こんなタイミングでアイドルを見つけてしまった話 ⑩あんずぅ沼、入水

この記事は「オタクアドベントカレンダー」の12/16の記事になります。

シリーズの前回↓


流れは完全に楠


3月22日。
歴史的凡接近を終えた私は翌日、職域接種の会場にいた。
3回目接種は一番体に影響が出ると聞いていた。実際このあと高熱が出て1日ほど寝込むのだが、接種日はまだ落ち着いていた。

するとその夜…

姉川とろろの、卒業が発表された。

あっけない、終わり方だった。
ゼロプロ、簡単にやめすぎじゃない?と思い始めたが、至ってこれは普通の出来事。このグループでは当時3ヶ月ごと、実際にはもっと短いスパンでメンバーの卒業や活動休止が発表されていく、そんな時代だった。今も下位リーグは大して変わりはないが。
簡単に辞めれることを売りにしている分、こういった負の側面もある。

あー、そうだ、地下アイドルってそもそもこういうものだったわ
私は大切なことを思い出した。
とろろが悪いのではなくて、そもそも業界自体がこういう世界。今までの声優や半地上のアイドルと違って、先は短い。とろろのステージを見ることができるのかもわからない。次があるのかもしれない、それは本人以外誰にも分からないのだ。

懐かしの「原田ゆきかの時間」

そして翌朝。
案の定ワクチンの副作用で頭痛と高熱にうなされていた私は布団に転がっていた。
携帯しか見るものもなかった私は、衝撃的なスペースを目にした。
朝7時から「原田ゆきかの時間」復活。スペースに元4Aメンバーが集合してきたのだ。

頭痛も忘れて実況をしていた私。しばらくしてあんずもスピーカーとして入ってきた。いきなり初手「来ちまったよどうしようw」と言い始めた時はどうなるかと思ったが。

不思議な感覚である。
今は明確にあんず推しを名乗っている自分だが(あれ?)、少し前までは同じグループというかゼロプロへの一つの入口であり推しとしてキャサがいた。推しと推しが会話している。それ自体が私にとっては、不思議な感覚なのだ
オタクをしてきて7年。Tier1の推しが同じイベントや同じステージで共演したケースは一度もなかった。Tier1とTier2でも数えるほどしかない。そもそも推しと呼べる人が少ないのはあるが。

そしてもう一つ、この配信では新たな事実が判明した。
キャサリンが新しいグループの研修生に合格して、夏ごろデビューする予定が決まったというものだ。

とても嬉しい反面、逆に言えばもう夏までなにもできることはなくなってしまった。
全ての流れが、直近楠あんずに向いている。
私はTier2とはいえ推しが増えてきたことに少し不安を感じていたが、その心配もなくなった。今はデカマクラの成功と、たまに現場行ってあんずと遊べばいいんだ…

今でも思い出せない、衝動

3月25日の宴Vol.2(O-East無銭ライブ)は主催のデカマクラPart.6(配信アニクラ)のため、当然のスルー。来てほしいという圧は各方面から感じたが私にとってはとにかく7/10のデカマクラPart.Mを成功させることが目下の課題。
こうだ、これくらいのスタンスでいいんだ、行きたいときにあんずに会いに行く。だってそうだもん、あんず自身が「来たいときに来てくれればいい」と言ってるんだから。

3月27日、日曜日。
この日は珍しくオフで、デカマクラの先の企画を練ったり、DJのセトリを考えたり自由に時間を使っていた。

と、ここで話をぶった切ると、結論から言うと私はこの後五反田G5の現場に思い立って急行している。
なぜ急にこの現場に行ったのか?それは今の自分が思い出そうとしても全く思い出せない
実はこの頃にはこのシリーズのnoteを書き始める構想があったため、以降大事な場面では色々なところに何を思っていたのかの記録を残すようにしている。ただこの日だけはどこを探してもその答えになる理由を見つけられなかった。

常識的に考えて、3/30の現場に急に現れてあんずを騙そうとしているのに、普通に似たようなことを3日前にやるのは間違いだ。騙す効果が薄れる。なぜそれをしようとしたのか、私は未だに本当にわからないのです…

現場に着くと、おきゃろやさらだかずにぃがいた。

7年経って始まる不思議な縁

はぁとさま、おきゃろ、さらだ、かずにぃ、ませう(ましゅ~)。これらに共通するのは元ワグナーであること。

Wake Up, Girls!、私の最初の主現場だ。
数々の喜びと苦しみと栄光を見た。最後に美しく物語が終わって行った最高の現場。そこで育った人たちはいわば「戦友」と言っていい。オタクの酸いも甘いもを共にしてきた間柄だ。未だに各所で交流がある。

そして上記の人たちの中で、ませう以外は全員田中美海のオタクであった。であるならば、みんな知り合いと思うかもしれないが、実はそうでもない。さらだ、かずにぃは現場でみんなで群れてたらたまに話すし存在はお互い知っている。でも深くを知ることはない、それくらいの関係だった。

それがこれからは、推しは違えど、同じ現場で生きていく関係になる。
特にさらだとかずにぃが応援している上田望夏は、Z3選抜に選ばれているらしい。凄いことだ。おそらく彼らのたぐいまれなるオタクスキルで選抜に上げたことだろう(実際そう)。

「まさかぴろーがゼロプロに来るとは思わなかったよ」
さらだは話し始めた。
「俺あんずのこと結構気に入ってるから、ぴろーがあんず推しになってくれて嬉しい」

そうだよな。
やっぱりうちの界隈にはあんずさんの良さは伝わってるんだ。


喫煙所での錯乱

ライブは普通だった。相変わらず、出演時間が短くてちょっと不満。でもいつも通り、短い時間でも自分を見つけて爆レスをくれる。あ、オレンジ振ってる人他にもいるな…

あんずは当時自己紹介で「あんずぅ沼!君も今日からズブズブだぁ~」と言うのが決まりになっていた。それに初めて「うわああああああああああああああああああああ」と絶叫する私の合いの手が入った。本来ここは滑りポイントなのだが、新しい境地が開拓されたことで私を知る人間はみな失笑していた。

特典会では、あんずさんに何十枚とループする男の人がいた。いかにもオタクって感じだが、やっぱりこういう人に推されてるのか。さすがあんずさんだ。

「Jさんだね」
おきゃろの解説が入る。
「いつもいるわけじゃないけど、あの人はああやって来た時はすごい枚数撮って帰るよ。あの人のおかげでここまでストレートで昇格してきてる」

そうなのか。
まあよそはよそ、うちはうちなので。特典会に行こう。
3/21の事故接近以来の特典会だったが、さすがに前回の反省と修正が効いて、話したいことはほとんど話せた。
ふらっと来てくれるような枠に見えていたであろう当時のあんずさんにとって、ライブだけでも9日間で3回も来ていて、さすがに嬉しかっただろう。
当時のゼロプロは、お客さんを一人捕まえられるかできないかが生命線。まだそんな時期だった。どんな客でもその一人が絶大なパワーを発揮すればアイドルは昇格できるし、地位を保てる。まして当時は地底を地で行くようなパフォーマンスしかできなかったアイドルの集まりに、サインあり2000円のレギュレーションはどう見ても高すぎる。まだ当時のゼロプロにそのお金を投げられる人は、物好きの集まりか、確固たる推しがいて全ての腹を括ったうえで先行投資、青田買いしていた真のオタクのどちらかだった

そうして楽しくあんずと話していた私だったのだが、特典会の最後で突然驚きの言葉を言われる。

「私、ぴろーが思ってるよりぴろーのこと結構好きだからね」

え…?
え……?
え………?
好き………?
こんなかわいい子に、好きって言われた…?

訳が分からなくなり、私は逃げるようにして会場を後にした。
脳内で起きたことが処理できなくなり、たぶんニヤついて人に見せられない顔になっている気がして、とにかく人のいないところに消えようとした。

五反田G5は地下にあり、地上に上がると歩いて30秒のところに喫煙所がある。そこに、さらだがいた。
まだ直前に起きた出来事から抜け出せていない私は、煙草を一人吸いながら物思いにふけっているさらだに相手のことも考えず図々しくも食い気味に話しかけに行った。

「なあ聞いてくれよ、あんずさん僕のこと自分が思ってるより好きなんだって!!!嬉しいよ!!!」

「……………そうか、よかったな。」

喫煙所の街灯が照らしだしたさらだは、実年齢に似つかわしくないくらいに大人の空気を纏っていた。
全てを察したかのような、それでいて少し嬉しそうにも見えた。



いいなと思ったら応援しよう!