キャンプに行きたくない
どちらかというとインドア派なわたしは、いつも家にいたがった。それは幼少期から変わらない。
実家が超絶アウトドア派だったにもかかわらず、つねにウォークマンと自宅の枕を遠出には持参し、あるときは羽布団を持っていこうとして「いいかげんにしなさい。」と親にたしなめられた。
とにかく外泊だろうが車中泊だろうがなるべく自宅の自分のスペースを再現するような子供だった。
しばらく経って結婚した男は、とんでもないアウトドア派だった。
夫は大型連休が近くなると(といっても数ヶ月前とかの話である)キャンプ場探しに熱中する。
本当に申し訳ないと思ってはいるが、わたしはいつも話半分で「おお。」とか「へえ。」といった具合で生返事をしている。
もちろん行ってしまえば楽しいのだが、なにせとんでもないインドア派なものだから事前準備にも余念がない夫を見ていると、
「はて、家出でもするのかな?」
と思わずにはいられない。
わたしの準備などせいぜいNetflixから面白そうな動画をダウンロードして、3日分の洋服と自宅の枕をを前日になってようやくカバンに詰め込むぐらいのものなのだ。
だが、わたしはキャンプ中にその動画を見たことは未だかつて一度もない。行きの道中に助手席で眠りこけたこともなければ、まして自宅に帰りたいと思ったこともなかった。
どうやらわたしは根っからのインドア派でありながら、夫の策略にまんまとハマり、キャンプを楽しんでしまっている。
ダウンロードした動画の代わりに、持参した食材で何を作ることができるか思案し、2日半のメニューを組み立て、目的地付近のレジャー施設やスーパーなんかを検索してしまう。
ある時は友達を連れて、ある時は家族だけで、あるときはフェスと抱き合わせで、わたしはどこへでも行く。
電源がないオートキャンプ場もなんてことはない。
携帯電話の電池が切れても構わない。
暴風雨に襲われようとも、テントとタープがあれば余裕だ。
冷蔵庫なんかなくたって、保冷剤と食品の詰め方次第でどうにでもなる。
焚き火を見ればマシュマロを炙りたくなる。
そして今私はsnow peakのテントが欲しい。
自分の適応力が高いのか、夫の巻き込み力が高いのか、もはや全くわからないが、それでも楽しいと思ってしまうキャンプは怖い。
きっとこれから先もずっと、いやだいやだと言いながらキャンプに駆り出され、光の速さでテントを設営し、キャンプ飯に精を出し、焚き火でマシュマロを炙る連休は続くことだろう。
嗚呼、キャンプなんか大嫌いだ。