共同幻想論/吉本隆明/100分de名著
◾️かつおの要約
みんなの普通に合わせることで共同体の一部という自分の存在を維持しなければならないという考え方を、吉本さんは「その考えの源泉」から一歩立ち止まって考え直すことを大切にしている。
特にコロナ渦により人との関わりが分断され、マズローの5段階欲求の下から2番目「安全の欲求」または人によっては最下層の「生理的欲求」まで落ちてしまった。
ただ今の時代、その状態は「個人幻想」ではなく、兄弟姉妹や身内による「対幻想」を維持することはできるし、そこから広がるwithコロナによる新たな価値観の「共同幻想」を持つことも出来ると思います。
自分を大切にし、家族との関わりを大切に、そして大衆との繋がりを持ちたいと思います。
◾️第1章 焼け跡から生まれた思想
時代を震撼させた名著
1966年雑誌文藝連載から刊行
究極の人間関係である国家を考えた
□いま読むべき意味
価値観や秩序が崩壊したいま、改めて考える
□国家とは何か?
共同の幻想である
長い年月の習慣や慣行で作られたもの
□3つのキーワード
1.個人幻想:自分一人で見る幻想
2.対幻想:男女などの二人で見る幻想
3.共同幻想:集団で見る幻想
◯関係の絶対性「人間の情況を決定するのは関係の絶対性だけである」
肯定的な意味:人間関係は大切
否定的な意味:人間関係は絶対的ひ自分を束縛するもの
他人との間で形成される価値観は「共同幻想」に過ぎないと強く意識せよ
◾️第2章 対幻想とは何か
□国家は対幻想から拡大する
「母系制の社会とは家族の対なる幻想が部落の共同幻想と同致している社会を意味するという確定的な定義」
□吉本の考えた国家の始まり
対幻想
↓国家の本質
エロス的関係(擬似性的関係)
□古事記の“国生み”
スサノオとアマテラスの兄弟姉妹の関係性→国生み
◯吉本にとっての国家
国家=非合理なもの
肯定も否定もその源泉を探す
◾️第3章 国家形成の物語
□罪の意識
スサノオ:日本初の罪(原罪)を犯した
「この原罪が農耕市民の集落的な社会の共同幻想と大和朝廷勢力に統一されたのちの部族的な社会の共同幻想の間に生まれた矛盾や軋轢に発祥したのは確からしく思われる」
スサノオ:原始農耕民族の象徴
アマテラス:大和朝廷の象徴
罪の意識
↓
刑法の成立
↓
国家の成立
◾️第4章 個人幻想とはなにか
「原理的に言えば、ある個体の自己幻想は、その個体が生活している社会の共同幻想に対して《逆立(抵抗)》するはずである」
□大衆の沈黙の言語的意味性
「私が考えている大衆の原型というものは、日常の生活を繰り返し、職業的生活の範囲でものを考え、そしてその範囲で物を解決していく、という風に思考するそういう存在を意味しています」
「大衆というものは沈黙の言語的意味性として存在し、それは国家の法的言語にいわば対峙しているというふうに考えます。
だから沈黙の意味性というものが差し出す一種の裂け目というものを了解できるか出来ないかということが、いわば啓蒙家というものと、思想家というものを本質的に分かつ分岐点です」
→裂け目とは自律への根拠
平凡を維持することは難しい
『大衆の原像』
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