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「こんな街中に温泉が湧いているなんて!不思議ですね。」以前温泉評論家の方が温泉の取材にお越しになった時に、とてもびっくりした表情で言っていたのを今でも印象的に覚えています。

旅館の創業者は祖父

私の実家は静岡県・焼津で創業75年を迎える旅館です。私は四代目で若女将として働いております。

旅館名の「蓬来荘(ほうらいそう)」という名前は創業者の祖父が付けた名前で仙人が住む場所という意味があるそうです。

祖父が焼津に旅館を創業した頃には、焼津には温泉がなく、テレビもまだ各家庭に普及していないような時代。祖父は当時高級品だったテレビを購入し、旅館の塀の外側に向けて取り付け、近所の方々がテレビを見れるようにしたそうです。相撲や野球の観戦に人だかりができて、にぎわっていたと父が話していました。祖父は「新しいものや人が喜ぶところを見るのが好きだった」そうで、アイディアマンだったと聞いています。

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祖父の枕元に薬師如来さまが現れた

そんな祖父はある時、「温泉を掘る」と言い出します。温泉がなかったこの地域に、なぜいきなり温泉を掘ると言い出すのか?周りはあっけにとられ、止めに入ったそうです。祖父が温泉を掘るきっかけは、祖父の枕元に薬師如来さまが現れて、温泉を掘るようにお告げがあったから。

人が聞いたら笑い話のネタになるような摩訶不思議な話ですが、祖父はそのお告げに従い、図書館に通いつめ、地質学を学び、旅館の敷地内に温泉が出ると確信したそうです。昭和の初め、祖父は本当に温泉を掘り当てました!

焼津では初となる温泉。しかもポンプでの汲み上げではなく、大地から温泉が自ら湧き出るという自噴温泉です。湧出温度は40度前後。加温加水なしで湧いた温泉にそのまま入れるというのは、大地の恵みであり、薬師如来さまのご利益なのかもしれません。「人の喜ぶ姿を見るのが好き」な祖父は温泉を楽しんでくださるお客様を見て、とても嬉しかったと思います。祖父は温泉を掘った数年後に亡くなりました。きっと温泉を掘るという使命を持ってこの世に生を授けられたのだと私は常々思っています。祖父が掘った「蓬来温泉」、薬師如来さまに感謝をし我が家でお祀りしています。

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この蓬来(ほうらい)温泉は、温泉の中でも「療養泉」と呼ばれる温泉です。塩化物泉でミネラルを多く含み健康維持に役立つといわれています。

(源泉名)蓬来温泉
 湧出地における調査および試験成績
 1 泉温 摂氏42度
 2 性状 無色透明 沈殿物なし 苦味性歯減味
 3 水素イオン濃度 PH8、6
 泉質:ナトリウム塩化物泉(緩和性低張温泉) 
 効能:慢性関節リュウマチ、慢性筋肉リュウマチ、神経痛、疲労回復、糖尿病、創傷、不眠症、動脈硬化、慢性皮膚病など

温泉のかけ流しは贅沢だけど、「もったいない」

今も24時間365日絶えず湧き出る温泉に感謝するとともに、かけ流してしまうことに「もったいなさ」を感じていました。療養泉と言われる薬事効果の高いと言われる温泉をもっとたくさんの方に知ってもらい、喜んでもらえることはできないのか?? 祖父からのメッセージなんでしょうか???

私は温泉の入浴以外の活用を考えるようになっていきました。。

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