思い切ってターゲットを絞り込む
間もなく生まれて半世紀近いという
のに、未だに成長している。
身長が長らく183cmであったところ、
ここ2年間の人間ドック時の検診で
184cmを記録した。
更に恐ろしいのは足のサイズ。
社会人になりたての頃、
既に28cmか28.5cmで、とにかく
革靴を探すのが大変。
海外だとサイズに困らないが、
国内で探すのが厳しい。
その後も何故か順調に育ってしまい、
今は29cm、メーカーによっては
30cmサイズという場合もある。
どんだけデカいんだよ、という
話だが、キツい靴ほどQOLを
損なうものもないので、
困惑しつつ今日もデカい靴を
履いている。
(この靴のせいで未だに成長して
いるのかも?!)
女子で足が大きいというのは、
これまた大変だろうなぁと
容易に推測できる。
オシャレが気になる年頃でも、
足が大きいばかりに履きたい
靴が履けない!というのは
さぞ苦痛だろう。
とダジャレをかましたところで、
#KuToo
運動なんてのもあったなぁと
思い出した。
「靴」と「苦痛」を掛け合わせ、
「MeToo」運動をもじった、
女性がハイヒールやパンプスの
着用を義務付けられていることに
抗議する社会運動だ。
話を元に戻す。
女性で足が大きな人にも履ける
サイズの靴の専門店というのが、
東京の学芸大学駅最寄りにある。
この「タルサタイム」というお店、
東急線の車内広告でかれこれ20年は
見ている気がする。
正確には覚えていないが、私が
東急線沿線に住み始めて22年ほど、
その当初から目にしていた記憶が
ある。
創業年をサイトで調べてみたら、
1987年5月とあるから、私の記憶も
あながち間違いではなさそうだ。
このお店は、自らを
「大きいかわいい靴だけのお店」
と表現している。
「大きい」×「かわいい」という
絞り込み。
これはかなり思い切った選択だ。
普通の靴屋は、できるだけ幅広い
客層に対応できるよう、豊富なサイズ
を取り揃えるだろう。
平均的なサイズがより多く売れていく
ため、大きなサイズや小さなサイズは
どうしても売れ筋から外れ、
在庫のコントロールが難しい。
それゆえ、品揃えがかなり少なく
なったり、そもそも取り扱いしない
ということになりがちだ。
多くの靴屋がそういう動きをする
から、足の大きな人や小さな人は
買い物に苦労する羽目に陥る。
そこで、大きな靴や小さな靴に
絞り込むという「ニッチ」を狙う
意味が出てくる。
タルサタイムは、女性で大きな靴が
必要な人、というターゲットに狙いを
定めただけでなく、更にそこでもう
一歩踏み込んだ。
「かわいい」という更なる絞り込みを
かけたのである。
足は確かに大きいけれど、
「私だってかわいい靴を履きたい!」
そんなインサイト(ホンネ)を持つ
お客様がいることに気付き、
その乙女心をストレートにつかみに
行ったのだと思われる。
ここまで思い切って絞り込むという
のは、なかなか出来ることではない。
いわゆる「セグメンテーション」と
呼ばれる市場細分化は、あまりに
細かく分けすぎると、そもそも
お客様の数が少なすぎてモノが
売れないのではないか?という
恐怖との戦いになるからだ。
それでも、思い切って絞り込んだ
結果、評判が評判を呼んだのだろう。
東急線の車内で時折広告を見かける
度に、細く長く上手に商売を続けて
いらっしゃるのだろうなぁ、
と感じるのである。
タルサタイムが、最初から狙いを
絞り込んで成功を収めたのか、
目の前のお客様を喜ばせるために
頑張り続けた結果としてお客様を
自然と絞り込むことになったのか、
きいてみないことには分からない。
ただいずれにしても、深く刺さる
商品をお届けできれば、かなり
細分化した市場でも立派な商売が
展開できるということを証明する
1つの事例だと言うことはできる
だろう。
己に磨きをかけるための投資に回させていただき、よりよい記事を創作し続けるべく精進致します。