味うっす!!!!!!!

「え、味薄くない?」
「味見した?」

手料理を振る舞った際によく言われたセリフ。

大学で一人暮らしを始めて、友達と宅飲みしたりする様になった頃、皆んなで手料理大会をした時に、あ、私って料理下手なんだ。と初めて気づいたのである。

それまでは他人に料理を振る舞う機会が無かったので、自分が料理が下手な事に気がつく事もなく生きてきたのであった。

両親が共働きという事もあり、中学生の頃からよく夜ご飯を作ったりしていたので、何なら料理の腕には自信がある方だったのに…

当時付き合っていた彼氏も

「アイツの手料理、イマイチなんだよな」

って友達に言っていたらしく、本気で落ち込んだ。

イマイチの訳を聞いてみると、どうも味が薄いとの事。

アジガウスイ……?

ウスイ…??

家族に振舞っていた時、そんな苦情はひとつもなかった。

気を使っているのかと思っていたけれど、味が薄いうんぬんでは無く、味自体が美味しくない時ははっきりと言う父にも味が薄いと苦情が入った事は無かった。

そして友達とお泊まり会をした時に私は衝撃を受けた。


…美味しい…!!
…味が濃くて、とても美味しい!!!

今思えば友達が作ってくれた料理の味付けが、世間の普通なのだが、私からするととても濃く、とても美味しく感じたのだ。

普段スーパーで売られているお惣菜も味が濃く、あまり美味しく感じられなかったので、味の濃い物を食卓で食べる経験があまり無かった事もあり、新鮮に感じた。

そんな経験もあり、友達や彼氏に
「味付けをしっかり行う」
という料理の初めの1ページにも満たない、人間として当たり前のことを、ここ最近で教わった。



そして現在、私は仕事を辞め実家に戻っている。

夜ご飯は久しぶりの母の手料理。

いただきまーす!!



……薄い…



……薄い…!!



…でも…

…なんだ、この落ち着く味は…!!


そう、私の母の味というのはイコールで味の薄い、味付けを意識しない料理が基本なのだ。

味付けがきちんとされた、濃い味の手料理など出てきた記憶がない。

でも、落ち着く味で、いつも以上に箸が進んだ。

私の母の味は精進料理と変わらない。

でも、私はそんな料理をこよなく愛している。





おしまい。


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