音楽の扉が閉まりかけている
今年で26歳になるが、音楽の扉が閉まりかけている。
昔ネットニュースで35歳になると新しい音楽を受け付けなくなると読んだけど、それよりもずいぶん早く終わりはやってきそうだ。
音楽の扉が閉まるといったが、扉にも開き戸とか引戸とかの種類があるように、新しい音楽の扉が開かない理由も一つではないと思う。
たとえば歌詞の世界に馴染めなくなる。そもそもアーティストが好きで、その人が歌う曲以外に興味がない。テンポが早すぎて理解できない。新しい楽器の音が耳障り。だとか。
今、書き出した理由は新しい世界に馴染めないことが原因になるものだ。まあ、10代の時に好きな音楽を見つけて、そこから25年も経てば色んなことが変わるだろうから、価値観が合わなくて新しい音楽を聴かなくなるのは自然なことだろう。
ただ、俺の音楽の扉は別の理由で閉まりかけている。
そもそも俺は新しい音楽を聴くし、好きにもなる。コードを調べてギターで弾いたり、今話題のアーティストを調べて、良いと素直に感じることもできる。
だけど、新しい音楽に俺は指一本触れられない。
本棚の一角に、本の代わりにCDを並べたところがある。そこには今まで聞いてきた最高の音楽があって、今でも現役で聴いている。
ここ一年で出てきた新しい音楽と同じくらいの比率で聴いてると思う。
その日は、神聖かまってちゃんの日々カルチャアという曲を聴いていた。
日々カルチャアは、幼さを入院させてというアルバムに入っている曲で、そのアルバムの中でいちばん気に入っている。
アルバムを買ったその日に、この曲の世界を好きになって、いてもたってもいられずにその世界を絵に描いたのを鮮明に覚えている。
その頃は、彼女との同棲が始まってから4ヶ月ほどで、俺の生活が大きく変わり始めていた。
それまでは実家暮らしで、音楽を作りたくて部屋にこもってアコギやらエレキやらをかき鳴らしていたけど、壁の薄い1DKのアパートに二人で住みこんでからは、お隣さんへの迷惑にならないように音楽作りを辞め、かわりに小説だったり漫画だったりを作り始めていた。
とにかく、日々カルチャアを聴くと、そんなことを思い出す。
ナンバーガールを聴けばバンドを組んでいた時に、とあるメンバーと上手くいかずに、俺の作った曲を練習出来なくてピロウズの曲のコピーばっかりしていたことを思い出すし、YUIのLIFEを聴くと、小学生の頃、友達の家のラジオから流れてきて、心を奪われたことを思い出すし、遡ればだんご三兄弟にだって何かの思い出がある。
初めて聴く音楽にも、ふしぎと様々なことを思い出す。
それは楽器の音色だったり、歌詞の世界だったり、PVの演出だったりに、知ってる面影を感じるからだ。
俺は音楽が好きで、現時点で新しい音楽性にもついていけると思う。だけど音楽の扉が閉まっていると感じる。
正確にはいえば、音楽に触れることができない。
ただそこにある思い出を見させられるだけで、曲が終わった時にはもうその音楽のことなんか忘れている。すでに音楽に触れることが出来ない。
そのことに気がついてから、俺の音楽の扉は閉まりかけている。
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