最後まで絶対に諦めない気持ち
配信者に対する視聴者の課金額に応じて勝敗が決まるバトルが各種配信系アプリで行われている。
初めてそういうのを目にしたのは昨年の夏で、ミクチャという映像配信と松竹芸能がコラボしたものだった。
26組の若手芸人さんが12日間配信を続け、送られたギフトで獲得したポイントの総額によって順位が決まり、優勝者にはラジオの特別番組のMCが任される。
ユーザーにはギフトを購入する為のコインが無料で毎日一定額(MAX400円くらい)配布されるが、結局最後はどれだけ課金をして高額なギフトを送れるかによって勝ち負けが決まる。
最終日のラスト1時間だけ2位の人の配信を観に行ったら既にそのコンビは2人とも号泣していて、ファンの人たちは次々に高額なギフトを投げていた。
右上に表示されている順位は1位から3位の間を行ったり来たりしていて、視聴者も他の配信者の状況をチャットで報告しあったりしていた。
そのコンビと仲の良い芸人さん達もTwitterで応援を呼びかけ続けていた。(私はそれでミクチャのことを知った。)
実の親御さんも課金してギフトを投げていたらしい。
私も少しだけ課金して投げた。
そのコンビは2位に終わったが獲得したポイントは100万を優に超えていた。
それを観て正直
めちゃくちゃ嫌だなと思った。
勝ち負けがどうのと言うより、ラジオ番組のMCと言う賞品をぶら下げて配信者(芸人さん)に配信をさせ、観てる人の応援したいと言う気持ちを利用して大金を出させる。そのバトルに参加するのもそれを観て応援して課金するのもそれぞれの勝手で誰に強制されているわけでもないが、配信アプリの金稼ぎに利用されている感じがしてとても嫌だった。
だから次にこう言うのを見かけても絶対に試聴しないと思っていたのだが…
今月、おもいっきり観て応援して課金してしまった。配信アプリの手のひらで踊らせられたと言う自覚はある。あるし、お金の使い方としてこれはどうなんだと言う気持ちもある。(せめて配信者にごそっと還元されれば良いが恐らく大して期待はできない。)
5月13日からの2週間開催された「チバテレ冠番組争奪戦」
サンミュージックの若手芸人11組が参加した。
一昨年くらいからVS三拍子と言うニコニコ生放送の番組で見たことのあるコンビが何組も出ていたので興味を持った。
また、毎週見ている三拍子のYouTube生配信番組に出場者のチェリーボンボンとニモテンがゲスト出演し、YouTube配信の後で三拍子と一緒にミクチャの配信も行った。後輩のために全力で盛り上げる三拍子さんがめちゃくちゃ良い先輩だった。久保さんの「自分の為には頑張れない。人の為には頑張れる。」は後世に残したい名言。
この2組は漫才もおもしろいがミクチャでの配信もおもしろかったのでちょくちょく見るようになる。また、チェリーボンボンがゲストに出演した翌日くらいから体調を崩して家で寝ていたので起きている間はずっと配信を観ていた。
特に思い出に残っているのが餃子パーティー。
チェリーボンボンのロリィタ族さんの家に相方のさいとうさんとレッドガオの赤壁さんを招いて大量の餃子を作って食べると言うもの。
見ていてすごく楽しかったし和んだ。
グレープカンパニー所属のレッドガオは以前ミクチャで似たようなバトルに参加して優勝しており、経験者の話を聞いて今後に活かそうとする2人が印象的。
この後も様々な芸人さんをゲストに招いていたがどれも楽しかった。
新宿のめる・はけるさんは漫才中にキスをすると言うネタはかなり突飛だが、ミクチャバトルでの経験談を話す様子はとても真面目で紳士的で好印象。(ただ、配信中もやたらとキスをしていた。)
最終日のムラムラタムラさんも運営に怒られるギリギリのラインで見ている人を楽しませてくれて最高だった。急に言われたにも関わらず、快く着替えてネタを披露してくれたところも良い。
最後に歌ったアラジンの「フレンド・ライク・ミー」は圧巻。この為に有給を取って帰宅して良かったと思える配信だった。
ゲストがいない日も「○○pt行ったら全身タイツで漫才!」「○○ptで10分間お悩み相談します」などの企画を行なっていた。
全身タイツの方は結局目標達成にはならなかったのだが、カラオケボックスで曲に合わせて「ギフトよこせ!」「課金しろ!」と雄叫びを上げる姿が逆に清々しくておもしろかった。なおこの日のために購入した全身タイツは最終日に大活躍。
お悩み相談も恋愛から育児までロリィタ族さんが真摯に答えていたので見ていて面白かった。最終日には思い切って私も一つだけ相談に乗ってもらったが話を聞いてもらうだけでもスッキリし、更にちゃんと意見をもらえたことで安心感があった。見ている人から「私も経験がある。」というコメントがあったのも良かった。(ちなみに相談内容は恋愛でも育児でも無い。)
「○○pt行くまで配信を続けます」という企画ではネットカフェで防音室を借りて深夜まで配信を続けていた。達成不可能な数字に見えたが朝起きたら達成していて本当に良かった。
三拍子のYouTube生配信への出演は、いの一番に自ら「出させてほしい。」と交渉したらしい。
冒頭で書いた通りVS三拍子で見たことのあるコンビが何組もいたので特定の誰かを応援するつもりは無かったのに、いつの間にか「チェリーボンボンに勝ってほしい」と思うようになってしまった。
もちろん他のコンビもすごく頑張っていて、特にニモテンは出場者の中で最年少にも関わらず誰よりも多く配信を行なっていた。謎かけ100個に挑戦したり、視聴者も参加できる自作ゲームを披露したり、ピタゴラスイッチ的なものを作ったりと長時間の配信でも見ている人達を飽きさせないように工夫を凝らしていた。
バトル初日あたりに宣言した「絶対に優勝したい。誰よりも多く配信する。」の言葉通り、狂ったように配信をし続けていた。
そう言う頑張りと熱意も見ていたので正直ニモテンにも勝ってほしかった。
でもチェリーボンボンにも勝ってほしかった。
誰かが事務所対抗のバトルだったら良かったのにと言っていたが本当にそう思う。(事務所をまたいで好きな芸人さんがいる人はまた同じ思いをするかもしれないが。)
最終日の結果が出た後にニモテンのチャット欄で「三拍子のファンがチェリーボンボンを応援していて申し訳ない。」というコメントを見かけたが、誰のファンだとしても誰を応援するかは自由だと思う。体は一つだし財力も限られるのでラスト数時間での金銭やコメントでの応援は一組にしか力を入れられないが、気持ちの面では両方応援していた。
最終的にチェリーボンボンは4位で1位との差は200万pt。
ラスト数十分で差が100万ptになった時に、さすがに諦めるかと思った。
それでもロリィタ族さんは「最後まで絶対に諦めない。」と言い続けていた。「ラスト10分で逆転した人もいるから諦めない。」と。
格好良い。
2人とも芸人の仕事とバイトや育児をしながら2週間配信をし続けていた。
毎日動くランキングに気も休まらなかったと思う。
「最後まで諦めない。」は普段の配信でも何度か聞いた気がするが、まさか本当に最後の最後まで諦めないとは思わなかった。
私はすぐに諦めしまうので尊敬する。
そう言う2人の毎日頑張り続けた姿と最後まで諦めない姿を見て、楽しかった配信を思い出して高額ギフトを投げた。
昨年の夏に見て自分は絶対にやらないと思っていた行動をしてしまった。
企業に踊らされていることも、形の残らないものに数万円を注ぎ込む馬鹿馬鹿しさも、お金のもっと有効な使い道があることも分かってはいるが、2人が頑張った毎日がこれで少しでも報われるなら良いかと思った。
チェリーボンボンは今年THE Wに出場して優勝したら叙々苑を奢ってくれるらしい。
投げた金額の倍くらいは高い肉を食べたいので絶対に優勝してほしい。
お疲れ様でした。
余談
「別の女性芸人さんが配信中に自分の胸を揉んだら運営から注意を受けた。」という話をしたら「女芸人冥利に尽きるわ。」とサラッと言った一言が格好良かった。