ノジマに追随(?)するビックカメラ
通勤で乗った東急線の車内広告で、
「ノジマの新生活応援セール」
というのを見かけた。
北条義時が主人公となっている
今期の大河ドラマ『鎌倉殿の13人』と
コラボしているようで、北条氏の殿様に
加え、家臣として活躍した人物たちが
広告にも出ている。
こちらの広告の、下の方に注目して
いただきたい。
「ノジマはメーカー派遣の販売員がいない唯一の家電専門店」
という言葉が並んでいるのを確認する
ことができるだろう。
「メーカー派遣」というのは何か?
例えば、エアコン売場であればエアコン
メーカーから、パソコン売り場であれば
パソコンメーカーから、販売応援名目で
社員やアルバイトを派遣するという
仕組みである。
これは、小売の側が、商品を大量に
消費者に販売する能力を持っていて
初めて成り立つ仕組みだ。
街の家電屋さんに、メーカーがわざわざ
人を派遣することはない。
販売力の強い、ごく一部の大手家電量販
のみが享受する特権のようなもの。
ノジマも家電量販としては割と大手だが、
ヤマダ電機やヨドバシカメラ、ビックカメラ
といった最大手チェーンからは少し水を
空けられている。
当然、メーカーからすれば、協力する上で
プライオリティは下がるだろう。
ノジマが、当初はメーカー派遣を受けて
いたのか、最初からメーカー派遣をあえて
回避したのかは分からない。
少なくとも今は、あえてメーカー派遣に
頼ることを選ばず、自前の社員たちが
販売を担当する方式を消費者にアピール
するに至っている。
メーカー派遣は、小売販売店にとっては、
人件費の節約になるので、利益押し上げ
要因になる。
販売力が、自前の社員と同等レベルで
ある限り、非常に美味しい話だ。
しかしながら、消費者にとってみたら
どうだろうか?
特定のメーカーから来ているので、
当然そのメーカーの商品を推奨しがちに
なることは避けられまい。
公平な、真に消費者の立場からの視点で
商品を勧めてくれないリスクが、非常に
大きいのである。
もちろん、販売店の側で、お客様の立場に
立って公平に商品を勧める接客をするよう
メーカー派遣の人に対して指導/依頼する
であろうことは想像に難くない。
とはいえ、ずっと見張っているわけには
いかないだろうし、販売店としても最終的に
何かしら売れさえすればいいだろう、と
なりがちだと推測する。
ノジマは、自分たちが必ずしも優遇される
レベルの家電量販店ではないと認識し、
メーカーに頭を下げて人を派遣してもらう
位なら、自前の社員が説明することを選択
した。
そして、そのことこそが、お客様の真の
ニーズに応える上で、実はより望ましい
やり方だと気付いたのだろう。
最近、より大手であるビックカメラが、
この「ノジマ方式」に方針変更した旨の
ニュースが流れた。
記事にある通り、家電量販店同士の競争と
いう視点に加えて、Amazonをはじめとする
ECとの差別化という要素も見逃せない。
より専門性を磨いて、店頭を訪れたお客様に
高い提案力を発揮することが、ECに対する
優位性となる、そのように考えたようだ。
もともと、ヨドバシやビックは、カメラや
ビデオなど一部のカテゴリについては、
エース社員を張り付かせて「何でも聞いて!」
とばかりのスーパー接客をウリにしていた
ように記憶している。
今回は、そのやり方を復活、あるいは改めて
全社徹底する方向に舵を切った、ということ
なのかもしれない。
これで、ノジマは「唯一」とうたえなく
なることは必須。
一日の長があるので、すぐにピンチに陥る
ということもないだろうが、この先どの
ような差別化ポイントを新たに作るのか、
注目である。