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「なんでも挑戦したい」漁師自らSNS配信や商品開発…独自ブランド「桜鱗」は好調 北洋共同漁業部

 北海道斜里町で主にサケやマスを漁獲している北洋共同漁業部。漁以外にもブランディングや情報発信にも注力し、多くのファンを獲得しています。先進的な取り組みを続ける同社を取材しました。


サクラマス漁の様子

 今の時期はサクラマスが旬。同社の第二十一 北洋丸の2024年の水揚げ量は例年に比べ好調で6月5日時点で、23年の5400本より多い10149本です。好調な可能性について「サクラマスの餌であるイワシが大量に発生したこと」を指摘します。


 しかしせっかく斜里町でサクラマスが水揚げされていても、全国的な知名度はまだまだ低いです。そんな現状を打開するため、同社が2023年に立ち上げたのが「知床桜鱗」というブランドです。ブランドの基準は①斜里町でとられた天然のサクラマス②船上で活締めを行う③徹底した温度管理を行う――など6つ。基準が厳しいため、同社が2024年に水揚げしたサクラマス10149本(6月5日現在)のうち、1.4%の145本しかありません。


 また価格面でも知床桜鱗は高級ブランド。市場ではトキシラズよりも高価なこともあると言います。

 出荷が始まって2年目の24年。知床桜鱗の良さが少しずつ良い評判が広がったため、市場での売れ行きも良くなりました。「市場で売れれば、自分たちが関与していない飲食店でも使われることにもなるのでうれしい」と藤田菜月さんは笑います。

 着実にブランドイメージが醸成されている「知床桜鱗」。肝心の味はどうなのでしょうか。実際に私が食してみると、くどくない上質な脂が乗っていてシロザケよりも身質は柔らかいと感じました。くせが少ないのでルイベやムニエル、焼き魚など色々な料理に合いそうです。


 「知床桜鱗」は同社ホームページや斜里町のふるさと納税の返礼品として手に入れることができます。

気候変動や6次産業化、SNS…変化が大きい時代に「柔軟に対応」

 海水温の上昇により、最近は北海道でもブリが捕れるようになった地域も出始めています。実際、北洋丸でも以前までは捕れなかったブリやシイラが網に入ることもあると言います。

 漁を通し、気候変動を感じるメンバーたち。「いつ漁獲する魚種が変化してもおかしくない状況だと危機感を感じている」と言います。このような危機意識から、高知県の宿毛市のブリ養殖を視察に行ったり、魚介類の価格で売り上げを左右されない仕組みの構築に取り組んだりしています。

 また、斜里町の特色であるサケの宣伝や、ふるさと納税の返礼品として魚介類を出品しています。漁師自らが鮮度維持にこだわって商品開発をしていると言います。

 「漁具の改良や6次産業化の推進など、できることはなんでも挑戦したい」と意気込みます。


TikTokのアカウント「北洋丸の漁師たち」の動画 https://www.tiktok.com/@shari_no21

 さらに2022年からは動画共有サービス「TikTok(ティックトック)」や「ユーチューブ」での動画やライブ配信も開始。SNSでの活動が商品販売や会社のPRに良い影響を与えているようです。「漁業のライブ配信や同社のメンバーが遊んでいる様子を発信している」と藤田さんは笑います。

 半年間、毎日投稿し続けるなど地道な努力が実を結び、フォロワー数はTikTokが約50000人、ユーチューブが約13000人までに達しました。外国人の視聴者もいると言います。


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