしか生きられないのに、生きていたいんだよ。忘れられたくないんだよ。死んだ人が忘れられるんじゃなく、忘れられた人が死ぬんだよ。そんな思いで文字を書く。首に食い込んだ指の隙間から少しずつインクを搾り取り、爪を齧って燃料にし、隙間風が吹くような穴だらけの人生から気持ちの表現に使えそうな言葉を切り出す、そうやって書いた文字の方が僕らしくて、吸ったこともないのにタバコを咥えたい気持ちになる。子供っぽい。必死になって世界に爪痕を残している、齧って無くなった爪で。こんなくだらない考えを知らない、ましてや僕が文章を書いていることすら知らないこの人は、相変わらず無邪気に僕の後ろから手を回す。呑気なものだ。黒くならなかった人。塗り潰したくてもいつまで経っても黒くならなかった、挙句の果てには頭の中にあるのとおんなじ笑顔をあっけらかんと向けてくる。死んだと思っていた。この人の頭の中の僕はとっくに黒く塗りつぶされて死んだと思っていた。ああ、この人だけは、大切に守ろう、もう絶対に自らマジックでぐるぐるに塗ろうとしないぞ、あの日から決めた。僕は僕と、しっかりとゆびきりげんまんした。『なんで付き合ったの?』いつか問うた言葉。『自分の気持ちに従った』この上ない返事。僕の中で変わらなかったのと同じ、この人の中にも変わらなかったものがあったのだ、涙の海に映る月はとっても綺麗で、昔よりずっと目を奪われる。愛変わらず僕は今日も、次に月が見られる日を楽しみになんとか生きている。
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