【猫まど日誌】#5 棚主の会計帳簿
ほんまるの会計帳簿を作ろう
前回の流れから、棚主の会計帳簿を作ろうと思い立った自分。
…正直、考えが甘かった。
ちょいちょいっと、簡単に出来ると思っていた。
が、最初っから躓いた。
主なお金の流れは下記の通り。
お金は全て、「ほんまる」を経由して行われる。
①棚主→ほんまる:月額費用、商品発注代の支払い(月次)
②客→ほんまる:代金の支払い(随時)
③ほんまる→棚主:売上の支払い(3カ月に1回)
主要なものはこの3点。
非常にシンプルでわかりやすいように思える…が、疑問が続々と湧いてきた。
本が売れてもすぐに現金が棚主に入ってくるわけではない。
ならばその売上時の勘定科目は何になるんだ?
棚主は棚という場所を借り、販売はスタッフが代行してくれている。
ならば月額費用は賃料なのか人件費なのか?
会計帳簿を見ればお金の流れがわかるが、それはつまりビジネスとしてのお金の仕組みを表している。
勘定科目とは仕組みを構築する一つの部品だ。
このチョイス次第ではビジネスとしての会計帳簿にならない、よくわからないただのお小遣い帳になってしまう。
だがシェア型書店の会計帳簿なんて仕事で扱ったこともなければ、会計の本に例題として載っているわけもない。
これは、思ったよりも難敵だぞ…。
勇んでExcelを開いた私だったが…何も書かずに閉じた。
まずは、本質を掴むべし。
初心に戻って、ほんまるの仕組みを確認することにした。
ここからは棚主の参考情報を残す意図も踏まえ、少し丁寧に、棚主になる為の申込から配本、売買まで、実際の動きも交えて書いていく。
但し自分が申し込んだ時の情報で書く為(2024年3月)、当時からは仕組みや内容が変わっている可能性があることをご了承いただきたい。
①棚主になろう
最初に行うことは申し込みである。
公式Xのトップページに張ってあるリンクから、申込フォームへいくことができる。
規定のフォームから、氏名や連絡先、希望する棚などの情報を入力する。
メールアドレスはほんまるとの連絡手段となり、手続き上の連絡だけではなく、本が売れた時や陳列が完了した時などに随時メールが送付される。また棚主用の専用ページにログインするときには、ログインIDとしても使用する。可能であれば、普段使い用ではなく、ほんまる用のメールアドレスを作っていた方が確認がしやすくなるだろう。
棚は第一希望から第五希望まで入力が可能で、棚の場所により月額費用は異なる。
どこにどんな棚があるのかは、ほんまるの公式HPで確認できる。
最新状態が見られるようになっているが、「空き」となっていても手続き中の棚であったり、棚主名が書かれていても、解約予定があったりする場合もある。
シェア型書店にとって棚の場所は何よりも大事な要素なので、最新情報が知りたい場合や、Sプランで探しているなど場所の希望がある場合は、事前にほんまるへ問い合わせてみるとよい。
希望する棚が空いていればスムーズに手続きは進み、約1週間で申込完了のメールが届く。
↓ (申込完了し、約1週間後)
だがこの時点では、まだ棚主となれたわけではない。
棚の場所は確定したが、初期費用の支払いが必要で、期日内に振込完了して、晴れて契約完了となるのだ。
ここで、初めてお金が動く。
初期費用として、入会金と2カ月分の月額費用の前払いである。
さぁ…困ったぞ!
棚主をスモールビジネスと捉えると、初期費用の支払いは契約前。
つまり、会社を立ち上げる前に発生するお金のやり取りである。
更に、元手がなければそのお金も払えないわけで、株主なんて当然いない棚主は、ポケットマネーから資本金を出す必要がある。
これを仕訳にすると、どうなるのか…。
まずは資本金。これは言い値だ。
一年間棚を契約し、新刊を仕入れるだけのお金を用意すると仮定しよう。
細かい計算はめんど…省いて、ドーンと10万円!!
お小遣いの前借りだと思えばなんとかなる!!←短絡思考
足りなくなった時は…どうにかなる!!←ダメなパターン
(…が、約1カ月後。棚をお引越しして、約倍近くの月額費用を払うことになるとは、この時の私は考えてすらいなかった)
次に初期費用。これは、入会金と月額費用を分けて考えよう。
入会金は棚主となる為に一度だけ支払う性質上、年会費などに用いる[支払手数料]とは異なる。おそらく使用頻度も高い、[諸会費]を使うのがベターだろう。
だが棚主になる為の費用と考えると、会社設立時にかかる費用とも捉えることが出来るのではないか。
実際に登記するわけではないが、今回は棚主をスモールビジネスと捉えた会計帳簿を作ることを目的としている。
よってここでは敢えて[創立費]を使うことにする。本来は登記する為の印紙代や手数料などに使われるので意味合いは異なるが、棚主になる為に必要な手数料として考える。
月額費用は二カ月分の料金で、いわゆる前払いになる。
通常の仕訳であれば、[短期前払金]勘定を用いて、該当月に費用勘定への振り替えを行うのが正しいのだろうか。
だが、会計帳簿を作ろうと思い立ったのは7月初旬。過去の月次処理をするなんてめんど…時間が勿体ない。結果は変わらないので、費用勘定として処理を行うことにする。
さて、なんの費用勘定を使おうか。
レンタルオフィス代などは、[賃借料]か[地代家賃]を使うのが一般的だ。
だが棚主の月額費用の場合、”場所代”だけではない。発注や陳列、請求処理まで一連の流れをスタッフさんが行ってくれるので、人件費という側面もあるのだ。
まるっと業務をお願いしているという点では業務委託ともいえるが…委託契約を行っているわけではない。陳列に限っては棚主が行うケースもあるので、ならばサービスの一部と捉えてもいいだろう。
仕訳として大事なのは、”何の目的で使用しているか”が明確になること。
今回の月額費用は”本を売る”という業務全体に関わる費用である為、【販管費】の中でも【一般管理費】に含まれるのが妥当だ。
よってここでは、[賃貸料]を使用することとする。摘要には何月分かを明記しておくと忘れないでよい。
これら初期費用を指定期日までに指定口座への振込が完了すれば、契約も無事完了だ。
なお、指定口座の銀行名をここに記載するのは控えるが、同じ銀行で口座を開設することをおすすめする。
他の銀行でもよいのだが、振込手数料がかからない、毎月の月額費用の振込が自動になるなどメリットしかない。(なお個人的にも、ここの銀行は便利で普段使いしている。昨今流行りのNISAをするにも、ここか〇天かぐらいにツートップの銀行なのでおすすめです。知りたい方はXのDMにでもご連絡ください。←回し者じゃありません笑)
②自分の棚をつくろう
ここからは、いよいよ棚作りとなる。
必要なタスクを、本の陳列を最優先に考えて並べてると下記の通り。
棚名を決める
マイページを登録する(ほんまるの棚主専用サイト)
マイページから出品本を登録する
出品本を郵送または搬入する(古書を出品する場合)
代本版のデザインを作る
口座登録を行う
代本版はデザインが未定でも本の販売は可能だし、月額費用は2カ月分前払いしているので、口座登録は十分に猶予がある。
新書を棚に並べたい場合は、マイページから出品本の登録をするだけで、すぐにでも棚主として動き出すことができるのだ。
古書の場合でもほんまるへ行くことが出来るのなら、出品本の登録後に本を持ち込んで、自分の棚に並べることができる。
文明の利器って素晴らしい。
ただ注意が必要なのは、新書を注文した場合、本によっては仕入れることが出来ないケースがある。絶版だったり、販路が確保できなかったりなど理由は様々だ。
また発注してから棚に並ぶまでは数日掛かるので、並べたい本は予めリスト化しておくとよいだろう。
マイページの登録や使い方、代本版デザインについても書きたいところだが…それだけで相当なボリュームになってしまうし本筋から外れてしまうので割愛する。
普段パソコンに慣れている人であればなんてことない作業だが…代本版デザインは難しかった。。
自身での作業が難しい人向けに、フォーマットも用意されている。
こちらでも十分に素敵なデザインになるので、苦手な方はフォーマットを利用して作成することをおすすめする。
こだわりたい方は、プロに頼むのも一つの手だろう。「ココナラ」などのサイトで、フリーランスのデザイナーに依頼することもできる。
その場合は棚主を始めるのに必要な経費と位置付けて、[開業費]として費用計上すればよい。
自分の場合は自作したのでデザイン費は不要だが、棚に置きたいブックエンドなどを購入し、名刺兼ショップカードの印刷を発注した。これらを[開業費]として計上する。
ここまでで、開業に必要な準備と仕訳は整った。
次からがいよいよ”本丸”。本の仕入と売上をみていこう。
③本を仕入れてみよう
新書と古書で大きな差異はないが、まずは新書を発注した場合を例とする。
棚に並べたい本は、マイページの【出品本 新規登録申請】画面から登録する。
登録後は受付メールが自動に届くが、ここで発注が完了したわけではない。
先にも述べたように仕入が出来ない事があり、その場合は申請が却下される。
問題なく発注が出来れば発注メールが届き、本が届けばほんまるのスタッフさんが本を受け取り、陳列まで行ってくれる。
陳列完了時にメールが届くので、このメールが届けば棚に本が並んだと知ることが出来る。
流れを書き出すと下記のようになる。
マイページより、出品本の新規登録
出品本の申請受付完了
ほんまるによる書籍発注
出品本の発注受付完了 ※仕入不可の場合は、申請が却下される
ほんまるに出品本の搬入
出品本の陳列完了
棚主としての作業は1のみで簡潔だが、これを仕訳にするとどうなるのか。
書き方は色々あるが、ここでは一番メジャーな方法を用いる。会計用語でいうところの「三分法」と「検収基準」だ。
難しいことはない。大事なのはたった二つ。
出品本の陳列時点で、棚主はお金を支払っていない
新書はほんまるスタッフによって陳列される
要は会計視点でみれば、あとでまとめて支払うお金が管理出来て、確実に本が並んでいる=仕入れが出来た事が明確になればいいのだ。
ネットショッピング時に、クレジットカードを使う時と同様。正しい請求内容か、きちんと不良品ではない品物が届いたかどうかが確認できればよい。
なお、新書は定価の80%で仕入れることができる。端数処理は実際の請求書から計算して確認したところ、小数点以下切り捨てとなっていたので、定価から計算することが可能だ。
これらを踏まえ、仕訳をしてみよう。
勘定科目は商品の仕入れになるので[仕入]、相手科目は即時現金を支払っているわけではないので、後からお金を払う必要性が生じる[買掛金]を使用する。
日付は、[検収基準]という入荷後に商品が検品された段階で仕入に計上する方法を用いるので、棚主が明確にそれを確認できる陳列完了の日とする。よって、【6.出品本の陳列完了】のメールが届いた日付を入力。
金額は定価の80%だ。(定価:1,870円⇒仕入値:1,496円)
出来上がった仕訳がこちら。(※日付はサンプル)
簿記の勉強をしたら絶対に目にする形だ。
少し時を飛んで、この代金を支払った場合は下記の仕訳となる。
ほんまるは月末締めなので、もし月に複数冊を仕入れたら、月初~月末までの仕入値の合算金額を一括で支払うことになる。
…と、ここでふと疑問が湧いた。
自分は検収基準として、陳列完了時点で仕訳を計上したが、ほんまる側としてはいつ時点で計上しているのだろうか?
もし【1.マイページより、出品本の新規登録】と【6.出品本の陳列完了】で月跨ぎが発生していたら?ほんまるが、前者で請求額の判断をしているとしたら?
こういった事態は、実際の会社間でもよく起こる。締め基準の違い問題。
場合によっては、相当にめんどうな消込処理をしなくてはいけなくなるんですよ…ええ、ええ…。(独り言)
マニュアルを見ても記載していないので、この基準は近いうちに問い合わせたい。
④本を売ってみよう
本が棚に並んだところで、あとはお迎えしてくださる時を待つばかり。
お客様が来てくるのか、棚を覗いてくれるのか、本を手に取ってくるのか…正直毎日ドキドキ。
常に棚を更新して新陳代謝していきたいと思いながらも、新刊は買い切り。返品は出来ない。
だから棚を動かすとしても、本が売れなければ新しい本を並べることも難しいのだ。
個人的には、ほんまるの来客層や、他の棚の売れ行き状況も知りたいところ。
年齢や性別以外にも、旅行客や外国人の方々が多いのかどうか。古書と新書どちらが売れ行きがよいのか。古書の値段設定はどれぐらいか。売れている新書は発刊が古いものか新しいものか。気になる情報が色々ある。
ほんまるの事務局さんにも問い合わせているが、ある程度時間が経たないと見えてこないものもあるだろう。
他の棚主さんにも伺ってみたい内容でもあるので、自分の棚の売れ行きはどうなのか、常に分析する視点を持っていたい。
今回の会計帳簿は、その為の事前情報でもある。
さてさて本題に戻り、ありがたくも本が売れたとしよう。
流れは下記のようになる。
顧客がほんまるにて本を購入
ほんまるに売上金が入金
棚主に購入メールが届く
棚主に売上金が入金(3カ月に1回)
売上に関して棚主の作業は何も発生しない。
ただ仕入と同様に、すぐにお金が動くわけではない。売上金はよりリードタイムが長く、3カ月後に一括入金される。
何故すぐ翌月入金ではないのか、と思われる方もいるだろうが、これは妥当な選択だと思える。
ほんまるは、本屋の復興を目指して立ち上げた書店だ。オーナーである今村先生には、今後全国に広げていきたいという野望もある。
ならば猶更、この判断に行き着くはずだ。
素人目線だが、そう考える理由は2つ。
まず一つ目はキャッシュフローの問題。本屋さんや取次でもよく話題に上がるが、手元に現金があるかないかは経営に大きく影響する。
お客様が現金で本を購入する場合は、1と2は同時となり、ほんまるはすぐに現金を手にすることが出来る。だがこのご時世、クレジットカードなどの電子決済が主流だ。そうなると、ほんまるにすぐ現金が入るわけではなく、早ければ翌月か、場合によっては2カ月後に入金されることもある。
ほんまるとしてはお金が入ってこないのに、棚主にお金を払ってしまえばキャッシュフローが滞る恐れがある。だから3カ月という幅を持たせて売上をきちんと現金として確保し、棚主にも入金するという流れを作ったのだと思われる。
次に、入金作業というものは非常に大変な作業で、事務処理の中でも特に煩雑で神経を使うものだ。入金先が多ければ多いほど、その負担も相当なものだろう。
事務処理などの裏方作業は減らすに限る。ただでさえ本の利益が少ないと言われているのだ。貴重な人件費を事務処理に使うのは勿体ないし、極力避けたいと思うのが当然だろう。
だから入金タイミングを一括にすることで少しでも作業量を減らす。そうした意図もあったのではないかと思われる。
これは楽したいとかそういう話ではない。おそらくどこの本屋さんも抱えている裏方の悩みだ。売り場の仕事だけをやりたいのにそうはいかない書店員さん方の苦労。入金だけではなく、雑多な事務処理をいかに効率化するかは今後の大きな命題ではないかと思う。
閑話休題。
ここでも大切なことは、何に基づいて売上を計上するのか。
会計用語でいう[実現主義]に則り、収益を得る権利が確定した時点で計上する考えを採用する。
つまり、実際に商品の購入するやり取りがあった【1.顧客がほんまるにて本を購入】が売上計上日だ。
日付は購入時のメール受信日か、マイページの[売上確認一覧]画面からも確認可能なので、後から記帳するときもチェックしやすい。
勘定科目は[買掛金]の対ともいえる[売掛金]を用いる。
販売された時に売上を計上していくことで、売上推移もわかりやすくなるだろう。
出来上がった仕訳はこちら。(※日付はサンプル)
あとは入金時の仕訳…といきたいところだが、売上額がそのまま入金されるわけではない。
売上額からほんまる分の「販売手数料(5%)」が差し引かれた金額が、売上金として入金される。
売上から差し引かれる手数料の勘定科目は[支払手数料]かと思いきや、調べてみるとそうではないらしい。
[支払手数料]とは売上に直接関係しない経費に用いる勘定科目。振り込みにかかる手数料などに使用する。
一方でほんまるに支払う手数料は、販売を代行してもらっていることによる手数料となるので、売上に直接関係する。よって科目としては[販売促進費]が妥当だろうと考えた。
そうなると、当初は「月額費用」に販売代行分も含まれていると考えていたが、シンプルに場所代だけと考えて問題なさそうだ。
「月額費用」は棚代として[賃貸料]。
「販売手数料」は販売代行として[販売促進費]。
うん、シンプルでよき。
この販売手数料と、忘れてはいけない消費税。
仕訳をするにはこの2点を考慮する必要がある。
仮計上することも可能だが…めんど…いや、ちょいと難しい。
真面目な話、会計帳簿を作成したのが7月だったので、この時点ではまだ初回の売上入金が行われていなかった。販売手数料の計算方法がわからなかったのだ。
もちろん販売価格の5%であることは理解しているが、仕訳となるとこれだけでは到底情報が足りない。
3か月分の一括入金というが、果たして販売手数料は1件1件明細毎に掛かるのか、はたまた月毎の売上に対して計算されるのか、よもや3カ月分の売上で計算されるのではあるまいか?
また仕入と同様、締め問題も発生する。3カ月に一回の入金というが、その対象期間はいつからいつなのかもわからない。
[売上確認一覧]画面に消費税と販売手数料が表示されているが…恐らくこれは仮の値。表示されている売上一覧の数字を単純に合計して、割合を掛けているだけだろう。
(※画面上では販売手数料が77円となっているが、単純に5%を掛けた数値を積み上げないと77円にはならない。端数処理をせずに手数料を算出することは考えにくい。)
販売手数料の対象期間と小数点の扱いに関してわからない以上、入金の仕訳はまた後日考えることにする。(めんどいから確認しない…わけではない)
ここまでで、ざっと一連の動きを追うことができた。
仕訳をまとめると下記図のような形で、仕訳の数としては決して多くない。
あとは棚の動きに合わせて随時記帳をしていく流れとなるだろう。
そして最終的に黒字か赤字かは、決算書を作成することで明らかになる。
4月から6月末までの数値から、月次決算書という形で損益計算書と貸借対照表を作ってみた。
それについてはまた次回、実際にどのような棚の動きがあったかも交えて書いていきたい。
(※なお、桃は簿記の資格を持っているだけの素人です。色々調べて確認はしましたが、誤った解釈や仕訳があったら申し訳ございません。ご指摘頂けましたら幸いです。)