こんなタイミングでアイドルを見つけてしまった話 ⑨オタク1年生に戻った日

この記事は「オタクアドベントカレンダー」の12/9の記事になります。

シリーズの前回↓


流れは、突然やってくる

3月20日。
この日は元から予定していた通り、知り合いが出演するアニクラ(DJイベント)を3軒はしごすることになった。
会場は全て秋葉原。そしてそのうちの一つのイベントは、7/10のデカマクラPart.Mの開催地、秋葉原MOGRA。

秋葉原MOGRA。
アニソンDJなら誰もが立ちたいと思うオタククラブカルチャーのメッカ。ここを7/10の最終イベントの開催地に選んだのは、並々ならぬ思いがあってのことだった。
7/10の下見を兼ねてこの日はMOGRAに入った。のちにイベントオーガナイザーとして演じるための運営視点でのチェック、音響確認、フロアの空気、ドリンクカウンターの動線、内勤スタッフとの顔合わせ、自分のイベントにも来てくれそうな人と親交を深める。タスクはいくらでもあった。
少々居座ったら出るつもりが、やはり最高のクラブカルチャーの場所。この日も素晴らしいパーティーが開催されており、気が付けば3時間ほど、呑めや歌えやの大騒ぎ。惜しみながらも私は一旦車を停めていたUDXに戻った。そして…
その後の別のオールナイトイベントにも顔を出すつもりが、ふと気を失って目が覚めたら朝5時。全てが終わっていた。

イベント締めの前に顔だけは出せたが、そこの界隈には申し訳ないことをしてしまった。お酒もまだ多少残っているしUDXから運転して出るまでにあと半日くらいは時間を潰したい。どうしようか…

気が付けば私は、楠あんずのTwitterを探しに行っていた
日付変わって3月21日。
この日の対バンは、近くの有楽町オルタナティブシアターだった。
UDXの駐車場は打ち止めで24時間まで同料金のため、この現場に行って戻ってきても駐車料金は変わらない。これだ。ここに行こう。
2日前、初めてのライブを見て次は3/30の戦乱ツーマンだと思っていた私はたったの40時間で前言撤回し、2つ目の現場をセットしてしまった。

そして、事件は起きる

ライブは改めてオタク歴の長い私にとってみると不思議なものだった。
一般的に地下アイドルの対バンは1つのグループで15~25分ほど与えられるのが一般的だ。
ただゼロプロ初代3Aは違う。3A全体で20分の持ち時間しかない。どうするか。1チーム1曲で入れ替え。推しのステージは1曲5分しかない。こんなのに対バン入場料3000円とか払わないといけないのである、単推しの人間にとっては拷問だ。この日のライブの感想はまるでない。曲もほとんど知らないし、演者も上野恩賜公園とまた違ったメンバーが出てきているので誰が誰やら。唯一ほりまるさんのおかげで月野みずきが分かる程度だ。

ま、まあ、特典会がメインみたいなもんだし…
しかし特典会も高い…1枚サインあり2000円って地下アイドルのレギュのレートとしてはかなり高い方。ずいぶん殿様商売な現場だな。でもこういうのの方が意外と生き残っていったりするんだよな

この日有楽町オルタナティブシアターの現場を選んだのはもう一つ理由があった。動員重要現場だったので写メ券が付いたのだ。当時のゼロプロとしてはこれは破格の特典だった。

さて、並んでみるか…

マスクありパーテーションあり特典会の時代、もはや懐かしい

えっ…?

えっ…??

えっ…???

かわいい…………………


次に自分の記憶が戻ったのは、オルタナティブシアターの中央の柱にもたれかかった時だ。
結論として、この接近の記憶はまるでない。
緊張して、頭の中が真っ白になってしまった。

「やらかした~~~~~~!!!!!!!!」
おきゃろに泣きつく。
「ほんとに、何話したか覚えてないんです」
「面白いものが見れましたねこれ、おぴろがこれは珍しい」
「助けてくれ~~~~~歴史的凡接近、オタク1年生みたいなことしちゃいました…」

少し頭が回らなくて言葉に詰まるとか、重要なことを伝えたくて緊張とかはする。しかし全く話せない、聞かれたことに支離滅裂な回答しかできない、そんなことはかつてなかった。こんな美人を相手にしていてもである。

ほんまアゴ以外完璧やなこの人は…

20分ほど気持ちの整理をして、予定していなかったもう一枚を撮ることに。

「やっと戻って来たw」
「あのー、本当に記憶がなくなってて…さっき僕何喋ってた?何も思い出せない」
「すごかったよ、『私のライブちゃんと見た?どうだった?具体的な感想は?』って聞いたら「よかったよ…」だってw」
「えぇ…」
「『それだけ?』って思ったよねw」

顔面蒼白である。あんずは僕の返しに一ミリも満足していない。ひどいやらかしだ。

「『私のどんなところが好きなの?』って聞いたら『全部…』だってw」
「何にも答えられてないじゃん…」

このコメントで分かる通り、あんずの言葉を聞いても、その言葉を自分が発したかどうかの記憶すらないため、さながら泥酔してやらかした人が前夜の自分の行動を聞いてげんなりするような、例えるならそんな接近だった。自分の発言にショックを受け続けるだけの1分間を過ごし、再び戻ってきた私は
「今日をもう一度やり直したい…」
ぐったりしていた。


しかしどうして、こんなことになってしまったのだろうか。
Part.6で書いた通り、この当時の自分のあんずに対する感情は「気軽に推せる存在」のはずだったのだ。もう、誰かを狂ったように応援するのはやめようとしているからこそ、話しやすくてたまに来れる存在のあんずがぴったりはまっただけなのに…これじゃまるで、推しにドギマギしているオタク1年生だし、何より自分の嫌いなガチ恋オタク、しかもどちらかというと拗らせオタクみたいな動き方してるじゃないか…

一体この子はなんなんだろうか。
でも知れば知るほど、彼女のことを好きになっていってる自分も俯瞰的に眺めていた。僕はこれから、どうしていけばいいんだろうか…


7年経っても、変わらない絆

特典会も終わり、おきゃろを次の現場の横浜まで送ることになった。
「おぴろも2回ししないの?」
演者に対して真剣ならば2回し3回し当たり前のぴろーだが、この当時のゼロプロに対するウエイトは高くない。そんな時間があるなら体を休めるか、次に出るDJのセトリを考える時間にしたい。
横浜まで送り、川崎からアクアラインで海を渡って圏央道で帰ればそこまでロスにはならない。それならいいということで車を走らせた。

「誰か推すならね、あんずだと思ってましたよ」
おきゃろはそう話し始めた。
なんだ、この人には全部お見通しか。
「結局元4Aで一人ずつ演者の個性を見ていくと、おぴろはあんずしかないですよ」
「やんなりますね、ほんとw その通りですよ」
それから首都高を南に進みながら、懐かしい思い出話や、ゼロプロ現場の現状を話した。
ぴろーカーには数多くのオタクが乗ってきたが、おきゃろはその中でも乗車回数最上位に位置する人だ。

ほんの少しの空白を生んだ別れと、再会

「田中さんと、現場を頼みます」
2019年11月、踊ってみた現場帰りの車の中で、私はおきゃろにそう言った。Part1で書いたようにオタ活から離れることを決め、おきゃろともしばらく会えなくなる…そんなことを思いながら別れを告げる一言だった。
世の中はコロナの時代に入り、私は宣言通りオタクから退いた。なぜかその踊ってみた現場でコロナ明け後もたまに会うことになるのだが…

昔は田中美海の現場に行けば、必ずおきゃろがいた。大きいから見つけやすい。みんなご利益があると勘違いしているのかおなかを触るw そんな当たり前だった日常は少しずつ変わっていき、いつしか大切な友人でありながら滅多に会えない人になっていた。

かれこれおきゃろを車で送るのは2年ぶり、それくらい歳月が空いていたがお互い何一つ不思議がることもなく、昨日も車で送っていたかのように時間は流れた。
自分にとってのオタクの指針であり全ての基本を教えてもらったのはおきゃろだった。現場に対する価値観もよく合うし、何より演者を見抜く力が凄い。やがて数多くの代表作を持ち、フォロワー14万の人気声優になる人をデビューした当初から推していた人だ

お互いに慧眼を持っていた二人がはぁとさんのお誘いで別々の推しを見つけ、同じ現場にたどり着いたのだ。ゼロプロのシステムに対して疑問に思ったことを投げかけた質問は、全て想像していた通りの回答が返ってきた。
システムに問題があることは分かっていても、それぞれが信じる推しを見つけた結果が今なんだろう。
私がどれだけあんずのことを見ていくかは分からないけど、こうして一種の「オタク同窓会」が始まっていくんだろうな。さらだもいるし。はぁとさんも事務所のくくりでは同じだ。

「おきゃろ、じゃあまた」
「どうせすぐ会えますよ」
赤レンガ近くでおきゃろを下ろし、私は日が沈みゆく東京湾を尻目に急いで帰った。現場なんて全然行ってないしそもそも不規則な生活明けだ。週明けから大変だな…

あ、あんずのことどうやって騙そうかな…どうやったら面白くなるかな…

週明けの私は、もう取ることがないと思っていたオタク休暇を上司に申請することから始まった。


次回↓


おまけ(以降は有料版です、読めなくても話の筋には影響ありません)

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