海を望む柑橘の街 ~已己巳己~
「この街に住みたいな」
丘の上で一人呟いた。
背後には、宇和島城。
目の前には、キラキラ光る宇和海。
海沿いのその街はなぜか私のお気に入りで、幾度となく訪れている。
これだけ好きなのだから、移住するのもいいかもしれない。
愛媛は柑橘が有名だから、農業に関わったら楽しいかな?
美味しい宇和島鯛めしは日本酒に合うよね。漁業もアリかな?
じゃこ天はビールと最高のマリアージュ。
海を見ながらとりとめもなく考える。
でも、なんで私はこの街がそんなに好きなんだろう?
景色?風土?食べ物?
そしてふと気づく。
あ、ここ、あそこと一緒だ。
海辺の温暖な城下町。
魚の練り物と蜜柑が名産。
形は違うけれど、鯛めしも一緒。
自分が生まれ育った土地と似た場所を
移住検討の地に選んでいたことに驚き、ひとり笑う。
閉鎖的な田舎が嫌になって22歳で離れた地元。
今では実家もないけれど、たまには小田原も訪れてみようか。
移住を考えるのはその後でも遅くない。