乃木坂46「他の星から」-アイドルに紀の善のあんみつと歌わせる秋元康
乃木坂46の楽曲はかわいさだけでなく
儚さや切なさを感じる。
その儚さ切なさは秋元康マジックにかかることで
印象的な比喩や固有名詞となり、
聞き手に実感を伴って届く。
今日ここで書きたい乃木坂46の楽曲は
「他の星から」だ。
冒頭で抜粋した数行の歌詞だけでも、ポイントが多くある。
①「紀の善のあんみつ」
何よりも注目したいのは、紀の善のあんみつという、一度聞いたら忘れられないパワーワードだ。
紀の善とは、神楽坂にある甘味処。
ただのあんみつではなく、紀の善という指定をすることで、この曲の主人公の人物像が見えてくる。
主人公にとってはこのあんみつがご褒美なのだろうし、世の中には同じようにこのあんみつをご褒美にしている人がいるに違いない、と思わせる普遍性を内包している。
紀の善のあんみつを歌詞に仕立てあげる秋元康の才能には平伏すしかない。
個人的な意見だが、秋元康と川谷絵音は天才だと思う。
②それ以上の贅沢は望まない
前述した紀の善のあんみつさえ食べられれば、それ以上の贅沢は望まない。と続くこの曲。
日々意識していたいのに、気付くと忘れてしまう「足るを知る」のマインドに、不意を突かれてはっとする。
さらにここで「紀の善のあんみつ」の、ケーキでもステーキでもない「程よいご褒美感」が効いてくる。
いつもの日常に、たまに少しのご褒美があるくらいで幸せなのだ。
ないものねだりになりがちだが、この曲を聴くと毎回反省する。
③この歌詞をアイドルに歌わせる
そもそも、この曲を乃木坂46という綺麗で上品なイメージのアイドルが歌っているというところも魅力なのだ。
キラキラしたアイドルが、足るを知り、一種の諦念まで感じられるような歌詞を歌うとギャップにはまってしまう。
ここまで読んでくださった方はぜひ、曲を聴いてみてほしい。
曲の良さはもちろん、メンバービジュアルも言わずもがな約束されている。
乃木坂46の楽曲は他の星から意外にも、印象的な言葉で紡がれた楽曲が数多くある。
歌詞の考察とまではいかないが、その魅力を今後も綴っていきたいと思う。