幸せの連鎖
こどもは嫌いだった。
騒がしくて、理不尽で、話が通じない。
自分の人生に不必要な存在。
でも、独りの人生を虚しく感じていたとき、
「こどもがいる人生もいいかもしれない」とふと魔が差した。
パートナーと旅に出た、古いビジネスホテルでの夜だった。
旅の魔物に取り込まれたのかもしれない。
そして今、腕の中に新生児の息子がいる。
思っていた通り、四六時中騒がしく、理不尽で、話は通じない。
きちんと面倒はみている。
ただ、まだかわいいと思えないことが多い。
母乳とミルクを与え、
オムツを換え、
寝かしつける。
日々淡々と。
目の前の存在を育てる意義もまだ分からない。
最近、彼には表情が出てきた。
ミルクで満腹になった後の満足で幸せそうな表情。
つられて私も少しだけ幸せな気分になる。
彼をたくさん幸せにすることで、私も幸せになれるのだろうか?
彼の幸せが連鎖するといいな、と思いつつ、
今日も私は彼の幸せの源であるミルクを与える。至極機械的に。
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