耳を澄ませば

もうこんな夜道を1人で歩くのはやめよう
変わらない信号機、動かない影、風ひとつない静かな歩き慣れた道、街。あの人との会話、あの人とのいざこざ、あの人との思い出が脳内を駆け巡る。傾いたバス停の標識を見つめながら前に歩いた時何かが振り返った気がしてこれが静かなる狂気だと思った。こんなにも平和で、心地の良い風が吹いているのに木々は1枚の葉も揺らすことなくそこに居る。全てが作り物のようで私も何だか誰かの作り物のような気になる。どうせという言葉はなるべく使いたくなかったのにいつだってその言葉を殺すことを考えて握った刃を離せずにいる。守るための暴力、どんな私の言葉も誰かにとってはそうだったのかもしれない。今夜は君に会いたくないよ、近頃何故か私は君に刃を向けてしまう。耳を澄ませばここから遠い君の部屋のエアコンの音が聞こえるだろうか、今ここで自らの心臓に刃を突き刺してどうせ作り物だった事を当たり前のように、何も悲しむことではなく喜びであると言い聞かせてから君の元へ行けば私はは刃を手放した私で君に会えるのだろうか。永遠なんてないからさ、運命は特別じゃなくて必然だからさ
星の巡りがまた変わればこちらも必然離れ離れ
鍵の開いたドアの奥で君がソファに座った音がした。私はいつだって知ってるんだ君がこの街でちゃんと生きていること、そしてそこにちゃんと私がいること。

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