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西洋弟切(セイヨウオトギリ)

太陽が最も高い位置を折り返す頃から、西洋弟切せいようおとぎりの花が咲き始めました。

朝咲いた花は夕方にはしぼみ、そしてまた新しい太陽を迎える毎に次々と咲いていきます。

よく目を凝らすと、葉には透明な明点めいてんが散りばめられていて光が透き通ります。また、花や葉などに黒い暗点あんてんがあり、指でこすると色素が付着します。

これらは脂溶性の薬効成分を多く含んでいて、アルコールや油に浸けると、ヒペリシンやプソイドヒペリシンなどの暗赤色色素を反映した赤い浸出液を取り出すことができます。

西洋弟切は日の長さに反応して開花を行うため、緯度が高く夏に日の長い北海道では、花の期間をゆっくり楽しむことができます。

光を放っているかのような明るい花は、特にヨーロッパでの太陽崇拝において重要な役割を担ってきました。別名セントジョーンズワートと呼ばれ、光の感受性に作用し、心に明るさをもたらすなどの薬効を持つ一方で、光線過敏症という皮膚障害の原因になることがあります。
また、一部の薬物の効果を併用によって弱めてしまうため、注意喚起がなされているものでもあります。

赤黒い色素を含む暗点は今も昔も血のイメージを彷彿ほうふつさせますが、同属で日本在来の弟切草おとぎりそうも暗点が目立つことから、素晴らしい効能が悲劇へと転じてしまった物語が伝えられています。

明るい光だけではなくそれが映し出す影も、相容れないように見えるものたちをも大きく包み込むような愛が、この植物を通して表されているように思われてなりません。

秋の風が吹きはじめるこの頃。
毎日のように咲かせていた花も終わりに近づき、ひとつひとつの営みの結晶がたわわに実っています。

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