掃除がなぜ経営改善につながるのか
イエローハットの創業者である
鍵山秀三郎さんが、とにかく掃除を
徹底的に極め、それが経営の改善に
大いに役立ったという話は、
かなり多くの人が知るところだろう。
たかが掃除、されど掃除。
「掃除道」を提唱されるに至り、
「日本を美しくする会」を立ち上げ、
今も掃除活動に関わっていらっしゃる。
掃除をすると、当たり前だが、
その場がきれいになる。
きれいだと、気持ちが良い。
気持ちが良くなれば、周りの人に
気持ちよく接することができる。
そうなれば、ポジティブな連鎖で
気持ちの良い場が更に大きく
広がってゆく。
確かにそうかもしれないが、
それが経営改善に劇的なプラスの
影響を与えるとまで言われると、
少なからず半信半疑となる人も
いるだろう。
私自身、過去に掃除を推奨する
文化を持つ会社にいたこともあるが、
掃除をやっているからと言って、
必ずしも業績が良くなるとは限らない
ことを身を以て感じている。
鍵山さんが取り上げられるニュースや
記事の類では、とにかく掃除さえ
きちんとやるようにすれば、
業績は改善できるものなのだ、
そんなニュアンスで受け止められて
いるように感じていた。
しかし、掃除さえしていれば業績が
良くなるなんてことはあり得ない。
掃除をして、心がきれいになったと
いうそれだけで、業績改善に結び
付くと思わせるような物言いは、
不正確のそしりを免れない。
結局のところ、掃除をすることで
なぜ業績が上がるのか、その背後に
あるロジックが何なのかについて、
ずっと頭の中で引っ掛かりがあった
のだが、その答えがようやく少し
分かった気がした。
というのも、『致知』10月号の
記事を読んでいて、なるほど!と
思う記述に出会ったからである。
掃除をすると、整理整頓が進む。
整理整頓が進むと、余計なことで
コミュニケーションを行う必要が
なくなる。
コミュニケーションが効率的に行われる
ようになると、成果を効率的に上げる
ことができるようになる。
言い換えれば、掃除をすることで、
経営資源の活用状況が明らかになる。
ヒト、モノ、カネ、情報といった、
自分がいま持っている希少な資源を、
本当に活かしきっているのか?
そんな問いが立ち、
自問自答が始まるのだ。
この重要な問いが発動するからこそ、
掃除によって大きな効果が生まれる、
ということなのである。
業績が悪いと、つい外に目を向けて、
どこかに良い打開策はないか?
などとなりがちだ。
青い鳥は、もとより自分の身近な
ところにいたのだ。
経営資源の無駄遣いに気付き、
ヒト、モノ、カネ、情報、
更には時間や空間も含めて、
全てを活かしきることで
業績はグイっと上向く。
常に心の中に留めおきたい、
重要な示唆を与えてくれる考え方
である。
まずは自分の身の回り、
自宅の掃除から始めたい。