不妊治療を通じて知った多様な「痛み」と乗り越えかた

驚くかもしれませんが、不妊治療を始めて、良かったと思う事が多々あります。

世間に対する不妊治療のイメージはどんなものでしょうか。

おそらく大抵の人は、あまり知らないことが多いのではと思います。

治療する前に、まず痛みが伴う検査が必要であること。

いつ受診日になるのかが見えず、先の約束が立てられなかったり、治療と仕事のバランスが取り辛い事。配慮のある会社・上司ばかりではない事。

そしてそれによってキャリアを手放している人もいる事。

体外受精に進んでも必ずしも授かることができるとは限らないこと。

採卵までに時間がかかったり、時には自分で毎日注射を打たなければならないこと。

採卵しても受精に持っていける卵があるかは分からないこと。

受精する卵がいくつあっても着床障害を起こすこと。

受精卵を受け付けない細胞があること。

そして、治療費が高額で未だに保険適用ではないこと。

おそらく経験したことがなければ、分からないことばかり。

この「無知」によって、おそらく多くの不妊治療患者は悲しみ、時には友人が発した何気ない(傷付けるつもりのない)一言などにも、傷付いた経験があることでしょう。そしてそんな一言に傷付いて、友人を嫌いになりそうな自分をまた嫌いになる。

不妊治療で一番辛いことは何か?と聞かれた時に、真っ先に思い浮かぶのは

「先の見えないトンネルで 孤独にもがき続けること」だと私は思います。

ここに「孤独」と書いたのは、同じような境遇にある人たちがいても、結局は自分の体のことで、自分でその気持ちを乗り越えなきゃいけない瞬間があるからだ、と考えます。

それでも、理解してくれる家族がいるから、息も絶え絶えに、なんとかギリギリのところで保っていられます。

寧ろ、理解してくれる家族が一人でも居なかったりすると、治療を諦めてしまう・離婚をしてしまう、というご夫婦もいます。

治療を始めて良かったなと思うのは、こうした家族の愛に触れることができたこと。

夫は同じように涙を流してくれる人でした。

今までとは違った形での、包み込まれるような彼の優しさに、たくさん気付くことができました。

母も理解者でした。母は治療のことはよく分かっていなくても、いつも真剣に私の話を聞いてくれ、常に前向きな声掛けをしてくれました。

また、義母も同様でした。治療の事を知って、費用を出してくれたり、深く聞かずに優しく待ってくれています。

周りの人は私を責めることなく、寧ろ心を癒してくれたのです。

また、友人も同様でした。

今までの私であれば、友人からの妊娠報告に嫌気が差していました。

1か月前に妊娠報告を受けた時にも、しっかり傷付いている自分が居ました。

でも今まで「負の感情」しか生まれなかった気持ちは変化しています。

どのようにしてこの気持ちを乗り越えたか。

まずは自分を客観視してみること。

どうして傷付いているのか?を考えてみる
 友人とライフステージが変わることによって、距離感が変わってしまうことへの恐れ。年齢を重ねることへの焦り。

次に、理由を考えてみること。

なぜ友人は報告をするのだろうか?を考えてみる
 マジで深い意味はない。私を傷付ける目的なんて1ミリもない。だから何も恐れなくていいし、勝手に傷付くのは精神衛生上やめた方がいい。

傷付くこと=悪い事ではない と認めたうえで

悪者を作らないようにする。

そうすると、結果的に相手も自分も、悪くならない。

で、私の頭の中のまとめ↓

ライフステージが変わっても変わらず誘ってくれる友人に感謝する
→ 
違うステージにいる友人がいるということはありがたいこと。状況を察して、気を遣われて距離を置かれた方がよっぽど悲しいこと。悲観的にならず自分も次に続くんだ、という気持ちで。寧ろ色々聞いてみると、本当為になる。実際に妊娠できた人に聞いてみようという前向きな気持ちに変化したことで、実生活で取り入れていることもある。

私がこういう風に気持ちを変化させることができたのは、ストレスが身体を疲れさせる一番の原因だと気付いたから。そして、何も生まない嫌な思考のままでいるよりは、自分がされて嬉しかったことを思い出して、どうしようもならない自分の体とは裏腹に、気持ちの打開策だけでも得ようと思ったからです。

体を置いてけぼりにして、心だけ前に進んでやる。と思いました。


『何か事情があるのかも…』 で大体のモヤモヤした気持ちは解決する

それでも、まだまだ100%気持ちをコントロールできるようになったとは言えません。

真新しい出来事で言えば、数日前にクリニックに行った際、不妊治療専門クリニックでは控えられているマタニティマークを付けていらっしゃる方が居て、「自分も辛い思いをした筈なのに…」と憤りを感じたのを覚えています。

しかし帰ってきて夫にそのことを話すと、想像力を膨らませて、考えられる事情をあれこれと話し始めたのです。

本当は気にも留めなくていいことかもしれない。

でも、気になってしまった際には、思ってもみなかった方向へ想像力を働かせ、自分の気持ちを解放する練習をしてみよう、と思ったのでした。


そしてもう一つ、治療を始めて良かったと思うことは

「目に見えないものを見る」「相手の見えない背景に寄り添うことが大事」だということに気付かされた事。

様々な事で悩んでいる人がいる。しかも、表出しているものがすべてではない。

私ももしかしたら、他人を知らずのうちに傷付けていたことがあったかもしれない。

だからこそ今は、一呼吸置いて、考えてみる言葉を選んでみる

そういう「ワンクッション」ができるようになったことは、この不妊治療があったからこそなのです。

自身が痛みを知ることで、人に優しく出来るようになりました。

実はこれ、主語は「私は」ではないと思います。

不妊治療を通じて、知り合った方も沢山いらっしゃいます。勿論ネット上でも。

本当に皆さん、優しい言葉の遣い方をたくさん知っていて、見ず知らずの私にもその言葉を紡いで下さいます。

こういう経験を積まれた方は、本当に人に優しく出来るんだな、と身をもって実感するのです。




もちろん、無理することはないと思います。

人間だから、泣きたいときは思いっきり泣いたり

思いっきり悩んだっていいと思うのです。

嫌いな人が出てもいいと思います。その感情を持つこと自体、嫌だと嘆いてもいいと思います。

だけど、その気持ちは、しょうがないことだから。と一旦認めてあげて。

嫌なことばかりじゃないと、視点を変えてみることって大事だと思います。せっかく時間を費やしていることだから。

だから私は、前向きな不妊治療をしていきたいな、と思います。


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