脚本「筋肉ママ」

昔公募に出したものです。

登場人物
一二三(16)主人公 
一鈍吉(30)父
一筋肉(33)居候
桂木莉子(16)クラスのアイドル
小山田海騎(16)男友達
二階堂銀次(44)男 理科の先生
涼宮寮(33)男 国語の先生

◯トレーニングジム(朝)
   行きつけのジムで、バーベルを持ち上げる一筋肉(33)トレーニングが終わると、仲の良い受付のおじさんと挨拶を交わす。
おじさん「今日は早いね、なんか用事あんのかい」
   そう言いながら、小指を立て、にやけるおじさん。筋肉、微笑みながら
筋肉「いいえ、違いますよ」
   優しく言うと、ジムの透明な扉から外を眺める。

◯同・二階理科室(朝)
   二階堂銀次(44)、教壇に立っている。大きな机に四人で座っている。一二三(16)座って黒板を写す。先生の目の前の席。隣の席に桂木莉子(16)別の机に小山田海騎(16)
二階堂「よし、写し終わったか。じゃあ準備を始めてくれ」
   クラス全体、器具の準備のために席を立つ。
   二三、率先して指揮をとる。
二三「君たち、授業はちゃんと聞いていたかね? 大丈夫、私はよく聞いていたよ。任せたまえ。君が道具集め担当だ。集めてきたまえ」
   二三、無視され、静かにフラスコを持ってきて、そのまま席に着く。
   莉子、二三の筆箱を落とす。
莉子「あっ、ごめんね一君」
   莉子、筆箱を拾う
二三「ありがとう」
莉子「あと、もう少し向こうに行ってくれる? ちょっと狭いからさ。ごめんね」
   二三、椅子を少し動かす。
   二三を除いた三人、実験を進める。
   二三、記録係になる。

◯一二三の家・リビング(夜)
   二三と一鈍吉(33)、食事をしている。コンビニ弁当を食べている。机には手紙が置かれている。
鈍吉「俺は一体、何がダメなんだろう。なぁ二三、どう思う?」
二三「ほぼ全てがダメなんだと思うよ」
鈍吉「辛辣な言葉だな~。ままに似たんだろうな~」
二三「……なぁ、父さん。その母さんはどこに行った?」
鈍吉「海外出張らしい。偶然、喧嘩をしたタイミングでだ。そういうことがあるもんなんだな」
二三「偶然なの?」
鈍吉「偶然だよ」
二三「母さん、偉い?」
鈍吉「ママはかなり偉いぞ。出張ぐらい自分で決められるくらい偉い」
二三「……偶然なの?」
鈍吉「偶然、らしいよ」
   二三、机の上の手紙を手に取る。
二三「これは何?」
鈍吉「ままからの手紙」
   二三、封が空いてないことを確認する。
二三「なんで中身みないの?」
鈍吉「怖くてさ」
   二三、ため息をつき、封を開けようとすると、インターホンが鳴る
   。二三と鈍吉、インターホンを見る。
鈍吉「誰だろうね、こんな時間に」

◯同・玄関(夜)
   二三と鈍吉、玄関に移動する。
   二三、手紙を持っている。
   筋肉、玄関に立っている。
筋肉「今日からよろしくお願いします。私、筋肉と申します。これから始まる新しい生活、楽しんでいきましょう!」
   二三と鈍吉、一瞬見つめ合う。二三、筋肉に話しかける
二三「あのー、申し訳ないんですけど、どなたでしょうか?」
鈍吉「……全然、見覚えがないんですけど」
   筋肉、かなり動揺する。
筋肉「えっ、ちょ、ちょっと待ってください。あれ、聞いてませんか?」
二三「聞いてませんかって、誰に? 父さん知ってる?」
鈍吉「記憶にないんだけど」
筋肉「誰って、一冬ですよ。僕の妹から聞いてませんか?」
鈍吉「そんな話聞いてないですよ!」
二三「第1、こんな手紙を残してどっか行っちゃったんだから」
   二三、途中で話をやめる。二三と鈍吉、手紙を見つめる。

◯同・リビング
   二三と鈍吉と筋肉、卓を囲ら座っている。机に開かれた手紙が置いてある。
鈍吉「つまり、この手紙の内容によると、筋肉さんはお金がないと」
筋肉「イェス」
鈍吉「ついでに家もなくなったと」
筋肉「イェス」
鈍吉「どうしようもなくてうちに住むと」
筋肉「イェス」
鈍吉「冬は僕にいつも何もしないで、これを機に反省しなさいと」
筋肉「イェス」
鈍吉「なんか困ったね、二三君」
二三「なんか困ったね、じゃないよ」
   3人、黙り込む。筋肉は笑顔
二三「取り敢えず今日はもう寝ましょう。ね、細かいことは明日にして。寝室は母の所を使ってください」
鈍吉「え、俺の隣?」
二三「そうだよ、他に場所ないじゃん! じゃあ床で寝てもらうの?」
鈍吉「い、いや」
   筋肉、立ち上がる
筋肉「じゃあ、細かいことは明日ってことで。あと~シャワー浴びさせてもらっていいですか? 筋トレ帰りなんで」
   鈍吉、浴室を指差す
筋肉「では、鈍吉さんと二三君だよね、おやすみなさい」
   筋肉、笑顔でシャワー室に行く。
鈍吉「二三君、僕はもう寝るよ。これが夢だと信じて」
   鈍吉、寝室に行く。浴室から筋肉の笑い声が聞こえてくる。二三、驚いて浴室の方を見る。

◯同・リビング(朝)
   二三、リビングに行くと筋肉が朝ご飯を作っている。
筋肉「おはよう、二三君」
二三「おはよう」
筋肉「あと、朝ごはんに時間かかるから先に着替えておいで。制服アイロンはかけておいたから、持っていってくれ」
   机の上に置いてあるワイシャツ。二三、それを持って部屋に行く。鈍吉、リビングに入ってくる。
筋肉「鈍吉さん、おはよう」
鈍吉「おはよう」
筋肉「朝ごはんまだなんで、先に顔洗ってきちゃってください」
鈍吉「は~い」
   鈍吉、寝ぼけながら洗面台へ向かう。

◯同・洗面台(朝)
   鈍吉、顔を洗って歯を磨きおわる。洗面台を出て行くタイミングで二三が入ってくる。
二三「おはよう、父さん」
鈍吉「おはよう、二三君。あっ、ご飯のいい香りがしてきたね。二三君、早く準備済ましちゃいなよ」
   二三、歯を磨いている

◯同・リビング(朝)
   二三、リビングに勢いよく入る。机には朝ご飯が並び、筋肉と鈍吉が食事をはじめている。
二三「(大きい声で)父さん!」
鈍吉「どうした二三君。そんな大きな声出して。早くご飯食べちゃいなさい。筋肉さんが作ってくれたんだよ」
筋肉「居候ですから、これぐらいするのは常識ですよ。二三君、是非食べてくれ!」
二三「(口ごもりながら)食べるけどさ、筋肉はいいとして、父さん、なんで今この状況になったか分かってるのかよ」
鈍吉「どうした、珍しくそんなぷりぷりして。母さんが出ていっちゃったからだろ。それで筋肉さんが来たと」
二三「そっそうだけど、この機会に反省しなさいって手紙に書いてあっただろ!」
鈍吉「二三君、そんなに焦らないで」
二三「ふざけんな」
   二三、そのまま家を出る。

◯学校・一階教室(朝)
   二三、机に顔を伏せている。
   小山田、飴を舐め、砕く。
二三「おい、もう授業始まるぞ」
小山田「別にいいだろ、食うか」
二三「もらおう。噛んで食べようじゃないか」
   小山田から飴をもらう二三。
二三「なかなか美味だ」
   授業のチャイムがなり 一時間目の国語の授業が始まる。先生は涼宮寮(33)。二三、お腹を押さえながら、挙手する。
涼宮「二三君、どうした」
二三「あの~、腹痛がひどいんですけど」
涼宮「トイレな、すぐ戻ってこいよ」
二三「はい、すみません」
   二三、トイレに向かう。

◯同・一階トイレ(朝)
   二三、一番奥の個室は鍵が閉まっているので、一つ隣の個室に入る。便座に座っていると隣の個室から女の声が聞こえてくる。
女の声「ねぇ、何してるの? 一緒の遊ぼうよ。いつも見てるよ」
   トイレの水が流れる音がし、鍵が締まるような音がする。二三、悲鳴を上げる

◯同・一階教室(朝)
   二三の悲鳴が聞こえ、教室がざわつく。
小山田「二三だ」
   小山田、二三の様子を見に行くために走ってトイレに行く。涼宮もついて行く。

◯同・一階トイレ(朝)
   小山田と涼宮、トイレに入り、小山田は、二三のいる方をノックする。
涼宮「おーい、一。問題でも起きたか?」
   二三、個室から出てくる。
二三「なぁ、海騎、幽霊って信じるか?」
小山田「何があった?」
二三「隣の個室から声が聞こえた」
小山田「声が聞こえた?」
二三「きっと、トイレの花子さんてやつだ」
   小山田、鍵のしまった個室をノックする。
小山田「すみません、誰かいますか? いたら返事してください」
   小山田、個室をよじ登り、中を覗く。
小山田「誰もいない」
   小山田、そのまま個室の中にはいる。
二三「よく入れるな」
小山田「まぁな」
   小山田、中から鍵を開けて出でくる。
小山田「本当に誰もいないよ」
   二三、中を見て誰もいないことを確認する。
涼宮「おまえら、教室に戻るぞ。花子さんなんて、バカらしい」
二三「ほんとなんだって」
涼宮「いいから戻るぞ」

◯同・一階教室(朝)
   三人、教室に戻る。二三、小山田は席に着く。
涼宮「よし、授業を再開するぞ。いいか、一、次、馬鹿らしい幽霊騒ぎを起こしたら許さないぞ」
   隣の席の莉子、二三に話しかける。
莉子「ねぇ、何があったの?」
二三「いいかい、桂木君、君に心配される筋合いはないが、一応言っておく。トイレの花子さん事件だよ!」
   二三、大きな声で喋る為、涼宮、注目する。
涼宮「おい、一! 馬鹿みたいな話はよせと言わなかったっけ?」
二三「すみません」
莉子「私もわざわざ聞いてごめんなさい」
二三「あと、先生、もう1つ用件が」
涼宮「どうした?」
二三「また、トイレ行ってきていいですか? まだ途中でして」
涼宮「とっとと行ってこい!」
   二三、トイレに行く。

◯同・トレーニングジム前(夕方)
   二三、帰宅途中、トレーニングジムの方を見ると、筋肉がいる。筋肉、手を振り、待っててのジェスチャーをする。
◯一二三の家・リビング(夜)
   二三と鈍吉と筋肉、カレーを食べながら
筋肉「どうだ、スパイスから作ったこのカレーは!」
鈍吉「うん、すごい美味しいよ」
二三「これすごいうまいよ、筋肉」
鈍吉「二三、筋肉さんだろ~」
   二三、鈍吉を無視する。
筋肉「あれ、もしかして、朝のこと、まだ引きずってるの?」
二三「まだって何だよ」
   鈍吉、黙ってカレーを食べている。
筋肉「二三君、君が怒るのも頷けるよ。でもね、これは試練なんだ。もう君は大人の階段を登らなくちゃいけない。現状を変えて行かなきゃ」
   二三、無視する

◯同・三階職員室(昼)
   小山田と莉子、2人で並んで立っている。向かい合うように二階堂が椅子に座っている。
二階堂「今日の放課後、2人とも理科室に来て欲しい」
莉子「はいわかりました。何をするんですか?」
二階堂「明日の授業の準備を手伝って欲しいんだ」
小山田「なんで僕と桂木さん?」
二階堂「成績優秀な2人にやってもらいたいと思ってな。実は手伝い以外にもやって欲しいことがあるんだよ、ちょっとした課題なんだがな」
小山田「課題かー、わかりました」
莉子「じゃあ放課後よろしくお願いします」
二階堂「おう、よろしく頼むな」
   

◯同・一階教室(夕方)
   チャイムが鳴り、放課後になる。二三、小山田の方に行く。
二三「海騎、帰ろう」
小山田「先帰ってて。俺、先生に呼ばれてるからさ」
二三「そうか、なんか大変そうだな。俺はさっさと帰るよ」
   二三、教室を出て行く

◯道・トレーニングジム前(夕方)
   二三と筋肉、並んで歩いている。
二三「あれ、父さんは一緒じゃ無いの?」
筋肉「途中でギブアップしたよ」
二三「初日だもんな、ちゃんとやってた?」
筋肉「勿論、バッチリさ」
二三「良かった」
   スーパーの前を通る。
二三「今日も買い物して行くの?」
筋肉「おう、もちろんよ」
二三「そうなんだ、今日は僕の分は作らなくていいよ。友達と夜ご飯食べるから」
筋肉「おっ、そうか」
二三「だから、先帰るね」
筋肉「じゃあな」
   二三、軽く挨拶をし家に帰る。筋肉はスーパーに行く。

◯学校・二階理科室
   莉子、理科室の鍵を開け、小山田と一緒に入ってくる。
小山田「呼び出しておいて、遅れるってどういうことだよ」
莉子「そうだね、どれくらい遅れるんだろう」
小山田「ちょっとした会議らしいから、30分もあればくるみたいだけど」
莉子「ふーん」
   莉子と小山田、理科室の席に着く。しばらく無言の二人。
小山田「伏見はどっかで待ってるの?」
莉子「え、いや、先に帰ったよ、っていうか、そういうの知ってるんだ」
小山田「そういうのって?」
莉子「クラスメイトの事? っていうのかな。小山田君、誰とも話さないし」
小山田「いや、話さないんじゃなくて、話せないんだ。人見知りだし」
莉子「そうなんだ。でも一君とは仲良いよね」
小山田「あいつとは、話しやすいんだ」
莉子「そうなんだ。朝早くに理科室にいるよね」
小山田「なんで知ってんの?」
莉子「みんな知ってるよ」
小山田「え、そうなんだ」
   また無言になる。
莉子「そういえば、小山田君は幽霊、とか妖怪、信じてないの?」
小山田「えっ、なんで?」
莉子「昨日のピアノの時、そんなこと言ってたから」
小山田「あー、あれか、あれはクラスが混乱してたから言っただけで」
莉子「へーそうなんだ、でもあの発言のおかげでみんな静かになったよね。よくやった。で、実際はいると思う? いないと思う?」
小山田「それはわからない」
莉子「わからないって何?」
小山田「見たら信じるよってこと」
   莉子、少し笑う
莉子「小山田君っぽいね」
   理科準備室から物音が聞こえる。莉子、怯える。
莉子「何の音?」
小山田「先生じゃない?」
莉子「いや、鍵が閉まってたし、違うと思う」
小山田「そうか」
莉子「なんか怖いね」
小山田「ちょっと見てくる、鍵貸して」
莉子「はい」
   莉子、小山田に鍵を渡す。小山田、準備室の鍵を開け、中を見る。
莉子「誰かいた?」
小山田「いや、誰もいない」
   莉子、小山田と一緒に理科準備室にはいる。

◯同・二階理科準備室(夕)
   小山田と莉子、ドアを開けて中に入る。
莉子「薬品がいっぱいだ」
小山田「うん」
   ドアのある方の壁とその向かいに薬品が並んでいる。ドアの左の壁は窓がついている。その向かいは何もない壁。床には、大きな鏡、布のかかった人体模型が置いてある。
莉子「誰もいないね」
小山田「そうだね、ネズミとかがいたのかも」
莉子「あー、それだね」   
   小山田、布のかかったものに近く。
小山田「なんだろ、これ」
莉子「勝手に触らないほうがいいんじゃない?」
小山田「いや、気になる」
   小山田、布をどかす。人体模型が出てくる。
莉子「きゃっ」
小山田「いきなり大きい声出すなよ、ただの人体模型だ」
莉子「へー、うちの学校にも置いてあるんんだ」
小山田「たしかに。まぁ、何もなかったな」
   小山田と莉子、準備室を出る。

◯同・二階理科室(夕)
   小山田と莉子、席にまた着く。
小山田「先生おそいな」
莉子「そうだね」
   理科準備室のドアがガチャガチャ鳴り出す。莉子、廊下の方に逃げる。
莉子「いったいなに、もう」
小山田「中を確認してくる」
莉子「お願い」
   小山田、準備室の方に近づく。ドアに手をかけようとした時、ゆっくりドアが開く。
小山田「逃げて」
莉子「どうしたの」
   小山田、廊下の方に逃げる。莉子と二人で準備室の扉が開くのを確認する。
莉子「ねぇ、小山田君」
小山田「何?」
莉子「幽霊とか妖怪って信じる?」
   莉子、小山田の腕にしがみつく。小山田、準備室の扉の方を見直すと、人体模型の格好をした人(以下、人体模型の人)、こちらに向かって走ってくる。
小山田「信じるかな、逃げるぞ」
   莉子、叫ぶ。

◯同・二階理科室前廊下(夕)
   小山田と莉子、同時に理科室を出る。小山田、扉を閉め、鍵を差しっぱなしにする。人体模型の人がドアを開けようとしている。鍵が引っかかって開かない。すぐにそのことに気づき、もう一つのドアの方に走る。
小山田「やばい、あっちからくるぞ」
   そう言いながら、莉子の手を取り、走って逃げる。

◯同・三階職員室前廊下(夕)
   莉子、小山田の腕にしがみついている。小山田、周りを確認する
小山田「これで、大丈夫だ」
莉子「う、うん」
小山田「あんまり追ってこなかったな」
莉子「そうだね」
   莉子、小山田の腕から離れる。
莉子「ごめん、私、怖くて。かなり強く掴んでたけど、痛くない?」
小山田「全然、大丈夫だよ」
   小山田と莉子、気まずそうに笑う。二階堂、二人に後ろから静かに近づく。
小山田「とりあえず、このこと、先生に報告しに行こう」
莉子「そうだね」
   二階堂、二人を驚かせる
二階堂「わっ」
   莉子、叫び声をあげなが二階堂を殴る。
莉子「あれ、二階堂先生」
   二階堂、地面に倒れ、立ち上がらない。
二階堂「ひどい話だ」
小山田「先生、タイミング悪すぎ」
莉子「それより先生、報告があります」

◯同・二階理科室前廊下(夕)
   小山田と莉子と二階堂、鍵のついたドアの前に立つ。
二階堂「この鍵で、出てこれないようにして」
   開きっぱなしのもう一つのドアを見る。
二階堂「あっちのドアから追いかけてきたと」
   莉子と小山田、同時に返事する
莉子「はい」
小山田「はい」
二階堂「人体模型が。すまん、バカにされてるとしか思えん」
   二階堂、鍵を外し、中に入る。小山田と莉子もついていく。

◯同・二階理科室(夕)
   二階堂、教壇に立つ。
二階堂「よし、二人とも席につけ」  
小山田「いや、先生待って、準備室の中を確認してよ」
莉子「人体模型が逃げ出してるかも」
二階堂「そんなはずないだろう。ほれ、席についてくれ。早く帰りたいだろ」
   小山田と莉子、席に着く。
二階堂「じゃあ、今日の流れの説明だ。明日の授業の準備と、もう一つ課題といったが、発表をしてもらいたい」
   二階堂、そう言いながら、机からプリントを出す。
二階堂「まぁ、この紙に書いてある内容に君たち二人の意見を足してという感じだ。明日までに頼むぞ」
小山田「明日までですか?」
莉子「ちょっと、いきなりですね」
二階堂「まぁな、がんばってくれ。あと、これからも二人にはこういう手伝いをしてもらうからな」
   二階堂、プリントを二人に配る。
二階堂「じゃあ二人とも、カバン置いて、明日の準備だ」
小山田「調子いいな」
二階堂「なんか言ったか、小山田、お前はまず、部屋の掃除からだ。床から机まで水ぶきしとけ」
小山田「ひでーや」
   小山田、掃除ロッカーから雑巾を取り出す。莉子、手をあげる。
莉子「私は何をすればいいですか?」
二階堂「荷物の運び出しだ」

◯同・二階理科準備室(夕)
   理科準備室のドアが開き、二階堂と莉子が入ってくる。
二階堂「よし、まず鏡だ」
莉子「はい」
   莉子、部屋を見渡す。
莉子「あれ?」
二階堂「ん? どうした?」
莉子「先生、人体模型、逃げ出してます」
二階堂「確かに、いなくなってるな」
   莉子、ふらつく
二階堂「大丈夫か」
莉子「先生、もう何が何がかわかりません。お家に帰ります」
二階堂「わかった、わかった。今日は解散にしよう。あとは小山田に手伝ってもらうから」
莉子「はい、すみませんがお願いします」

◯同・二階理科室(夕)
   二階堂と莉子、理科準備室のドアから出でくる。
二階堂「おい、小山田。桂木は先に帰らせる。疲れてるみたいだ」
小山田「えっ、てことは後の手伝いは俺だけ?」
二階堂「そうだ」
小山田「えーまじかよ。まぁいいや。桂木さん、気をつけて帰ってね」
莉子「ごめんね、小山田君」
   莉子、カバンを手に取る。
莉子「あっ、後、小山田君。連絡先交換しとこ。これからも手伝いとか、課題もあるみたいだし」
小山田「えっ、あっ、そうだね」
   莉子、紙に連絡先を書く。
小山田「あれ、スマホ持ってきてないの?」
二階堂「おい、小山田、持ってきてるのか? うちの学校じゃ校則違反だぞ」
小山田「お固いな~」
   莉子、小山田に紙を渡す。
莉子「後で連絡して。じゃ、先に帰るね。また明日」
   教室を出ていく莉子。
二階堂「じゃ、残り、ちゃっちゃと終わらせるか」
小山田「そうですね、先生」

◯道・学校前(夜)
   筋肉、自転車に乗っている。学校の方を見ると、怪しい二人組がいる。筋肉、自転車から降りて片足をつく。

◯一二三の家・玄関(夜)
   筋肉、家に入る。
筋肉「ただいま」
   リビングから、鈍吉の声がする
鈍吉「(寝起きの声で)おかえり」
   二三、部屋から出てくる。
二三「おかえり、筋肉。いってきまーす」
筋肉「お、おう」
   二三、靴を履く。
二三「鍵閉めといて。持ってかないから」
筋肉「おう」
   二三、ドアを開け出ていく。

◯同・リビング(夜)
   鈍吉、ソファーに寝ている。筋肉の声が玄関からする。
筋肉「すみませーん、鈍吉さーん」
鈍吉「あーい」
   鈍吉、立ち上がろうとするが、筋肉痛で動けない。
筋肉「あのー、今日は夜ご飯なしで」
鈍吉「あーい」
   鈍吉、そのまま寝ようとする。
筋肉「じゃあ、私は出かけますんで。行ってきます」
鈍吉「あーい」
   ドアの閉まる音がする。
鈍吉「え」
   そう言いながら、ソファーから少し起きる。

◯莉子の家・莉子の部屋(夜)
   莉子、カバンの中を漁っている。
莉子「どうしよう、今日貰ったプリントがないよ~」
   莉子のスマホがなる。莉子、スマホを見ると、小山田からの連絡が来ている。
莉子「小山田君だ。そうだ」
   莉子、小山田に電話をかける。
莉子「小山田君? 莉子です。こんな時間にごめんね。ちょっと、聞きたいことがあるんだけど、今日配られたプリント。そう、理科のやつ。あのプリントの内容教えて貰っていい? えっ、今から取りに行ってくれるの? 一人で? でも私の家の場所知らないでしょ? うーん、家の場所わかりづらいからな~」
   莉子、時計を確認する。8時。
莉子「私もいく。うん、じゃあ学校の前で」
   莉子、頭に悪霊退散と書かれた鉢巻を巻く。

◯学校・校門前(夜)
   小山田、閉まっている門の前で待っている。莉子、歩いてくる。頭には鉢巻を巻き、十字架のネックレスや、数珠などをつけている。
小山田「え、その格好、何?」
莉子「悪霊退散アイテムだよ」
小山田「そうなんだ。怖かったらここで待ってる?」
莉子「いや、一人でいる方が怖い」
小山田「だよね、じゃ、行こうか」
   門を登り、校内に入る。

◯学校・一階教室窓・外側(夜)
   小山田、窓を触っている。
莉子「ねぇ、小山田君」
小山田「なに?」
莉子「何で窓、触ってるの?」
小山田「何でって、ここから入るんだよ」
   小山田、触っていた窓が開く。莉子、頭をガックリと下げる。
莉子「やっぱりか。っていうか、何で鍵、開いてるの?」
小山田「いつも開けてるんだ。二三と俺で」
莉子「なんで?」
小山田「なんかあったとき用。いつも開けてるんだ」
莉子「以外と、不良だね」
小山田「いや、用意周到、知的なんだ」
   小山田、窓をよじ登り中に入る。莉子、窓の中から小山田の手を借りて中に入る。
莉子「怖いよ~」
   小山田、窓を閉める。

◯学校・一階廊下(夜)
   小山田、ライトを持っている。莉子、小山田の腕にくっついている。
莉子「夜の学校ってだけで怖い」
小山田「少しね」
   トイレの記号に光が当たる。
莉子「そういえば、今日花子さん事件があったね」
小山田「そういえばそうだな」
莉子「ちょっと、確認して見る?」
小山田「(裏返った声で)え!」
莉子「ちょっと、いきなり大きい声出さないでよ。確認しよう。本当に花子さんがいるかどうか」
小山田「いないよ、あんなの二三の勘違いだろ」
莉子「いや、行こう。別に私一人でも行くよ。除霊してやる」
   莉子、塩を取り出す。
小山田「ひとりにはできないよ」
   小山田と莉子、男子トイレに向かう

◯同・一階トイレ(夜)
   小山田と莉子、静かに入る。個室の前までと、二つの個室に鍵かかって入る。
小山田「(小さい声で)桂木さん、どうする?」
莉子「(小さい声で)どうするって、ここまで来たら、呼ぶしかないよ」
   莉子、塩を構える。
莉子「(小さい声で)いくよ、(大きい声で)花子さーん!」
   二つの個室から叫び声が聞こえる。
莉子「きゃー」
小山田「うわ」
   莉子、尻もちをつく。小山田も膝をつく。トイレの個室がガチャガチャと音を立て、片方の鍵が開き、ドアが開く、中から二三が出て来る。
二三「え、海騎?」
小山田「二三、何でここに?」
莉子「一君?」
二三「もしかして、海騎の隣にいるその変人は、桂木さんか?」
小山田「そうだよ」
   もう一つの個室の中から声が聞こえて来る。
筋肉「あれー。もしかして、二三君がいる?」
   二三、個室の方を見る。
二三「もしかして、筋肉?」
筋肉「そうだぞー、二三」
   個室の鍵が開き、筋肉が出て来る。
小山田「いや、誰だよ」
莉子「なんかこの人怖い」
   見つめ合う四人。
二三「みんな、何でここにいるの?」
小山田「確かに気になる。とりあえず、理科室に行って話そう」

◯同・二階理科室(夜)
   莉子、地窓から薄暗い理科室に入る。理科室の電気がつく。小山田、筋肉、二三、莉子が並んでいる。
小山田「よし、じゃあここにきた理由を皆話そう。まず俺たちは」
   小山田、机のあたりを探し、プリントを二枚見つける
莉子「あったあった」
小山田「ここに忘れたプリントを取りに来たんだ」
   莉子と小山田、カバンにプリントをしまい、机の上に置く。
小山田「で、二三は何でここに来たんだ?」
二三「簡単な理由さ、花子さんにリベンジを果たそうと思ってな」
莉子「花子さんにリベンジ?」
二三「そう、正確には」
   そう言いながら、塩を取り出す。
二三「除霊してやろうと思って」
   二三、塩を筋肉に投げる。
筋肉「痛っ」
二三「でもこいつだったなんて。俺を怖がらせた仕返しだ」
筋肉「俺だって怖かったんだぞ」
二三「何でだよ、お前は後から入って来ただろ。俺はてっきり花子さんかと思ってさ」
莉子「塩、投げつけたの?」
二三「桂木君、塩は投げて無いよ。私はね、怖くてね、失禁したわけだ。ちょうどトイレがあってよかった」
小山田「失禁とかわざわざ言う必要無いだろ?」
莉子「でも、確かに怖いよね」
   莉子、自分の体に塩を撒く。
二三「筋肉は何でここにいたんだ? 理由が全然思い浮かばないんだけど」
筋肉「いや、理由はあれだ、買い物帰りに学校の側を通ったんだがな」
二三「うん」
筋肉「そしたら怪しい2人組が居たんだ」
二三「何それ?」
筋肉「そう、何それだ。だから確認しに来た」
小山田「何でトイレにいたんだ」
筋肉「ただ、トイレに行きたくなった。すぐ終わる予定だったのに、個室に入ってから思ったんだ。あれ、何で隣のトイレ、鍵かかってんだ? て」
   筋肉、照れながら
筋肉「怖くてな~、じっとしてたよ」
莉子「じゃあ、二人ともトイレでお互いにビビってじっとしてたんだ」
小山田「なんか二人ともダサいなっていうか、こいつ誰なんだよ」
   小山田、筋肉を指差す。
小山田「二三と知り合いなんだろうけど、何すげー自然に俺たちも会話してんだよ」
莉子「そうだよね、この人とどういう関係なの? 一君」
   二三、考え込む。筋肉、見かねて答える。
筋肉「新しいお母さんだ!」
   二三、ずっこける。
二三「ちょっと、何行ってんだよ」
莉子「いろいろあるんだね、うん。私からは言える言葉はこれだけ。おめでとう」
小山田「俺たち、このことは絶対に誰にも言わないから」
二三「ちょっと待って、違うからね」
   二三、誤解を解こうとする。その時、スマホがなる。
二三「あれ、だれだろ」
   小山田と莉子のカバンの方から音がなっている。二三はそれを見る。小山田、急いで自分のポケットからスマホを取り出す。
小山田「ごめんごめん、俺だ」
   小山田、スマホの着信を切る。
二三「あっそうか。いいのか、出なくて」
   二三、何かを考えこむ。
小山田「大丈夫、親からだから」
   小山田、カバンの方に行く。
小山田「もう帰ろうぜ」
   小山田、カバンを持つ。
筋肉「俺はまだ残るよ。不審者が見つかってない」
莉子「思ったんだけど、それって私たちのことじゃない?」
筋肉「あっ確かに」
   二三、考え込んでいる。筋肉、謎が解けて満足。莉子と小山田、帰る準備をしている。その時、廊下を誰かが歩く音が聞こえる。フミ以外の三人、反応する。
小山田「誰だろうね」
筋肉「やっぱ不審者?」
莉子「きっと、人体模型だ」
   ドアの窓から、人体模型のマスクを被った男が覗き込み、どこかへ逃げて行く。莉子、何も言わずに、カバンを持って、ドアの鍵を開けて走って逃げる。
小山田「ちょっと」
   小山田、莉子を追いかける。
筋肉「二三君、行くぞ」
二三「え、あーうん。ちょっと待ってて」
筋肉「ちょっと待っててじゃ無い」
   筋肉、二三の手を掴み逃げる。

◯学校・二階理科室(朝)
   二三、席について本を読んでいる。二階堂、準備室から出て来る。
二階堂「あれ、小山田は今日、きてないのか」
二三「そうみたい」
   二階堂、そのまま外に出て行く。莉子、理科室に入ってくる。
莉子「失礼しまーす。あっ本当にいた」
   莉子、二三の方に走り寄る
莉子「ねぇ、聞きたいことがあるんだけど」
   莉子、二三の隣に座る。二三、本を見たまま
二三「なんだい?」
莉子「一君は昨日、トイレで花子さんを見たでしょ」
二三「うん」
莉子「私ね、実は昨日の放課後、動く人体模型を見たの」
二三「え」
   二三、本から顔を上げ、莉子を見る。
二三「それ、本当かい?」
莉子「うん」
   二三、莉子をじっと見る」
二三「詳しく聞かせたまえ」
莉子「うん、って言っても、そこの理科準備室から人体模型が出てきて、逃げ出したの」
二三「逃げ出したって、動いたところを見たの?」
莉子「みた。走ってきた。っで私は小山田君と一緒に逃げたの」
二三「何で小山田?」
莉子「先生に呼び出されてたんだ。放課後来いって。今日の準備のために」
二三「そうなんだ」
莉子「うん、だけど先生遅れるからっていうからここで待ってたの。そしたら、理科準備室から物音がして」
二三「確認しに行ったんだ」
莉子「そう、でも誰もいなくて、人体模型があった」
二三「そうなんだ」
莉子「っで、部屋を出た後、少ししたら動く人体模型が出て来たの」
   二三、考え込む
二三「うーん」
莉子「おかしいと思うよね。たった二日間でこんなに怪奇現象が起きるなんんて」
二三「そうなんだよ。僕もそう思ってた」
莉子「あれ、一君って、僕っていうんだっけ?」
   二三、慌てて本を落とす。
二三「い、いや」
   二三、咳払いをする。
二三「私もそう思っていたんだ。桂木君、現場検証と行こう」
   二三、立ち上がり、準備室の方に歩く
莉子「え、現場検証?」
二三「何ぼさっとしている。ついてくるのさ」
莉子「は、はい」
   二三と莉子、理科準備室に行く。

◯同・二階理科準備室(朝)
   二三、莉子、理科準備室にはいる
莉子「あ」
二三「どうした、桂木君」
   莉子、人体模型を指差す。
莉子「人体模型が戻って来てる」
二三「そうか、戻って来てるってことは、いなくなってるのも確認したのか?」
莉子「した。私たちが人体模型から逃げたあとに、また確認したの。その時、あったはずの人体模型は消えてた」
二三「他に何か違うところは?」
莉子「うーん」
   莉子、あたりを見つめる。
莉子「何だろう」
   二階堂、急いで理科準備室に入ってくる。
二階堂「何してるんだ」
莉子「すみません」
   二階堂、二人を押して部屋の外に出す。
   チャイムがなる。

◯同・一階教室(朝)
   ホームルームが行われている。涼宮が教壇に立っている。
涼宮「昨日の夜未明、この学校に何者かが侵入しました。不審者の可能性があるので、十分に気をつけてくださいね。あと、もし何か知っている人がいたら、あとで職員室まで来なさい。以上」
   クラスのみんな、騒がしくなる。人体模型が動いた話が噂になっている。玲、莉子に話しかける。
玲「昨日の不審者って、莉子が昨日ラインで言ってた人体模型じゃ無い?」
莉子「そうかも」
玲「トイレの花子さんとか、勝手になるピアノとか、最近多くない。ちょっと怖いんだけど。みんなも怖がってた」
莉子「怖いよね。しかも、人体模型は、帰って来たみたい」
玲「え、いつ確認したの?」
莉子「さっき、一君と一緒に」
玲「えっこいつと」
   玲、二三を指差す。
二三「そうだ。現場検証をしてたのさ」
   玲、莉子を見る
玲「え、いつそんな仲になったの?」
莉子「まぁ色々あって。そういえば二三君。思い出したことがある」
   二三、莉子にぐっと近づく。
二三「いったいなんだ?」
玲「ちょっと、顔近く無い?」
   二三、少し離れる。
二三「すまん、っで、何を思い出した?」
莉子「さっき、準備室に入った時、昨日準備してた鏡がなくなってた」
玲「それはただ別の場所に持って行ったんじゃ無い?」
   二三、考え込む
莉子「二人でやっと持てるくらいのものだったよ」
玲「うーん」
   二三、立ち上がり、みんなの方を向いていう。
二三「皆の集、今回の怪奇現象の謎、全て解決してみせよう!」
   二三、そのままドアに向かう、
二三「一時間目の理科に遅れるよ」
   
◯同・二階理科室(朝)
   チャイムがなる。みんな席についている。二階堂、教壇に立つ。
二階堂「よし、授業を始める」
   二三、挙手する。
二三「先生、ちょっと待ってください。実は、みさなんに大切なお知らせがあります。お時間をいただいていいですか?」
二階堂「おい、授業の邪魔するな」
二三「この二日間、学校をにぎやかしている、怪奇現象についてです」
   小山田、顔を上げる
二階堂「そんな馬鹿な話、何で今するんだ」
二三「先生、怖がるみんなを、僕は救いたいだけです」
二階堂「おい、一、お前が変わってるのは知ってたが、ここまでとはな、まぁわかった。話してみろ」
二三「ありがとうございます。先生」
   二三、みんなの方を向く。
二三「では、皆、静粛に、この事件の真相を聞く時間だ」
玲「何が事件よ。大袈裟にして」
二三「まず、今回の怪奇現象は、三つあった。一つ目、勝手になるピアノ。二つ目、トイレの花子さん。三つ目、動く人体模型。まず、トイレの花子さんから解決しよう」

◯(回想)一階トイレ
   二三、トイレに入る。
二三N「まず、鍵をかけたトイレという状態は誰でも作れる」
   二三、花子さんの声を聞く。
二三N「そして声が聞こえた。その声の最後に何か鍵のかかるような音がしたんだ」
   二三、鍵のかかったような音を聞く。
二三N「この音は、スマホを切った時の音だ」
 (回想終わり)

◯(戻って)二階理科室(朝)
   二三、教壇に立っている。二階堂、場所をどいている。
二三「つまり、誰かが、隣のトイレにワイヤレススピーカーを置いて、鍵を閉めて出て行った」
   二三、小山田をチラッと見る。
二三「そして、僕を助けにくる時回収したのでしょう。そのスピーカーを。そうだろ」
   小山田、下を向く。
二三「ただ、スイッチを切り忘れてしまったんだ。彼は。僕はそれに気づいていた」

◯(回想)二階理科室(夜)
   小山田のカバンから音がなる。小山田、自分のポッケからスマホを取る。

◯(戻って)二階理科室(朝)
   小山田、下を向いている。二三、教卓に手をつく。
二三「ただ、これは証拠がないのでこれ以上は何もいえない。なので、次の事件だ。動く人体模型。この事件を簡単に説明すると、理科準備室にあったはずの人体模型が。動き出し、逃げ去ったということ」
莉子「そうです」
二三「しかも、動いたところを完全に見ているらしい。見ていたのは、桂木君と海騎だ。桂木君、現場説明を頼む」
   莉子、立ち上がる。
玲「え、莉子、なんか乗り気だね」
   莉子、玲を見て
莉子「少しね」
   莉子、教壇の二三の隣に立つ
莉子「まず、私たちは、放課後、理科室に来ました。今日の授業の準備のため、先生に呼ばれました。先生より早くついたので待っていると、誰もいないはずの理科準備室から物音が聞こえて来たので、確認しに行くと誰もいない。そして部屋から出ると」
   二三、理科準備室を指差し
二三「そこから人体模型が出て来たと、そして後から確認しに行くと、人体模型は消えていた」
莉子「そうです」
二三「ありがとう、莉子君」
   莉子、お辞儀をすると席に戻る。
二三「おそらく動いた人体模型は、誰かが全身タイツを着たものだろう。ただ、そうすると、あの理科準備室のどこに隠れていたかが問題だ。そしてどこに消えたか」
   二三、理科準備室のドアの近づく。
二三「さっき、桂木君と現場検証した。その時、人体模型は戻って来ていたが、代わりに、鏡が消えていた。そして僕が感じた違和感」
玲「違和感?」
二三「そう、理科準備室は、この部屋に隣接しているはずなのに、狭すぎる」
莉子「あー、確かにそうだ」
二三「なぜなら、部屋の奥に、まるっきり新しい壁を作っていたんだ」
   二階堂、下を向く。
二三「そして、その作った壁の奥で、動く人体模型は待機していたんだろう。そして、タイミングを見て部屋から出てくる。その時に、人体模型は、壁の奥にしまっておく。そうすると、人体模型はいなくなったように見えるというわけだ」
莉子「なるほど。じゃあ、その部屋には、偽の壁がまだあるってこと?」
二三「そうだ! 今からその証拠を持ってこよう」
   二三、理科準備室に入っていく。静かに待つ。中から、人体模型の全身タイツを着たテロリスト男(30)、二三をナイフで人質にとりながら出てくる。
テロリスト男「お前ら動くな、動いたらこいつを殺す」
   じっとする教室、テロリスト男、二階堂を見る。
テロリスト男「おい、おまえ、話がちがうじゃねぇか。許さねぇぞ」
   二階堂、震えている
テロリスト男「俺はまず、そこにいる莉子ってやつを人質にするんじゃなかったのかよ。まぁもういいか。いいかお前ら、よく聞け、一二三ってやつを出せ」
   筋肉、開いている理科準備室のドアから、手だけを出し、そのままテロリスト男と二三を理科準備室に連れ込む。

◯同・二階理科準備室(朝)
   テロリスト男は縄で縛られている。
二三「筋肉、どういうこと?」
筋肉「いや、昨日の夜に見た人影が、どうしても男二人だと思ったんだ。っで、二三君が心配になってな。理科室まで来たわけだ」
二三「どうやって登って来たの?」
筋肉「今度教えるさ」
   筋肉、窓から出ていく。

◯同・二階理科室(朝)
   二三、理科準備室から出てくる。
二三「犯人は大丈夫だ、警察を早く呼んで、先生」
   二階堂、莉子に近づく。
二階堂「莉子、好きだよ。本当は、人質に取られた君を助けるはずだったのに」
   二階堂、泣きながら莉子に抱きつこうとする。小山田、莉子を守る。
小山田「やめろよ、二階堂先生!」
二三「海騎、ここは任せた」   
   二三、教室を出る。海騎、二階堂を抑える。
小山田「先生、どうしちゃったんだよ」
   二三、涼宮を連れてくる。
涼宮「二階堂! 貴様何やってるんだ!」

◯同・校門前(朝)
   パトカーが止まっている。テロリスト男と二階堂が警察に連れて行かれている。

◯道(夕)
   二三と小山田、隣で歩いている。
二三「なぁ海騎、なんで怪奇現象ごっこなんてしたんだ?」
   小山田、二三を見る。
小山田「絶対に誰にもいうなよ、俺も桂木さんが好きなんだ」
   二三、驚く。
二三「え、そうなのか。でもそれとこれは関係あるのか?
小山田「怪奇現象から桂木さんを守る。ってストーリーだよ。俺、二階堂先生に相談したんだ。でもあんなことになるなんて思ってなかったけど」
二三「まきこまれたんだな」
小山田「俺、二三に謝りたいことがあるんだ」
二三「なんだよ」
小山田「花子さんの時、お腹痛くなっただろ」
二三「うん」
小山田「あれ、タイミング良すぎだろ」
二三「確かに」
小山田「授業が始まるまえにあげた飴に下剤入れてたんだ」
   
   × × ×
   (フラッシュ)
   小山田が二三に飴をあげるシーン
   × × ×

二三「おまえ、ふざけんな」
   二三、小山田に掴みかかろうとする。
二三「あ、じゃあ、夜の学校に二人でいたのも作戦?」
小山田「よく気づいたな、まぁ、本当は学校に侵入つもりはなかったんだ。本当は、放課後、すぐ必要になるプリントをもらう。それをバレないように俺が盗む。そして家に帰ってから桂木さんは気がつくんだ。プリントがないことに。そして俺のもとに連絡が来る。俺はプリントを取って来るよと言い、家まで届ける予定だった」
二三「でも、桂木さんは、一緒に取りに行くと言ったんだね」
小山田「そうなんだよ。最悪だった、俺も夜の学校なんて怖いんだよ」
   二三、小山田の背中を叩く。
二三「まぁ頑張れよ。桂木さん、変人だけど」
小山田「やっぱそう思う?」
二三「うん」
小山田「だよなー」
   二三と小山田、仲良く歩く後ろ姿
   (完)

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鳥居図書館
鳥居ぴぴき 1994年5月17日生まれ 思いつきで、文章書いてます。