突然で、突然じゃない別れ

「他に気になる人ができた」

ある日、いつものようにうちに来たあなた。いつものようにご飯を食べて、ダラダラしてた。私は、次の日から始まる週末は何をして過ごそうか、そんなことをのんきに考えてた。

寝るときになって、あなたが緊張してるのを感じ取った。とっさに「あ、何か言われる」そう思った。

あなたは「話さないといけないことがある」と切り出す。私の心臓はドクドクと焦り出す。「終わりになるのか、でももしかしたら違うかもしれない」とほとんど実態のない期待を持ちながら、次の言葉を待った。

あなたは何も言わなかった。その空気に耐えられなくなった自分は「別れたいんだね」と言ってしまった。

するとあなたは「そこまでは考えてない」と。私は希望を感じたが、次の瞬間その希望も跡形もなく消えた。

「少し前から気になる人がいる」と。

耐え難い感情が溢れてくるのと同時に、やっぱりかと思う冷静な自分がいた。

あなたは"別れ"という選択を時間をかけて考えていきたいみたいだったけど、私には時間をかける意味がないと思った。

簡単によそ見するあなたと、これから先やっていけるわけないと思ったから。

だからその場で「別れ」を選択した。

いま思えば、いつかあなたに飽きられて別れることになるんだろうと、どこかで思ってた。

いつもどこか自由でいるあなたに惹かれていたけど、その自由さはいつか私を苦しめるだろうとどこかでわかっていた。

でもあなたと一緒にいれることが嬉しくて、大切にしたくて、いつしか自分の不安に蓋をした。

少しずつ離れていくあなたの気持ちを確かめることができなかった。

自分の不安をあなたに伝えることができなかった。

怖かった。

苦しかった。

友達には「うまくいってる」と強がってたけど、本当はうまくなんていってなかったんだ。

誰かに言ったりしなければ、自分の不安が現実になることはないと、バカなこと考えてた。

別れ覚悟で自分の気持ちを勇気を出して伝えればよかった。もっと向きあえばよかったな。

別れたことで、苦しさから解放されてホッとしたと思う気持ちもある。

でもこれから先、あなたと一緒に過ごすことがないと思うと、虚しくて、怖くなる。

あそこに一緒に行きたかったな、とか、このこと話したい、とか。

しばらくはあなたのことを思い出して、心にぽっかり穴が空いたことを痛感するんだろうな。

自分に自信がなくなって、自分が嫌いになりそうになることもあるんだろうな。

前を見て、自分を大切にしないといけないけど、

でももうしばらくは、落ち込んだままでいさせて。

あなたとの思い出を、いい思い出だったと言えるようになるまでは。