さくらさくら

 白いハートが動いている。居間の天井近くから床のあたりまであるガラス戸の向こうで、せわしなく移動している。鹿のお尻だ。蝦夷鹿は、奈良の鹿などと比べると、巨大である。
 冬毛から夏毛へ、私が好きな鹿の子柄が現れる。そして、牡鹿の角が抜け落ちる季節。
 今や桜が満開で、低い山々はピンク色の霞がかかったよう。眠りからさめた木々は、寝ぼけまなこの萌黄色。春が爆発するよ。さあ、位置について。

 廃校になった中学校の校舎裏に、静かに花びらを散らすエゾヤマザクラの木がある。誰も見に来ない。休日の今日、一人占めしてきた。缶ビールの上にピンクの花びらが、はらり。

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