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2020/02/13 失敗するおもしろさ
先日、仕事で青山美智子「きまじめな卵焼き」(『木曜日にはココアを』宝島文庫 所収)という短篇を読んだ。概ね以下のような話。
主人公の朝美は、夫の輝也と息子の拓海と暮らすキャリアウーマン。家事と育児は輝也に任せ、一家の家計を支えている。
あるとき、輝也が描いた絵が評判になり作品展のために、彼は家をしばらく空けることになる。朝美は拓海と二人の暮らしの中で「ちゃんとしたお母さん」であろうとするけれど思い通りにいかない。息子のお弁当に好物の卵焼きを入れてやりたいのに、うまくできなくてボロボロの卵になってしまう。そのときかかってきた輝也からの電話を契機に、拓海と輝也の言葉に朝美は救われる。
黄緑色の皿にのったボロボロの卵を「菜の花畑みたいできれい」だと息子の拓海は、電話の向こうの父に話す。失敗だと思っているものを褒められて、朝美ははっとする。それでも、うまくできなければ炒り卵でもいいと言う輝也の言葉を受け入れられない朝美は取り乱す。「卵焼きも作れないダメなお母さん」は嫌だ、と。そんな朝美を輝也は諭し、卵焼き器を使うところから朝美に教える。輝也の助言を受けて、朝美は卵焼きを成功させる。
うまくできないことは確かにおもしろくないけれど、でも料理なんてそもそも最初は失敗するものだろう。しかし、朝美さんはそれを知らなかった。(話を読む限り、適切な道具を使うことは学んだけれど、たぶんこちらは知らないままだ。)
twitterでレシピを紹介している人は多く、参考にすべく何人かの人をフォローしている。その人たちへのリプライに「自分はその食材を食べられないのですが、代用できるものはありますか」「分量を変えても作れますか」「その調味料がないので、これを使ってもいいですか」という質問を投げかける人が結構多い。それを見るたび、試してみればいいのにと思う。
失敗にも色々種類はあれど、人の命と尊厳とを脅かすものでなければたいていのことは失敗してもなんとかなるのではないか。
料理はその最たるもので、失敗したら笑い飛ばせるし、「次はこうしてみよう」などど試行錯誤を楽しめる実験的な営みだ。しかし、件の朝美さんしかり、twitterでリプライを飛ばす人たちしかり、そうは思わない人が多いのかもしれない。料理の失敗は思いのほか嫌われているのかしら。
自分がたいして器用な人間ではない、むしろ不器用なほうだと知っているから、自分の失敗にも他者の失敗にも寛容でありたいと思う。失敗はその1回がうまくいかなかったということ、それ以上でもそれ以下でもないのだから。事によっては落ち込むこともあるかもしれないけれど、失敗と次善策をおもしろがれる強さは持っていたいものです。
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《2020/02/13 補記》
記事で紹介した青山美智子「きまじめな卵焼き」は、資料として読んだので、今手許に本があるわけではありません。だから、紹介の表現は引用ではないので悪しからず。ご関心あるかたは本を読んでみてください。
なお、青山美智子さんご本人のnoteはこちら。
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