奈良は日本酒のメッカだった
日本建国の神話として、
『古事記』や『日本書紀』に伝わる、
いわゆる「神武東征」。
日向の国(今の宮崎県)から、
大和の国(今の奈良県)に向かって
進み、神武天皇として即位するまでの
物語である。
その東征の際に、道案内をしたのが
「八咫烏(やたがらす)」。
サッカー日本代表のシンボルにも
使われているので、ご存知の方も
多いだろう。
この「やたがらす」という名前の
日本酒がある。
奈良の老舗酒造、北岡本店が醸している
本格的な酒だ。
この「やたがらす」を楽しむ会という
イベントが催されるとのことで、
友人のありがたい誘いに乗って、
昨日麹町の某ホテルまでいそいそと
出かけて来た。
北岡本店の社長夫妻が自ら企画運営
しているご様子で、入口での受付、
集金、中に入ってからの接客まで、
こまめに動き回っておられた。
その社長というのが、奈良県吉野町の
元町長さん。
人懐っこい笑顔で、お客さんの席を
まわって色々とお話をしてくださる。
その際に、奈良漬の由来と共に、
日本酒の源流は奈良にあるという
ようなお話を伺って、ひとり内心
非常に興奮を覚えていた。
神武天皇が即位したのが大和=奈良と
いうことで、歴史、由緒ある土地柄で
あることは誰も疑いないところ。
人が集まれば、酒も必要。
自然と酒造りが栄える流れにあるのは
理解できる。
自然環境が、酒造りをするのに適して
いたということも大きいようだ。
良いお米が取れて、良い水があるのは、
酒の生産が盛んな地域に共通する
特質である。
お酒を造ると、もろみ粕が生じる。
この粕に、白瓜や胡瓜、西瓜などを
漬けて作るわけだが、酒造が多いから
こそ粕も大量に出て、勢い粕漬けの
生産者も増えたということだろう。
歴史的な経緯は、こちらの奈良漬を
販売しているお店のサイトに詳しい。
今回楽しんだ「やたがらす」は四種類。
飲み比べをしながら楽しめるというのは、
自分がどんなお酒を好きなのか、改めて
確認・言語化できるのでありがたい。
都内近郊だとどこで買えるのかと
訊いてみると、返事が曖昧。
どうも、そもそも生産量がさして多く
ないこともあり、自社サイトでネット
販売している他は、あまり手広く卸す
ことはしていない様子。
だからこそ、なのかもしれないが、
濃いファンを作り、たとえマスで
売れなくとも、コアファンの間で
長く愛され続けることを志向する、
そんな方針を採られているのだろう。
「アフター・コロナ」で、リアルの
イベントが今後益々増えていく中、
こうやってリアルでの接点を大切に
してファンを作り、いざ買おうと
思ったらネットで買える仕組みを
作っておくというのは、モノを売る
側としては当たり前に準備しておく
必要がある。
昨晩の美酒の余韻に浸りながら、
そんなことを確認させてもらった
次第である。
以下は余談。
こちらのサイトに、奈良の日本酒の
人気ランキングが掲載されている。
「やたがらす」は15位にランクイン。
1位の「みむろ杉」は、友人から以前に
勧められたものの、未だに店舗で見た
ことがなく、機会を逃しているのだが、
2位、4位、5位、6位、9位あたりは
リピートしたことのあるお酒たち。
奈良の酒が、ここまで自分に身近だとは
全く意識していなかっただけに、少々
驚いた次第だ。