「ブシドー」を彩りを添えるさよつぐ


さりげないテキストに込められた含蓄に定評のあるバンドリ!ガールズバンドパーティ。
現在開催中のイベント「ため息は雨上がりの向こう」でもその手腕が遺憾なく発揮されていました。

今回の鍵は羽沢つぐみさんです。
彼女がイベントストーリー1話だけちょこっと顔を出したこと、そして何より紫陽花公園についてこなかったことによって、プレイヤーは若宮イヴさんのブシドーの本質を理解するのです。

武道の話なのに氷川紗夜さんが出てこない意味

今回のイベントは、剣道部顧問の先生からの問いかけをきっかけに「残心」について考えることで、若宮イヴさんが「ブシドー」への理解を深めるというストーリーです。

ところで、本作には「残心」の意味を熟知している人物がいます。
氷川紗夜さんです。
剣道と同じく弓道にも「残心」という所作があります。
日本弓道連盟ホームページによると「射の総決算。矢が離れた時の姿勢をしばらく保ちます。」とのことで、剣道における残心と近いものです。

射法について/日本弓道連盟ホームページ

彼女は弓道部所属で、相当の実力者です。
そんな彼女なら(まじめな性格も相まって)、すぐに残心の正確な定義を回答してくれることでしょう。

しかし本イベントに彼女は登場しません。
今回のストーリーでは、「残心」の正確な意味は求められていないからです。

顧問の先生の言うとおり、若宮イヴさんが自ら考えて、自分なりの「残心」を見出すことが今回のストーリーの骨子であって、必ずしも正確な定義でなくとも構わないのです。

そして彼女が見出した「残心」は、教科書的な定義とは異なります。
ここが一番重要なポイントです。
彼女にとっての「ブシドー」は、教科書的な「武士道」ではなく、あくまでも若宮オリジナルの「ブシドー」であることが、今回のストーリーで鮮やかに示しされたのです。

羽沢つぐみさんの役割


弓道にも「残心」があることを知っているプレイヤーなら、上記の文脈を自ら見出すことが可能です。
しかし、弓道を知らない人間にとって、ここまで察するのはきっと難しいでしょう。

そこで、誰もが氷川紗夜さんを連想できるようガイド役を果たしているのが、1話だけに顔を出す羽沢つぐみさんです。

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邪なオタク達は、この流れを見て、「つぐちゃん絶対この日の夜に紗夜さんにメッセージ送って残心の意味を尋ねてるでしょ」ってニチャアと微笑んでしまいます。
これが制作サイドの思惑であり、単にオタクに餌を与えるだけでなく、ストーリーに深みを持たせるギミックとしても機能させているのです。


そして彼女は、答え合わせ編である紫陽花公園には登場しません。
というか、登場してはいけません。
彼女がいると、氷川紗夜さんから教わった「残心」の正確な定義が露わになってしまい、若宮イヴさんが思考を巡らせるノイズになりかねません。というわけでお留守番です。


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