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2022九大国語/第二問/解答速報

【2022九大国語/第二問/解答速報】

出典は川田順造『曠野から アフリカで考える』。

問1「こうした方向への、人間の思いつめた突進」(傍線部A)とあるが、その前にある様々な具体例を通じて、著者はどのようなことを言おうとしているのか、説明しなさい。(3行)

〈GV解答例〉
肥大化した生存欲求を貫徹しようと人間が自然にいどんだ結果、自然の摂理が毀損され、自らの生存の物質的・倫理的基盤が失われたディストピアを招くということ。(75)

〈参考 S台解答例〉
人間が自らの欲求に荒々しい自然を従わせるような、欲求の一部を絶対化し肥大させた合理主義と結びつき、自然の秩序から逸脱した状況を引き起こしたこと。(72)

〈参考 K塾解答例〉
人間が自然に対していどみ、人間の欲求に自然を従わせようとする際限のない努力が、かえって自然や人間の本質を失わせてしまうということ。(65)


問2「私は、単純な自然、原始賛美の論には、どうしても与することができない」(傍線部B)とあるが、なぜ著者はこのように考えるのか、説明しなさい。(3行)

〈GV解答例〉
荒々しい自然に対して人間が極めて受動的にしか生きない場合の悲惨な帰結を、サヴァンナに生きる人々の生活を身近に観察した体験をへて著者は痛感しているから。(75)

〈参考 S台解答例〉
単純な自然・原始賛美論は、人間が自然を制御するのに成功したあとで問題になるものであり、自然に従属したままの人間はみじめさで腹立たしいのでしかないから。(75)

〈参考 K塾解答例〉
サヴァンナに生きる人々の生活は、荒々しい自然に対して人間がきわめて受動的にしか生きられないときに生じる人間の悲惨さを著者に見せつけるから。(69)


問3「人間の「自然状態」」(傍線部C)とあるが、著者は、これがどのようなものであるべきだと考えているか、説明しなさい。(3行)

〈GV解答例〉
自然の一部でありつつ自然を対象化する意志をもった人間が、悲惨な試行錯誤を重ねながら、個人または社会全体としての叡知を尽くして自然の理法に帰一した状態。(75)

〈参考 S台解答例〉
無気力に自然に従属した状態ではなく、既成の手本としてあるものでもなく、「人工的」にみずからの意志で自然の理法にあらためて帰一する試行錯誤を重ねるべきもの。(77)

〈参考 K塾解答例〉
自然を対象化する意志によって、悲惨な試行錯誤をかさねながら、個人や社会が、自然の理法に帰一しながら、叡知を尽くしてつくりだすべきもの。(67)


問4「この難問」(傍線部D)とあるが、どのようなことか、具体的に説明しなさい。(5行)

〈GV解答例〉
半世紀余りのフランスの植民地支配により在来の生活様式や技術、固有の思考や感性が奪われ、近隣諸国との対立も抱え、現在も多大な傷跡を残すサヴァンナの国で、どのように生活の基盤を回復させ、経済的な安定性と文化的な自尊心との両立を図るかという解決困難な課題。(125)

〈参考 S台解答例〉
半世紀あまり続いたフランスの植民地支配により、過酷な生活を余儀なくされた二十世紀後半のアフリカ社会に対する外部の者の視点からの理想の変革論は、現実の政治情勢や、あらゆる面で形をかえて存続しているフランスの桎梏のために、簡単には実現しそうもないということ。(127)

〈参考 K塾解答例〉
半世紀あまりのフランスの植民地支配により、人的資源として村人が狩り出され、安物の商品と貨幣経済が流し込まれ、フランス語の義務教育によってフランスに隷従するように思考や感性を根底から作り変えられてきた状況をどうすればいいのかという、解決困難な問い。(123)


問5「私の学んだ人類学の知識と、私がよそ者であるというとりえを活かし」(傍線部E)とあるが、「とりえ」というのは具体的にどのようなことか、説明しなさい。(3行)

〈GV解答例〉
現地の政治情勢や今も残る植民地時代の桎梏のような現実の利害関係から離れた立場で、人類学の知識に基づく理論的に妥当性の高い施策を積極的に提案できること。(75)

〈参考 S台解答例〉
在来の生活様式や技術に関する人類学的知見や外来者の視点に立ち、土地の人が持つ知識や経験の深い意味を学び、それを成熟させる媒介となることができるということ。(77)

〈参考 K塾解答例〉
土地の人たちの伝承を集めたり社会制度や習俗を比較しながら探ったりして、土地の人の知識や経験の深い意味を学び、それを成熟させる契機となるということ。(73)


問6「頭からさぶりとかぶるなまの感情」(傍線部F)とあるが、どのような感情か、具体的に説明しなさい。(4行)

〈GV解答例〉
学問的知識に基づく抽象的な思考ではなく、現地の人々とともに日常の生活を営む中で体験される、社会全体からするとささいな事柄であっても、当事者にとっては重大な、五感に直接訴えかけてくるような具体的な感情。(100)

〈参考 S台解答例〉
ヨーロッパの植民地支配に踏みにじられてきたアフリカの人々の生活を目の当たりにすることで生じ、人類学的な知見に基づく抽象的な思考に導かれた確信の脆弱さを思い知らされる、自分の心を激しく揺さぶる生々しい感情。(102)

〈参考 K塾解答例〉
知りあいの村人に頼まれて、この土地に多い髓膜炎で重体だった男の子の命を救うために、地元の病院まで、外来者の著者の小型トラックで彼を運んだときに抱いた、実生活の中で現実に村人の役に立っているという充足感。(101)

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