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「苦労」している時が一番素晴らしい

月刊『致知』9月号に、山形県にある
かみのやま温泉を代表する旅館である
古窯こよう創業者であり大女将
佐藤幸子さんのインタビューが掲載
されています。

写真からは、とても95歳という年齢を
感じさせません。
インタビュー内容を読むと、なお一層
年齢とのギャップに驚くことになる
こと必至です。

波瀾万丈の彼女の人生譚が、
非常に興味深いのですが、その中で
印象に残ったエピソードの一つに、
鮭の養殖一筋六十年という方が泊まりに
来られたときのお話
がありました。

その鮭の養殖家の方いわく、

鮭は川で生まれ海に出て、四年くらい海を回遊してから、再び自分の生まれた川に帰ってきて産卵する。その時、塩水から真水に慣れるために、一遍に川に帰るのではなく、川に行っては海に戻り、また川に行っては海に戻るというのを一週間くらい繰り返す

そこで佐藤さんが、
「鮭が一番おいしい時はいつですか?」
と聞くと、

いま言った一週間、川と海を行き来して一番苦労している時が一番おいしい

と答えられたそうです。

佐藤さんはそれを聞いて、
「人間も同じ。一番苦労している時が
その人の人生は一番素晴らしい」

と思われたとのこと。

この話を「美談」として、そのまま
すんなり受け取っても良いのですが、
「苦労」そのものを礼賛するのは
ちょっと違う
のではないか、と正直
モヤモヤした気持ちになりました。

もちろん、「苦労」した方が良いことも
沢山ありますから、一概に苦労反対!
などと言うつもりもありません。

「若い時の苦労は買ってでもせよ」
という言葉もあるのはご存知の通り。
下記の記事のタイトルには「死語」と
ありますが、実際には「苦労」が必要だ
という立場寄りで書かれています。

苦しい時に歯を食いしばって努力を
重ねたことが、後々の基礎力を培って
くれた
とか、それだけの努力を継続
できたから、自分に対して自信を
持てるようになった
、そんな話は
枚挙に暇がありません。

とはいえ、「苦労」という言葉を
額面通り受け取ることは、本当に
正しいのでしょうか?

確かに、その時は「苦労」だったのかも
しれませんが、当人がその「苦労」を
乗り越えたのは、ちゃんと夢なり目標
なりを持って、それを達成するために
努力を重ねた
ということでしょう。

決して、イヤイヤやっていたり、
卑屈になっていたりはしていない

のではないでしょうか。

つまり、「苦労」という言葉を使って
いるものの、その言葉から連想される
ほどネガティブな気持ちで取り組んで
いるわけではないのでは?

そんなことを感じるのです。

鮭が淡水と海水を行き来しているのも、
傍から見て勝手に「苦労」していると
解釈
しているにすぎません。

鮭に感情はなさそうですが、
もしそれに類するものがあったなら、
母なる川に戻れるということで、
嬉々として「苦労」している可能性が
高いと思うのです。

結局、傍から見て「苦労」をしていると
思われるほどに、今やるべきことに
全集中して取り組むことが、その人の
人生を輝かせる
のでしょう。

己に磨きをかけるための投資に回させていただき、よりよい記事を創作し続けるべく精進致します。