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日記④

20221114
若山牧水の歌集を人生のバイブルとしている。圧倒的に好きなのは初期で、小枝子に片想いしていた時期の『海の声』『独り歌へる』『別離』あたり。やっぱり人間というものは片想いとか怒りや悲しみとか、感情が自分の中に詰まったときに芸術的に良い状態になるよなと思う。短歌に浸りたい気分の夜なので、好きな短歌と、好きなひとの話でもする。
【君かりにかのわだつみに思はれて言ひよられなばいかにしたまふ】
若山牧水だと、これが一番好き。「もし君が海の神様に愛されてしまって、言い寄られたらどうしますか」こんなにロマンティックな恋の歌をわたしは他に知らない。海の神様に想われるほど美しい君、そしてそんな君にわたしだけが選ばれていたいと願う気持ち。純粋な恋心が澄んだ水面みたいにきらきら光り、わたしはいつもどきどきしてしまう。
【くちづけは永かりしかなあまつちにかへり来てまた黒髪を見る】
キスの歌。いつまでもしていたいような口づけを想う。好きなひとの美しい瞳とか、綺麗な黒髪とか、忘れがたい情景を想う。「あなたを想うとき、わたしはいつでも心のいちばん綺麗な場所にいる」というのがわたしが発したことのある一番粋な愛の言葉なのだけど、「あまつちにかへり来て」とまで言われてしまうとその情熱には敵わない。
【君かりにその黒髪に火の油そそぎてもなほわれを捨てずや】
愛とは執着であって、覚悟であって、懇願である。「もしその美しい黒髪が燃えたとしても、わたしを捨てないでいてくれるだろうか」と願う一瞬、我々は酷く我儘に乱暴に…情熱的に誰かを求めている。あなたの特別になりたいけど、そんな優しい言葉じゃ表したくない日もあるんです、なんて。
【短かりし一夜なりしか長かりし一夜なりしか先づ君よいへ】
これってすごく耽美な歌だよね。はぁ、どきどきする。すこし暗い部屋に間接照明だけが灯って、外は雨が降っている。雨音が窓を叩くのを聴きながら、優しい声でこんなふうに問われたらどんな気持ちがするだろう?…という妄想を自分の部屋でするなど。
【君がいふ恋のこころとわがおもふ恋のさかひの一すぢの河】
わたしの気持ちとあなたの気持ちは違う、そんなふうに思うことって誰しもある。人間の心が均等に向かい合うことなんてないのだし、当たり前といえばその通り。ねえ、わたしはいつまでもお前に会いたいのだけど…とたんぽぽの綿毛みたいにふわふわと飛び立っていったひとを想う。遠い海の先にいる彼女は意地悪に約束を叶えてくれないままで、取り残されたわたしは未練がましくばかみたいにロック画面を変えられずに待っている。はぁ。
【きはまりて恋しき時は三日にしてすへる煙草をひと夜には吸ふ】
これはかなり好き。誰かに対する感情を煙草で表すのっておしゃれだよね。そういえば、go!go!7188の歌で「愛しい人よ離れ、顔なんて3日もすりゃすぐ忘れてしまった。ただ染み付いて消えないのは煙草の匂い」という歌詞はかなりぐっとくるよね…と小学生くらいからずっと思っている。煙草に対する漠然とした憧れやら情緒的なエピソードをいくつか持っていながらも(煙草の匂いなんて似てるしすぐ忘れちゃいませんかね)と思っちゃうのがわたしなのだった。近くで嗅いだのにマルボロとセッターとピースの違いもわかんない。風情がないね。

20221114
1日に2回も日記を書いていいのか?(そんな日があってもいいよ)
眠れないので、再度言葉を吐いてみる、げろげろ…。そんな日があってもいい、はたぶん口癖。肯定するのが癖。素敵な癖だよね。
口癖って誰でもあると思う。わたしの場合は「なるほど」(理解)「やっちゃお」(提案)「そりゃそうじゃ」(なぜオーキド博士に)、あとは「アナスタシア内親王殿下…!」これは実際には言わないけど脳内でよく繰り返している。何か大きな間違いをしたときや、後悔しているとき、びっくりしたときなど。
今日はインターン参加を疑われ教授からキレ気味のメールが来た。「わたしのこと優先しないとヤダ、痛い目みせてやる」みたいな、メンヘラ彼女すぎる内容。就活、させておくれよ。このままじゃ院卒ニートになっちゃうよ。教授から就活を阻止され続けるストレスで眠れないので、大好きなひとの話をしようと思う。そう、ハンニバル・レクター博士。トマス・ハリスの『羊たちの沈黙』『ハンニバル』『ハンニバル・ライジング』『レッド・ドラゴン』のシリーズは全て映像化されているほど有名だけど、わたしはあんまり映像の方は観ていなくて、高校生の頃に原作をすべて買って読んだ。面白すぎる…!そして、レクター博士がかっこよすぎる。そう、わたしは高校生の頃からずっとレクター博士の夢女。夢女なので『レッド・ドラゴン』が原作の、マッツ・ミケルセンが演じたドラマは全部観るくらい好き。あれさ、すごーく良いよね。アンソニー・ホプキンスのことは嫌いじゃないけど映画版の『羊たちの沈黙』『ハンニバル』は許せない。怖すぎるし、かっこよくないから。
レクター博士は端正な顔立ちの聡明な紳士であって、猟奇的な殺人鬼でもある。
好きな台詞。「非礼な振る舞いは言葉に出来ぬほど醜悪なことなのだ、わたしにとっては」
地下牢のシーンがわたしはすごく好き。レクター博士が紡ぐ知的な言葉、繊細な指先がなぞる世界、誰も知り得ない彼の心…何もかもが完璧で神聖な場所なのだ。あなたの言葉が好き、あなたの瞳が好き…神様のように盲信する。彼の脳内に存在する【記憶の宮殿】についても、わたしはかなり影響を受けて自分でも構築しようと奮闘した方だと思う。ああ、『ハンニバル』でクラリスがされたようなことをされてしまったら。レクター博士と記憶の宮殿の部屋をひとつでも共有できたら。あなたという人間を信仰し繋がりを感じられたらどんな素敵な気持ちだろう!
"ほんのつかのま、クラリスの人差し指の先がレクター博士の人差し指の先に触れた。その瞬間、レクターの目がはぜるように輝いた。"
わたしはレクター博士がクラリスに抱いた感情の名を知らない。わたしという人間が知り得ない世界に生きるひと。いつまでも悪夢のように恐ろしく、残酷に美しく、わたしの心を惹きつけて離さないひと。あなたに見つめられ愛されるのなら殺されてしまっても構わない、そんなふうに思える唯一のひと。

20221115
日記、書くときは毎日書くのに飽きると平気で数ヶ月放置しちゃう(今は書く時期)。なんでこんなに飽き性なんだろう。ムーミンのスマホゲームも高2から続けてる割にたぶん2年くらい放置していて、きっと今頃わたしのムーミン谷は絶滅している。いままで何かを欠かさず続けられたことがなくて、それでいて友達とか大切なものは長く大事にする、ふしぎ。幼稚園の先生と未だに文通している。大切なこととどうでもいいことの線引きが明確なのだと思う。
この前人形町に行った。人形町と神田はわりと近くて、日本橋とか茅場町含めあそこらへんの街の感じはすごーく、良いよね。そのとき阿川弘之の『カレーライスの唄』を読んでいた関係でカレー屋さんに行きたかったのだけど見当たらず、神田まで行くのもめんどくさかったので喫茶去快生軒という喫茶店でチーズトーストを食べてコーヒーを飲んだ。良い場所だった。
『カレーライスの唄』は会社が倒産して無職になった主人公がカレー屋さんを立ち上げる話。第二次世界大戦が影を落としているのを感じさせつつ、テンポ良く描かれるエンタメ作品だった。この時代の人情溢れる感じがわたしはかなり好きで、それは憧れかもしれないが…今から60年前に書かれた小説だと思えないくらい読みやすくて一気に進んだ。
ところで、ごはんのある喫茶店はそれぞれカレー・オムライス・ナポリタンのどれかに強みがある気がしているんだけど、ここはトーストが強いらしい、美味しかった。ナポリタンが美味しい喫茶店といえば個人的には大阪のアメリカンとか浅草のロッジ赤石とか…この前行った上野の王城も美味しかったな。カレーとオムライスはどこが美味しいかな、知ってたら教えてください。(日記でメッセージを発するな)
大学に入ってから歯列矯正で3年くらいカレー断ちしてたので、ひさしぶりに食べたときビビった。美味しい食べ物すぎる。だらだらと書いてしまったけど眠いので好きなカレー屋さんを10個羅列して寝ます。日吉のHI, HOW ARE YOU、阿佐ヶ谷の黒猫茶房、札幌のyellow、柏のボンベイ、大島のミナミキッチン、高円寺のアンドビール、下北沢のポニピリカ、南阿佐ヶ谷のプラバート、吉祥寺のリトルスパイス、西荻窪のタリカロ
おやすみなさい。


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