見出し画像

2020神戸大学 国語 第一問 解答速報

出典は西郷信綱『日本古代文学史』の序章。

関連 2017京大国語/第二問/西郷信綱『古事記注釈』↓
https://note.com/pinkmoon721/n/n219de3d71466

問一「その作られた時代とともに滅びず、現代人に対話をよびかけてくる潜勢力をもったもののみが古典である」とあるが、どういうことか。80字以内で説明しなさい。

〈GV解答例〉
古典とは、その時々の読者の選択と解釈に晒されながら長い時代を読み継がれ、現代人にも文学として訴えかけ、時代の欲求に適う新側面を発見されるような作品だということ。(80)

〈参考 S台解答例〉
文学における古典とは、時代を越えて読まれ続け、過去とは異なる文学経験と文学概念を持つ現代人が享受したいと思う新しい機能や要素が潜在する作品だけであるということ。(80)

〈参考 K塾解答例〉
古典は過去の時代固有の本領を持つだけでなく、各時代の文学において失われたがゆえに必要とされる何かを、文学を更新するための規範性として潜在させているということ。(79)

〈参考 Yゼミ解答例〉
古い作品であればよいというわけではなく、文学経験や概念が異なる過去の作品でありながらも、現代に訴えかける魅力をたたえた作品こそが古典と言いうるものだということ。(80)

問二「その点、日本の古代文学史をどのように記述するかは、一つの実験的な意味をもつであろう」とあるが、それはなぜか。著者の考えを80字以内で説明しなさい。

〈GV解答例〉
日本は、古典文明を有する大国の周辺に位置しながら古代からの自国固有の文学的連続性を保った稀有の例であり、古代の文学が近代に与える影響を探る試金石となりうるから。(80)

〈参考 S台解答例〉
文化の中断もなく民族としての同質性が保たれた日本の文学は、他民族にない独特の連続性をもつので、日本の古代文学史の記述は、今までにない文学史の試みになりうるから。(80)

〈参考 K塾解答例〉
異民族の侵略もなく同質性を保ってきた日本が、自国の古代文学と強い因縁を結んでいることは、古典的古代文明を有する大国の周辺国にあっては、稀有だと考えられるから。(79)

〈参考 Yゼミ解答例〉
日本の古代文学史を、文学史と民族史の連続性という日本独自の視点で描き、自文化への影響を考察することは、古代文明との連続性をもてない諸民族にはできないことだから。(80)

問三「将棋盤の上で碁をうつような仕儀」とあるが、どういうことか。80字以内で説明しなさい。

〈GV解答例〉
文学ジャンルは、変遷する歴史の上で変化の幅を孕みながらも各自が背反する固有の機能をもつ形式であるので、ある形式を別形式の手法で理解することはできないということ。(80)

〈参考 S台解答例〉
特定の作品をその形態を無視して読むことは、歴史の内部で働き歴史と共に動く文学の各ジャンルが、固有の機能を持つことを看過し、差異を混同する方法であるということ。(79)

〈参考 K塾解答例〉
文学のジャンルは各時代の社会変化と連動するだけでなく、それ自体が固有の機能や価値を有しているのに、そのことを等閑視し個々のジャンルを無分別に混淆してしまうこと。(80)

〈参考 Yゼミ解答例〉
時代の中で存在し、独自の機能をもつ文学ジャンルを混淆することは、将棋と碁という全く違うゲームを見た目の類似性だけで混同するのと同じく、馬鹿げたことだということ。(80)

問四「古代文学史を個々の作品のよせ集めとしてではなく全体として理解する」とあるが、どういうことか。古典と文学史に関する著者の考え方を踏まえた上で、160字以内で説明しなさい。

〈GV解答例〉
過去と現代に同時に属する古典を複雑に入りくんだ歴史的人間活動として捉えるのが文学史の役目だから、古代の作品を場当たり的に理解し集積するのではなく、歴史を俯瞰する一定の視点をもち、時代に伴う変化幅を見込んだ上で作品をジャンルに分け、各々が発生する過程と意味、相互のつながりや拮抗関係を体系的に理解する必要があるということ。(160)

〈参考 S台解答例〉
文学史は、過去と現在に同時に属する古典を、複雑に入り組んだ歴史的人間活動ととらえる役目を担う。それゆえ、古代文学史も、静的に形態分類された多様な作品群ではなく、諸ジャンルが異なる時期に発生する過程と意味、また諸ジャンル相互のつながりや拮抗関係を、歴史と不可分な動的展開の軌跡として一貫的に理解するべきだということ。(157)

〈参考 K塾解答例〉
過去に属するものとしてあるだけでなく、それが喚起する規範性によって後の時代の現実にも関わってくる古典を、歴史における不断の変遷や複雑に入り組んだ人間活動との関わりにおいてとらえようとする文学史は、古代文学の作品を、異なる機能を持つジャンル間の移り変わりやそれらの関係性に着目して、集合的に理解しようとするということ。(158)

〈参考 Yゼミ解答例〉
異なる時代でも魅力を再発見できる古典を、複雑に入り組んだ歴史的活動としてとらえるのが文学史である。したがって、古代文学史においては、作品を時系列で羅列するだけでなく、社会背景と関連する文学ジャンルでとらえ、諸ジャンルが異なる時期に発生する過程や、拮抗関係などを一貫して見てとることが、困難ではあるが重要であるということ。(160)

問五 (漢字)

(a)次第 (b)時勢 (c)憧憬 (d)便乗 (e)消息

#神戸大学 #国語 #西郷信綱 #日本古代文学史

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?