優子ちゃん

「男の子に生まれたかったな」
優子ちゃんはそう言うと、頬を膨らませた。
「どうして?」
「だって、男の子ってずるいんだもん。わたし、男の子になったらしたいこと沢山あるの」
「何をするの?」
「まず、女の子を抱くの。柔らかいねって言いながら、優しく抱くの。もちろんたくさん触って、キスもするわ」
優子ちゃんの目はキラキラしていた。わたしは優子ちゃんの制服のスカートからのぞく白い太ももを見つめて、また視線を戻した。
「わたしだって、映画館でLサイズのコーラを頼んだり、夜にビールを飲んで煙草を吸うことは簡単にできるわ。だけど、セックスだけは別なのよ」
優子ちゃんは桃色の唇をきゅっと引き締めて、微笑んだ。夕日に照らされた優子ちゃんは天使みたいに綺麗に見えた。
「女の子を抱いたらどういう気持ちになるのかな」
「きっと素晴らしい気分よ。この世の何よりも気持ちよくて、素敵なものに違いないもの」
その日の夜、わたしは夢を見た。夢の中で優子ちゃんは裸で、わたしは男の身体で優子ちゃんを抱いていた。わたしは優しくキスをして、優子ちゃんの顔を見た。優子ちゃんは何も言わずにただわたしを見つめていた。わたしと繋がっても、優子ちゃんはちっとも嬉しそうじゃなかった。表情ひとつ変えず、綺麗な黒色の瞳は光っていて、なんだか怒っているように見えた。わたしは素晴らしい気分なんかじゃないよ、と優子ちゃんに叫びたい気持ちになって、悲しくて少しだけ泣いた。

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