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【ルポ】ホタテの稚貝放流に密着…海水被りながら稚貝“ほろう”…筋肉痛になるも、船上で見る朝焼けが最高 その2

 オホーツク海で、毎年4~5月ごろにホタテの稚貝放流が行われます。北海道ハル通信の記者・野中直樹は、この稚貝放流の取材を実施。同月15~25日の間、佐呂間町のホタテ漁師・田中俊(たなか・すぐる)さんの船に乗船しました。

※前編「【ルポ】ホタテの稚貝放流に密着…海水被りながら稚貝“ほろう”…筋肉痛になるも、船上で見る朝焼けが最高 その1」はこちらをご確認ください。


丸カゴを水から揚げる様子(5月22日午前4月18分 サロマ湖 撮影:野中直樹)

1日に何度も出港し疲労たまる…しかし、サロマの朝焼けは格別

 大雨や強い風で漁が休みにならない限り、船は1日に4・5回ほど出港します。さらに1度出港したら、船に積んでいる放流カゴすべてがいっぱいになるまで、稚貝の入ったかごを引き上げ続けます。1、2回目の出港の時には元気だった乗組員たちも、最後の出港になると疲労で口数も減ってしまいます。

 他方、かく言う私は日頃から運動不足の大学生。稚貝放流に参加した初日は、必死の思いで食らいつきました。ただ、慣れない作業で日常では使わない筋肉を酷使したのだろうか。次の日にはしっかり背筋が筋肉痛になりました。

 しかし、漁は大変なことばかりではありません。漁に参加した初日は、人生で1、2位を争うほど疲れてしまいましたが、日を追うごとに作業になれて疲労感も少なくなっていきました。


船上から見たサロマ湖の朝日(5月22日午前4時8分 サロマ湖 撮影:野中直樹)

 また、美しいサロマ湖の景色を見ながら仕事をできる点も素晴らしいです。2回目の出港の時刻なると、晴れていればサロマ湖の水平線から太陽が昇ってきます。紅に染まる東の空とともに、朝焼けを良く反射する水面――。船上で潮風に吹かれながら見るこの光景が、私のお気に入りです。

サロマの稚貝は順調に成長 しかし手放しでは喜べない状況も…

 例年だと7月半ばごろから、採苗器に着いた生まれたばかりの稚貝を仮の育成箱に移します。しかし、暑さが厳しかった去年の7月。生まれたばかりの稚貝は暑さに非常に弱いので、「(この作業を半月遅れの)7月の終わりから8月にかけて行った」と田中さんは言います。

 そして私も参加した5月の稚貝放流の時期。この方策が奏功し、順調に成長した稚貝をオホーツク海に放流できました。


サロマ湖で1年間育ったホタテの稚貝

 ただ手放しでは喜べない状況も…。近年では同じ北海道の噴火湾では、ホタテのへい死が問題となっています。このため田中さんは「噴火湾の漁師がもらいに来たことがある」と言います。
 
 北海道のホタテに忍び寄る一抹の不安。気候変動が影響しているのでしょうか。


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