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映画パンフレット感想#10 『ピーター・グリーナウェイ レトロスペクティヴ』

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感想

サイズはA5でやや小さめ、ページ数は表紙含め36ページ。4作品がラインナップされた特集上映のパンフレットにしてはボリュームが物足りないような印象も受けたが、読み終わってみると程よい満足感。各寄稿の内容が濃密なのと、上記公式ポストに示された寄稿以外にも複数の記事があるのとで、それらの情報が知的好奇心を満たしてくれたのだと思う。

「寄稿以外の複数の記事」とは、アリ・アスターやヨルゴス・ランティモスが過去のインタビューでグリーナウェイについて言及した箇所の抜粋(ほんの数行ではあるが)や、グリーナウェイ本人の『英国式庭園殺人事件』について語った言葉、各種トリビア記事など。いずれも、ミステリアスなグリーナウェイの世界をより深く味わうのに役立つ内容となっている。

前述のとおり、寄稿は全て読み応えがあって面白く、執筆者の腕もさることながら、やはりピーター・グリーナウェイとマイケル・ナイマンが創造する世界やイメージが強烈だからこそ引き出されたようにも感じられる。また、馬場敏裕氏の寄稿のおかげで、『ZOO』で動物の死骸が腐敗していくタイムラプスに重ねられるあの印象的な曲のタイトルを知ることができた。お裾分けとしてYouTube動画の引用を貼るので楽しんでほしい。それではお聴きください、マイケル・ナイマンで、「Angelfish Decay」。

ただ、やはり本音をいうと、もう少し記事が欲しかったのも事実。特に『プロスペローの本』について触れたテキストが皆無に近い。前衛的かつ膨大なイメージの洪水が自由な語り口で紡がれる同作だからこそ、思考を整理する補助として何らかの論考(感想でも)があると有り難かったと思う。とはいえ何でもかんでもパンフ頼みというスタンスも考えものではあるけれど……。

しかし4作分のパンフレットとして900円(税込)という値段は十分手頃。複数作品以上鑑賞した方は買って間違いなしの一冊だと思う。

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