映画パンフレット感想#1 『夜明けのすべて』
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感想
全国のシネコンで大々的に上映されるような実写邦画のパンフレットは久々に購入した。「キャストの写真集」的用途に応える大きいサイズのスチール写真や、巻末の公式グッズ紹介ページなどに懐かしさを覚えた。過去に読んだ同系統のパンフでは、写真だらけでテキストは少なく内容も当たり障りがない、中身が薄く不満を感じるものも少なくなかったが、本作のパンフはテキストの種類も量も豊富で、楽しんで読むことができた。
少し意外に感じたのが、主要キャストのコメント(インタビュー)が、「撮影スタッフや他のキャストとの思い出話」や「演じる時に心がけた点」など定番のものだけでなく、しっかり映画の内容に触れ、自分の解釈を語っていることだ。これは、松村北斗は監督の三宅唱と、上白石萌音が原作者の瀬尾まいこと、それぞれ対談する形をとっているからこそ熱が生まれているのだろう。密度のある良いインタビューだった。
また、本作のパンフで最も特徴的だと感じたのは、主要人物からちょい役まで、ほぼ全てのキャラクターの映画では描かれない詳細な設定が掲載されていることだ。これは、脚本を手がけた和田清人と三宅監督が脚本執筆時に制作したもののようで、どれも面白かった。特に私が本編鑑賞時に最も涙した渋川清彦の役については、その設定を読みながらまたもや感極まって泣いてしまった。必読。
その他にも、原作者の瀬尾まいこが語った「読者からの『あんないい会社は存在しない』という意見」について、そこから新たに得た発見の話や、劇中に登場する重要な装置(公式サイトで情報開示されてないため伏せる)にまつわる監修をされた方のインタビューなど、興味深く読んだ。
個人的に面白く感じたのは、スチール写真がデジタルで撮影されているため、16mmフィルムで撮られた本編とは質感が全く異なることだ。スチール写真はスチール写真で楽しめるし、スチール写真を眺めることで、16mmフィルムで撮られた映画の世界にまた浸りたくなる効果があった。
もう一度映画を観たくなる、良いパンフレットだった。