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【見学】ワイナリーの「新たな一歩」北海道の美しい丘陵地 馬追蒸溜所...地域素材でこだわり酒造り

 9月30日、北海道の美しい風景に囲まれた「馬追蒸溜所」を訪れる機会を得ました。馬追丘陵は長沼町に位置する別荘地であり、その土地の特徴を生かして、ユニークなワインとウイスキーが生まれています。今回は、担当の池岡優介さんに案内していただき、ワインやウイスキーの製造プロセスを詳しく知ることができました。(坂入)


馬追蒸溜所の外観

馬追の歴史とワイン醸造の始まり

 馬追蒸溜所の歴史は、1980年代に始まります。当時、電気設備会社の社長が災害や戦争に耐えられるよう自給自足するために、ここに別荘を建てたのがきっかけです。この地には、加賀藩の開墾時に石が多く、農業が難航したという逸話もありますが、その土地の特性を生かし、ヤマブドウ栽培とワイン醸造が行われるようになりました。


馬追のブドウ畑

 特に、馬追で栽培されている「ヤマソービニオン」という品種は、ヤマブドウとカベルネ・ソーヴィニヨンを交配させた非常に特別な品種です。この品種は、ヤマブドウの生命力とカベルネ・ソーヴィニヨンの味わいの両方を兼ね備えており、厳寒期の-15度で枯れてしまう欧州系品種の弱点が克服されています。馬追の厳しい気候でも、この品種は特別な管理の下で育てられています。
 馬追では他にも「ヒマラヤ」や「岩松」といった珍しいヤマブドウの品種が栽培されており、これらの品種は世界でもここだけで育てられているのが特徴です。

ワイナリーの新たな一歩


蒸留器

 2021年に建てられた馬追蒸溜所は、スコットランドのフォーサイス社製の複合蒸留器を導入し、ワイナリーから蒸留所としての新たな一歩を踏み出しました。この蒸留器の特徴は、ウイスキーとブランデーの両方が作れること。池岡さんによると、大手の蒸留所では自動化が進んでいますが、馬追では職人が手作業で丁寧に行っています。


酒が詰められた樽

 また、見学施設には短期熟成用の倉庫が併設されており、樽の保管が行われています。40リットルの樽では55〜60本の瓶詰めが可能で、小さな樽ほど熟成が早く進むことも学びました。
 興味深い点として、馬追では北海道中標津産の大麦モルトを使用してウイスキーを造っています。スコットランド産と比べると蒸留回数が増えるためコストは高くなりますが、地域の素材にこだわる「ローカルバーレイ」の精神が根付いているのです。

ジンに挑戦 ラベル製作にAI

 馬追蒸溜所は、今年から新たにジンの製造も始めています。「MYAOI」というブランドで展開されるジンは、「MAOI」という名前に猫の鳴き声をもじって作られたもので、ボトルのラベルもAI技術を活用して開発されています。既に第1弾と第2弾のボトルが即完売しており、今後も注目のブランドです。さらに、北海道ならではの香草を使った製品がリリースされる予定で、北海道の素材を生かしたユニークなジンが楽しみです。

歴史と自然を尊重 多彩な酒類を製造


同蒸溜所の酒は売店で購入可能

 馬追蒸溜所は、土地の歴史と自然を尊重しながら、ワインとウイスキー、そしてジンという多彩なアルコールを生み出しています。手作業による丁寧な工程や地域素材へのこだわりは、まさに北海道の風土と共鳴する特別な体験です。次に訪れる際には、さらに新しい発見が待っていることでしょう。




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