小島信夫を読んで考える

PINFUと野本泰地が小島信夫を読んで考えたこと

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小島信夫を読んで考える14(PINFU240928)

 伊藤比呂美が「詩や小説、文章で死についてたくさん書いてきた。宝箱を開けて、中の宝物を眺めるように書いてきた。でもパートナーの死に直面して(やりすごす中で)、今まで考えてきた死はファンタジーだったことがわかった」  ちょっと死について書きたいので書きます。  ぼくは父方の祖母の死を看取りました。生まれて初めて目の前で人が死んでいくところを見ました。  野本さんも目の前で誰かが亡くなるのを見たことがあるかもしれない。もしなかったとして、「俺は目の前で人が死んでいくところを見た

    • 小島信夫を読んで考える13(野本240904)

       文章が固い感じがした、というのは、おそらく、いや、確実に自分が死についてじゅうぶんに考えるだけの思考をもっていないからだろう。身近な人の死を体験していないわけでもない。わたしだっていつか死んでしまうし、それは確実に未来に訪れる。怖いとか、恐ろしいとか、そんな感覚がないといったら嘘になるけれど、物心がつきはじめたころに比べるとかなり薄くなってきている。自分が死んでからも世界は在り続ける。以前わたしの前からいなくなった人がこの世界からいなくなっているいまも、わたしはその人たちの

      • 小島信夫を読んで考える12(PINFU240813)

         野本さんの手紙が死の話からはじまっていて、どうしたんだろう、と思ったら俺がその前の手紙で死について書いていたところで終わってたから、あぁそうか、となりました。  以下、野本さんの手紙からの引用です。 「ここでも、現妻・京子との交流と彼女への妙な断言と並行して、前妻・陽子の挿話と新しい墓 地に彼女の骨を移すことという進展が同時に起きている。わたしは、ここに悲しみというか、さびしさというか、そういったものを感じはしない。凡庸な言い方になってしまうが、むしろ思い起こすことがひと

        • 小島信夫を読んで考える11(野本240804)

           死について考えるには、わたしの経験はまだ十分ではなくて、身近な人間や動物の死はこれまであったことはあったのだが、俗に言う悲しいとかさびしいだとか、そんな感情は生まれてこなかった。ただ、ああ、死んでしまったのだな、と感じているうちに、いろんな人が黒服で現れて、葬儀を進めたり、話したり、とにかくバタバタとしているうちに何もかもが終わっていて、淡々とした日常生活に戻っていく。日常のなかで、死んだものたちのことを不意に思い出す瞬間があって、今すぐにでも会えるような気がしてしまう。わ

        小島信夫を読んで考える14(PINFU240928)

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        • 小島信夫を読んで考える
          14本

        記事

          小島信夫を読んで考える10(PINFU240703)

           サウナは野本さんもよく行くって話はよくするけれど、俺はどう入ったらいいのかよくわからなくて、一緒に仕事をしている40代の女性はサウナが好きで、よく行くって話をしてて、サウナ用のメガネ、高熱でも歪んだりしないメガネを買って、「これで無敵」って言ってお互いに銭湯に行くのは好きだから、行くと翌日に、 「昨日行きましたよ」  なんて話をよくします。  僕がいつも行っている銭湯はちょっと前に改装してサウナが広くなったのと、種類が増えました。  きのう銭湯へ行きました。きのうもサウナに

          小島信夫を読んで考える10(PINFU240703)

          小島信夫を読んで考える⑨(野本240617)

           どうも先日はありがとうございました。私の掌編の感想までサンキューです。飲み会はわいがや系のお店でしたが安いわりに料理もがっつりおいしくてよかったですね。自分の後ろにいたおじいちゃんが酒を飲みたばこを吸いながら、何やらテレビか店員か全体かに向かって独り言を呟いているのが気になっていたけれど、ビールを飲み、つまみを食べながら、ピンフくんとあれやこれやたのしく話しているうちに、爺の存在をすっかり忘れてしまい、彼はいつの間にかいなくなっていました。自分が昼から飲むのは次の日に残さな

          小島信夫を読んで考える⑨(野本240617)

          小島信夫を読んで考える⑧(PINFU240604)

           ヤッホー。お手紙ありがとうございます。  先日は飲み会ありがとうございました。国分寺で昼すぎから飲み始めて、三時間か四時間くらい、そのあと帰って、二人とも翌日は仕事でしたけど、野本さんは、  休みの日は昼から早めに飲むと飲み終わるのも早いから次の日にお酒が残らないからいいよ  と言っていて、たしかもうすぐ30歳ですよね。「もうジジイじゃん笑」みたいな軽口を言ったかどうか、ぼくはあんまり翌日にお酒が残った感じはありませんが、毎日飲んでるからそれが通常になっちゃってるけど、ほん

          小島信夫を読んで考える⑧(PINFU240604)

          小島信夫を読んで考える⑦(野本240519)

           どうも。前回の手紙をいただいてから、少しだけ時間が経ってしまいました。何だかこの二週間くらい、常にスケジュールが埋まっていたのです。手紙が届いた日は、妻と義母といっしょに公園へピクニックに行っていました。昼から日向でキャンプ椅子に座ってだらだらとビールを飲み、おにぎりやサンドイッチを食べていたら、カラスが近づいてきて、まるでハトみたいに首を前後に動かして歩いているものだから、みんなで「不思議だね」「何だあの動き」とか言いながら、カラスの珍妙な動きを笑いながら見ていました。そ

          小島信夫を読んで考える⑦(野本240519)

          小島信夫を読んで考える⑥(PINFU240506)

           お手紙ありがとうございます。今いちばん言いたいことは、近いうちにまた飲みに行きましょう笑 国分寺で作戦会議したのが一月末だから四ヶ月ぐらい? けっこう経ったな、って思います。  保坂和志がなにかの小説を読んで、たしかベケットか小島信夫、夜中に読んでいたら外に走り出したくなった、とどこかに書いていました。ぼくは一度それになったことがあって、『各務原・名古屋・国立』の「国立」だったと思います。文庫本の冒頭の二〇ページくらいを読んでそうなりました。じっさいには走り出さなかったので

          小島信夫を読んで考える⑥(PINFU240506)

          小島信夫を読んで考える⑤(野本240411)

           わたしは怒られてばかりでした。前回の手紙で話題にした、高校生のころ、ベースを無許可で購入したらどつかれただけでなく、そのようなことが多すぎて「怒られた」という記憶の総体でしかなくなっている。公文式の宿題をサボっては怒られ、家で自分が出ているバスケの試合のビデオを見ては、過去のミスした自分に対して怒られ……両親だけでなく、バスケ部のコーチからも怒られの対象でした。チームメイトがミスしてもさほど気にもとめないのに、わたしが同じミスをすると練習を中断してまで、怒られる。わたしは過

          小島信夫を読んで考える⑤(野本240411)

          小島信夫を読んで考える④(PINFU240328)

           お手紙ありがとうございます。暖かくなったり寒くなったり野本さんはいかがお過ごしでしょうか。  年度末でどこも忙しいとは思いますが、ぼくは寒がりなので、ニュースで「きょうはあたたかいですね」と言われてもあんまりあたたかさは感じません。夏の季節の映画を観てキャラクターたちが半袖を着ているのを見ると、信じられないような気がします。  野本さんもベースをやられていたんですね! 野本さんは背が高いので舞台でものすごく栄えるだろうなと思いました。手紙に書いてくれたストレイテナーとかth

          小島信夫を読んで考える④(PINFU240328)

          小島信夫を読んで考える③(野本240317)

           ピンフくんもベースを持っているなんて驚きました。というのも、わたしも高校生のころ、クラスの同級生とバンド(文化祭に出るため)を組んでいて、本当はギターを弾きたかったのですが、まわりはすでにギターを弾けるやつばかりだったので、消去法的にベース担当になりました。消去法的に、とは言いましたが、ベーシストは好きで、亀田誠治はもちろん、ストレイテナーの日向さんやthe band apartの原さんなどの演奏をへたくそなりにマネしようとがんばっていました。当時、バスケ部に入っていて、ま

          小島信夫を読んで考える③(野本240317)

          小島信夫を読んで考える②(PINFU240224)

           野本さん、お手紙ありがとうございます。メールも手紙もまったく書かないし、日記や小説は書くけれど、どれも誰かにむけてというより、いつも宛先なく書いているのでヘンな感じです。なかなか筆が進みません。緊張感があります。  改めて、お誘いを快く引きうけてくれてありがとうございます。はじめて野本さんと会ったのは(なんか他人行儀な書き出しですね笑)去年七月の、保坂和志の小説的思考塾で、山下澄人さんがゲストの会でした。ぼくも、どうして懇親会の席で小島信夫の話になったのか覚えていません。「

          小島信夫を読んで考える②(PINFU240224)

          小島信夫を読んで考える①(野本240217)

           ピンフくんから、「野本さんへ、『残光』で本を一緒に作るのはどうでしょう。」とお誘いがあったのが今年の一月で、その月末に国分寺で待ち合わせをしてデニーズで駄弁り、二軒目の焼き鳥屋で飲み会を開いてから、あっという間に二週間ちょい経ちました。よっしゃいっちょやったりますか! と意気込んだのはいいものの、まったく進んでいなかったのは、冷蔵庫を買い替えていたり、東京に遊びに来た家族を接待していたり、寄り道で他の本を読んだらそっちに夢中になったりしていて、『残光』を読み返す機会を逃して

          小島信夫を読んで考える①(野本240217)