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桔梗(ききょう)

秋の七草、桔梗が咲いています。

広い釣鐘状の花は、優しく空間を包んでいます。
英名でballoon flowerといいますが、蕾は丸く風船のように膨らみ、内側を守るように繊細に開いていきます。

開花直後は雄しべが中心の雌しべと一つになっていて、この時点では雌しべは成熟しておらず、雄しべだけが先に成熟します。
これによって自家受粉を避けることができます。

雄しべは花粉を未成熟の雌しべに預けて離れていきます。

花粉が虫によって運ばれ、雌しべの色があらわになってきます。

今度は雌しべが成熟し、先が5つに割れて受粉の体制が整います。
桔梗は時空間をうまく使い、大切なものを守っているような印象があります。

桔梗は、花弁、がく、雌しべが5裂、雄しべが5本
5の基本数を持っています。
桔梗の花の姿は五芒星になっていて魔除けの意味を持ち、陰陽道の象徴となっていたり、家紋になっていたりします。

桔梗の根は生薬となり、喉や呼吸器・皮膚に働き、排膿・去痰・止咳の効能があります。

新古方薬嚢しんこほうやくのうでは、
“桔梗 味辛微温あじしんびおん
咳を止め痰を去り、膿を消し痛みを鎮む。
又よく咽痛を治す。
これみな氣を増し氣の鬱滞うったいを除くに基くものなり。”としています。

外界との境い目のところの気が不足しているものを補って発散させるということです。
私は、皮膚と血脈の境い目のところと教わりました。
ここの気が不足していると外界との関係を健全に保つことができません。
その力は、桔梗の辛微温がやわらかい方が良いと伝えています。

桔梗の根は、邪気を祓い、1年の無病息災を祈って年始にいただくお屠蘇とそにも配合されています。

魔除けや結界というのは、弱い存在を守る手法ではなく、魂からの緻密で高純度な光が星のように放たれている在り方のことではないだろうかと思われます。

役割を終えた花弁は破れた風船のようですが、このようにして観ると、それすら愛おしいと思います。


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