良いパクリ、悪いパクリ
モノマネ、コピー、ハック、パクリ、、、
色々呼び名はあるが、どれもこれも
あまり良い響きの言葉ではない。
オリジナルを生み出すことの方が尊く、
それをパクるのはあまり褒められたもの
ではない、それが一般的な認識と言って
良いだろう。
とはいえ、世の中に星の数ほどある
様々な製品、サービスを企画する際に、
全くのオリジナルを生み出すなどという
ことの方がむしろレアではなかろうか。
何かしら、どこかしら、パクリの要素が
含まれていることの方が、むしろ多いの
ではないかと思われる。
パクリは「模倣」と言い換えることが
できる。
「模倣は創造の母」
と言われる通り、何か新しいことを
創造するにあたっては、模倣が重要な
役割を果たすことが多いのだ。
そんな「模倣」の事例を多く紹介しつつ、
要点をまとめているのが、早稲田大学の
井上達彦先生が書かれたこちらの本で
ある。
少々古いのだが、名だたる有名企業、
ブランドが、いかに「模倣」によって
成長してきたかが分かる良書。
パクるのは当たり前、むしろパクらずに
現代の激しい市場競争を勝ち抜くことは
難しいだろう。
ニトリも、「模倣」で成長してきた
企業の一つ。
著者が、創業者の似鳥昭雄氏にインタビュー
したときの話を聴いたことがあるのだが、
初対面で著者の顔を見るなり、
「おー、君が模倣の研究者か!
模倣は最高だろ!ワッハッハ!」
と怒涛の勢いで話しかけられ、
圧倒された様子を述べておられた。
似鳥さんは、アメリカに視察旅行へと
赴いたときに、日本の家具に比べて
断然オシャレなデザインの家具たちと、
格段に安い価格とに衝撃を受けた。
そして、日本でこれを実現するために
どうやってパクるかを徹底的に考えた。
パクると言っても、些末な部分を
真似したところで、成功は覚束ない。
成功している先駆者が、何を以て成功
しているのか、その本質的な部分が
何なのかを見抜き、そこを模倣する
ことによって、再現性高く成功への道を
歩むことができる。
ニトリの場合は、アメリカで先駆者たちを
視察した際に、家具を上手に組み合わせる、
コーディネートするという考え方がカギだ
と気付き、そこを模倣したと聞く。
また、当時日本で渥美俊一氏が主導し始め
ていた「チェーンストア経営」を学び、
他業種からも大いに「模倣」の範を
取っていた。
単純にパクる、模倣すると言っても、
しっかりと頭を使い、「本質」や「構造」を
抽出して、そこを再現するということが
求められるわけで、猿のようにただ真似る
だけではうまく行かない可能性が高い。
逆に、「本質」や「構造」を抽出することが
出来さえすれば、極めて応用範囲の広い
「知恵」として、事業発展に様々な形で
貢献することが期待できる。
上手く行っているビジネスを見たならば、
「本質はどこにあるのだろうか?」
「どういった構造になっているのだろうか?」
と問いを立てよう。
そうすることで、「創造的模倣」に向けた
知恵を獲得し易くなるはずだ。