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【ブラック企業入社編-4話】たった2つだけ

このブログは、とんでもない田舎に生を受けた人見知りの少年が、やがてコミュ力お化けになり年収3,000万超えを果たす迄の軌跡である。
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いよいよ勤務開始日。
青年は配属先である都内の事務所へと向かっていた。

座学は完了していた。
いよいよ仕事が始まるんだ。
青年は高揚感でいっぱいだった。
(同時に通勤ラッシュを味わい都会の洗礼も浴びていた。)

事務所に着くと、新品のテスクが用意されていた。
どこにでもある「ザ・事務用デスク」だ。

部長と新卒7人という構成。
同期は20人程いたはずだが、だいぶ減っていた。

部長からの挨拶と説明が終わり、いざ勤務開始。

本部のスタッフらしき人物がダンボールを抱えて入ってきた。
そして各個人のデスクに配布されたものは。

タウンページ
電話機

この2つだけだった。

「さぁ!仕事をしよう!」

部長の号令で業務開始。

そう、青年の仕事はテレアポだった。
(後に個別訪問をしてクロージングまで行う)

「”あ”から”わ”まで全部電話せぃ!」

相内さんから渡辺さん、その間にとんでもない数の名前がある。
青年は一先ず一番最初のページの”あ行”から電話を掛けた。

「あ、もしもし〜」
「ガチャッ!ツー…ツー…ツー…」

アポを取るどころか、もしもしの段階で切られるとは思ってもいなかった。
世のご家庭は営業電話に慣れていたのだ。

青年は何とか話だけでも聞いてもらわねばと、声色を変えたりあの手この手を使った。
掛け続けると、暇だったからただ話を聞いただけの人や、22歳の男と分かると家に招きたがる人、買い物に行くから荷物を運ぶのを手伝って欲しい人など様々だった。
(今でも印象に残っているのは、「結構結構コケッコー!」と言って断ったおじいさん)

全然アポが取れない!

そんな日々が続いていった。
それから一か月ほど経ち、青年は初めてアポを獲得する。

アポが取れると先輩社員がアポ先へ訪問し契約をまとめてくるシステムだった。
青年はどんな人がアポを受けてくれたのか気になり、先輩へ同行した。

品の良いご夫婦が丁寧に出迎えてくれ、すんなり契約となった。

「オレも自分で契約を取りたい!」

そう思った青年はバシバシアポを取り、すぐに訪問営業をする様になった。
ここからとんでもない経験を積み重ねることとなる。

【トンデモ体験-1】
ある晴れた日、訪問先へ定時に到着しインターホンを押す。
しかし、家主は出てこない。
「おかしいな?」と思い何度かインターホンを押していると、急に雨が降ってきた。
「めちゃくちゃ晴れてるのにな?」
不思議に思い空を見上げると、2階のベランダから笑顔の主婦が青年に向かってジョウロで雨を降らせていた。

【トンデモ体験-2】
老夫婦のお宅へ訪問。
玄関でお婆さんと話していると、突如頭部に何かがぶつかった。
振り返ると、デッキブラシを握り締め興奮状態のお爺さんが青年を睨みつけながら立っていた。
「出ていけ…出ていけぇーーー!!」
お爺さんの振り回すデッキブラシを
避けながら青年はダッシュでその場を後にした。

【トンデモ体験-3】
二世帯住宅へ訪問。
お爺さんと玄関で話していると、車の音がした。
息子と思われるどう見てもイカついゴリゴリの男性が降りてきた。
「テメェ何の押し売りだこの野郎!!」
これはいけないと思った青年は逃走。
息子はパジェロに乗り、クラクションを鳴らしながら青年を追いかけてきた。
「これ絶対轢かれるやつじゃん!」
陸上部だった青年は路地を駆使しながら何とか逃げ切った。

【トンデモ体験-4】
アポの段階で「怪しかったら警察でも何でも呼んでもらって構わないです!」と伝えていた青年。
いざお宅へ訪問すると、待ち構えていたのは警察官。
「お巡りさん!この人です!」
そのセリフを本当に聞くことになるとは思ってもいなかった。
(パトカーで警察署に行きました。)

【トンデモ体験-5】
「ぜひご近所さんもお誘いください!」と伝えていた青年。
いざ訪問すると笑顔のマダムたちが待っていた。
宗教のパンフレットと共に。
あの手この手で入信させようとしてくるマダムたち。
首を縦に振らない青年。
しびれを切らし「あなたは神を信じないというの!?」とヒステリーを起こすマダム。
「いえ!僕が神です!」
咄嗟に訳の分からない言葉を叫ぶ青年。
するとすぐに解放された。
(あれは何だったのか)

【トンデモ体験-6】
訪問先は所謂豪邸だった。
出てきたのは気の強そうなカジュアルスポーティ奥様。
お茶を出され、しばし2人で雑談が始まった。
奥様はテーブルに肘をつき、足を組み、アゴを手に乗せながら身を乗り出して青年の話を聞いている。
しかしどこかちゃんと聞いてくれている気配は無い。
「お兄ちゃん営業回りで汗かいたでしょ、お風呂入っていきなよ」
突然謎の提案をする奥様。
戸惑いながら、確かにお風呂は有難いと思いシャワーを浴びる青年。
リビングに戻ると、マダムはセクシーな服に着替えていた。
「次のアポ無いんでしょ?」
青年はその日大人になった。

【トンデモ体験-7】
お婆さん一人暮らしのお宅へ訪問。
顧客にはなり得ないのでお話だけして帰ろうとする青年。
「せっかくだからご飯食べてって!」
台所へ向かうお婆さんの背中を見て、青年は断れなかった。
一緒に食事をしながら世間話を楽しんだ。
それからというもの、週に数回お婆さんから電話が来るようになった。
「今日はお寿司を食べましょう」
「今日は焼肉にしましょうね」
青年はすっかりお婆さんのメシ友になっていた。
(異動を伝えた時のお婆さんはとても悲しそうだった)

【トンデモ体験-8】
小さな子供が2人いるご家庭に訪問。
商談中にいちいち子供が乱入してくる。
一旦子供を大人しくさせようと子供達の誘いに乗り一緒に遊んだ青年。
「うちの子が人に懐くなんて珍しいわ!!」
「え?」
それからというもの、奥様がお出かけする時は子供達の面倒を見ることになった。
(奥様は靴下を買ってきてくれたり優しかった)

他にも女子高生に言い寄られたり、お寺の池にダイブして和尚さんに怒られつつ仲良くなったり色々なことがあった。

そんなこんなで青年は結果を出し、入社3ヶ月で新事業所の立ち上げメンバーとなり、副所長に任命された。
3ヶ月後、更にとんでもない出来事が起きる。
(続く)

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