TVCMの評価を事前確認する手法
「CM好感度調査」というものを、
地道に、コツコツと、何と40年近くも
積み重ねている企業がある。
CM総合研究所(正式社名は東京企画)
という会社だ。
私がTVCMに携わるようになって
から早や17、18年程経った。
当時から、このCM総研の存在は
認識しており、毎月毎月現れる
新CMのどれが人気かという
ランキングを見ながら、世の中の
トレンドを知るのに重宝していた。
しばらく遠ざかっていたのだが、
ここ最近はまたCM制作に関わる
ことが多く、CM総研の情報も時折
参考にする機会があるのだ。
そのCM総研から、「Mnavi」という
名前の興味深いサービスがリリース
されている。
流行りの「AI」を活用したもので、
「CM好感度AI」なるものを開発し、
まだ流していないCMをAIに事前に
見せて、好感度が高くなりそうか
どうかを評価するシステムである。
システムの詳しい説明は、上記の
ページに譲るが、かなりの低価格で
CMの内容を事前評価できるのは、
非常に魅力的である。
TVCMの制作には、多額のコストが
かかっている。
以前は、2千万円、3千万円は当然、
巨匠にお願いすると更に2倍、3倍
というのもザラだったはずだ。
今でこそ、デジタル化の進展や、
高額機材の価格がこなれてきたこと
もあるのだろう、質さえ問わなければ、
1千万円程でもそこそこのものが制作
できるようになり、条件次第では更に
安く上げることも可能である。
とはいえ、「安かろう、悪かろう」
では無駄遣いに終わるリスクもある
ので、それなりの質を担保するため
にも、コストをかけるべきところに
きっちりかける姿勢が大切。
となると、制作して実際にオンエア
した後に、視聴者から全くもって
評価されない事態というのは、
何としても避けねばならない。
そこで、以前よくやっていたのは、
CMを本制作する前に、仮のCMを
作って調査にかけ、狙った通りの
効果が得られるかを事前にチェック
するのである。
当然、仮CMを作るのにも、調査を
実施するのにも、それなりのお金が
必要となる。
10年以上前だが、当時4~500万円は
かけていたように記憶している。
それだけ投資しても、いいものを
作って流せた方が、トータルで見た
時に収益性が高まると判断していた
のである。
もしCM総研のAIが優秀で、当時の
調査に比べても引けを取らない
精度で、CM案の事前評価ができる
ならば、調査のための費用と手間が
大幅に節約され、その分を別の仕事
に回すことができる。
何とも素晴らしいソリューションで
ある。
他方で、最近ではCMの案を複数
安価に作ってしまい、それらを
「A/Bテスト」方式で競わせて、
ひたすら「勝ち抜き合戦」を繰り
返すという手法も出て来ている。
テレビを視聴する人がどんどん
減り、代わりにスマホを見る時間
ばかりがどんどん伸びていく今の
時代。
「CM」という言葉が、「TVCM」
ではなく、「Web CM」「Web動画」
を意味する時代が近付いてきている
ように思われる。
そんな時代にマッチするのは、
この「A/Bテスト勝ち抜き合戦」
方式だろう。
もちろん、この方式に、先のAIを
かませることもできる。
テクノロジーの発達は、あっという
間に過去の手法を陳腐化する。
常にアンテナを張って、破壊的な
イノベーションがやってこないか
注意すべきことを、改めて肝に
銘じておきたい。
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