「不便益」を考える
マーケティングに携わっている
人であれば、
「便益」
という言葉は必須ワードです。
「Benefit/ベネフィット」という
元の英語を使うことの方が、もはや
多いような気がしなくもないですが。
この「便益」という言葉は、
「便利」の「便」と、
「利益」の「益」とを組み合わせて、
モノやサービスを消費する方にとって
「何か良いこと」
「何か嬉しいこと」
を指す言葉です。
消費者としては、
便利であった方が良い、
利益になった方が良い、
そういう前提に立つのが常識だと
思いますが、
この「便益」に否定の「不」を付けた
「不便益」なる言葉があるのを
ご存知でしょうか?
京都先端科学大学の川上浩司教授が、
この「不便益」の第一人者。
その定義はどういうものかというと、
とあるのですが、これだとさすがに不親切
ですよね。
ブログにある、「不便益」とは何か?を
説明している箇所を私なりに定義として
手短にまとめてみたものが、こちらです。
なかなか興味深い概念だと思いませんか?
川上教授が、具体例として挙げているものに
「素数ものさし」があります。
「ものさし」本来の機能として求められる
「長さを測ること」において欠陥がある
わけですが、その不便さが、新たな便益
(ここでは、「色々な仮説をついつい考え
ついてしまう」という感じでしょうか)を
生んでいるわけです。
つい最近、フジフイルムの「チェキ」が
人気だという記事を目にしました。
その人気の理由というのが、なんと
「不便さの追求」ということで、
正に「不便益」の実例ど真ん中。
このINSTAX(チェキ)、世界100カ国展開、
年間販売台数1000万台を超えているそうで、
フジフイルム最大の稼ぎ頭へと成長したと
いうから驚きです。
2021年に発売した高機能機種では、
プリント操作を「ボタン」ではなく、
あえて「レバー」にしたそう。
「カチャカチャ」という音や手触り感を
楽しみながらプリントできる仕様が、
顧客の心をつかんでいるのだとか。
とは、同社INSTAX統括マネージャーの
高井隆一郎氏による弁。
不完全さを「味わい」と解釈してくれる
顧客は、正に「不便益」を堪能している
のです。
自分たちの商品やサービスに、少し
足りない点、至らない点があっても、
そこから何か「不便益」が得られは
しないかを考えてみると、思わぬ
突破口が開けるかもしれませんね。