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奇妙な習性

酒に酔うと笑い上戸になったり、逆にこの世の終わりみたいに泣き出す人を何人も見てきた。
そして翌日には意図しているのかいないのか、綺麗さっぱりその記憶は彼らの脳内から消えているのである。

私は一児の母であるが、月に何度かは夫に息子を託して飲み会に参加する。
仕事の付き合いだったり、古い交友関係だったり、女子会だったり、サッカー鑑賞会だったり。会合の目的は様々だが、とにかく色んな友人と飲みに出かける。夫よ、ありがとう。

さて、かつて私にも酒に酔って泣いたり怒ったり記憶をすっかり無くしてしまった、というような失敗談は山ほどある。
だが今はすこし趣の違う酒の酔い方をするようになった。

ケタケタと妖怪のように笑いながら地面の写真を撮っているらしい。

ちなみに全然覚えていない。

飲み会の翌日、携帯電話のフォルダを開けば、ポツポツとよくわからない写真が並んでいるのだ。

そのうちのいくつかを紹介しようと思う。

これはたぶん銀座のおでん屋だ。
おそらく天井だと思う。
よくわからないが、前職の友人と飲んだときだ。

これはたぶん、京橋だ。
友人と2次会の店に移動するときに撮ったと思うが、よく覚えていない。

これはだいぶ前なので場所すらよく覚えていない。しかし地面を撮影しているので、たぶん酔っ払っている。

たぶん大崎。

恵比寿の飲み屋の壁。
たぶん。

鎌倉観光して昼からワイン飲んだときのやつ。

全然わからん。
どこかしらの都内だとは思うが。

恵比寿駅のホーム。
これはかろうじて記憶がある。
「ハト」に大爆笑していたので。

たぶん麻布。

こんな具合で、私は酔っ払うと地面を一生懸命写真に収めようとする。
なぜかは分からない。
だが、きっと楽しかったのだと思う。

こんな私と飲んでくれる友人がいる事を、私は本当に嬉しく思っている。

#コラム #エッセイ #悪癖 #酒 #二日酔い

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