お客様のくくり方
先週末は、毎月1回のペースで実施
しているマーケティングセミナーで
あった。
今回のテーマは、事業者の側が
マーケティング戦略を立てる上で
基礎となる部分。
俗に「STP」と呼ばれるもの。
どんな事業をやるにせよ、
ヒト、モノ、カネ、時間といった
我々が使える資源は有限。
だから、あまりに大雑把に市場を
把握するのではなく、ある程度
切り分けておいて、どの市場を有望
と捉えて攻めていくのか考える。
それが「S」の「Segmentation」。
そうやって切り分けた市場で
お買い物をしてくれそうなお客様を
明らかにし、そのお客様に狙いを
絞っていく。
それが「T」の「Targeting」。
最後の「P」は今日は省略させて
もらうが、「Positioning」の略だ。
3つのうち、恐らく「T」が一般の方に
最もなじみがある概念だと思われる。
「T」とは要するに、どんなお客様を
相手にするか、狙いを定めること。
「Targeting」「ターゲティング」は、
もちろん「Target」「ターゲット」の
名詞形。
直訳すれば「的を狙う」という動詞が、
名詞化したもの。
お客様を「的」に見立てるのは、
正直なところ全くもって「不適切」の
そしりを免れない。
ただ、経営学やマーケティング論には
戦争用語が多く、既に皆さんが散々
使っているので通りも良い。
従って、「お客様、ごめんなさい!」
と内心思いながら使うことにしている。
このターゲティング、ピンポイントで
たった一人のお客様をターゲットに
するということもできるし、それこそ
「全世界のあらゆる人」とか、
「日本人全員」がターゲット!なんて
ことも理屈の上では可能。
しかし、あまりに絞り込みすぎては
商売が成り立たないし、
絞らずに開けっぴろげすぎても
結局誰も振り向いてくれない顛末に
なりかねない。
セミナー受講者との質疑応答の中で、
「F1」「M1」といった言葉が登場
した。
ご存じない方も多いかもしれないので
一応説明すると、一般的にはこんな
感じの定義となる。
F1:20~34歳の女性(Female)
F2:35~49歳の女性
F3:50歳以上の女性
M1:20~34歳の男性(Male)
M2:35~49歳の男性
M3:50歳以上の男性
これは、過去のマスマーケティング
全盛時代の名残、残滓のようなもの。
ある程度、性別と年齢で共通項が
あるよね、ということでくくられて
おり、いまだに広告業界(特にTV)
では頻繁にこの用語が使われる。
しかし、今の時代にどこまで意味が
あるのだろうか?というと、大いに
疑問である。
同じ20代の女性でも、都心でOLを
やっている人と、地方で農業やって
ますという人では全くニーズが異なる
だろうし、既に結婚しているか否か、
子どもを産んでいるか否かで、その
ライフスタイルは劇的に異なって
いるはずだ。
実際、デジタルマーケティングの
世界では、こんな大雑把な分け方では
なく、年齢であれば1歳刻みで考える
のが当たり前だという。
昔は、1歳刻みで考えよう!と言った
ところで、その刻んだターゲット顧客
にたどり着くことが難しかったのが、
今やデジタルが「魔法の杖」の如く
機能しているのである。
また、ネット上でどんな行動をして
いるかに応じて、見せる広告を変える
手法を俗に「行動ターゲティング」と
呼ぶが、これなどは「F1、M1」発想とは
全く異なるアプローチと言えるだろう。
実は、「F1」「M1」という言葉が、
私の職場ではいまだに頻繁に飛び交う。
便利な言葉なのでつい使ってしまうの
だが、ターゲットとしてはあまりに
広く、曖昧である。
「F1」「M1」と言った瞬間に、一種の
思考停止に陥っているのではないかと、
必ず自戒する癖をつけておいた方が
良さそうである。